日記でもなく、手紙でもなく
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| 2002年02月15日(金) |
ギュンター・ヴァント他界 |
2月14日に、世界的な指揮者であるギュンター・ヴァントが他界した。90歳。 実際にコンサートに行っているわけではないが、80年代に初めてこの人のCDを聴いた時のことは、今でもよく記憶している。
今では、ベートーヴェンの交響曲集など、それこそ掃いて捨てるほどCDが出ているし、交響曲全集なども、極めて安価な値段で名演奏と言われるようなボックス・セットも入手できる。しかし、当時は好演奏と言われるようなものはかなり限られていたような気がする。ちょうど、LP時代の名演奏アルバムがCD化されはじめるような、そんな時ではなかったかと思う。 CDで田園交響曲を聴きたくなって、当時何枚か買い込んで聴いてみたのだが、今ひとつ自分のイメージとそぐわなかった。
さて、と思って店頭で見ていたときに、当時はドイツ・ハルモニア・ムンディのレーベルがEMI傘下にあり、ギュンター・ヴァントという初めて聞く名前の指揮者が(確か)南西ドイツ放送交響楽団を振った盤を何枚か見つけることができた。 当然はじめて聴く人なので、どうだろうかと半信半疑のところもあったのだが、このレーベルそのものは、比較的信頼を置いていたところもあったので、シューベルトの第9番と一緒に買って帰った。
田園を聴いて「これは!」と思い、グレートを聴いて大変納得したことは、今でも忘れていない。 極めてオーソドックスなアプローチながら、きめ細かく聴かせどころをきちんと聴かせてくれる指揮者という印象を強く持った。
当時、ギュンター・ヴァントという名前は、あまり音楽雑誌では登場してこなかった。CDを探しても、レパートリーが限られていたような気もする。
ところが、90年代後半の晩年、ライブ・レコーディングを行うたびに(ベートーヴェンやブルックナーなど)、新譜の推薦盤に必ず顔を出してくるようになってしまった。この人ほど、晩年大指揮者に祭り上げられた人というのは、日本では他にあまり例がないほどのことだ。
ただ、私自身の感覚からすると、いかにもドイツ的なオーソドックスな演奏をする指揮者のような印象が強い。そこに全く新しい解釈を加えている、というような感じは一切しない。 他の指揮者がそんなことをする中で、かえってそのオーソドックスなアプローチが評価されたような気がしないでもない。
本人はそんな風に祭り上げられるのを喜んでいたのかどうか?そんなところは、かつてのシューリヒトなどと、少し似たところがないでもないが。
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