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おおみち礼治のてくてく日記 DiaryINDEX|past|will
とにかく、身元を明かしたくないらしいね。<荒らしくん
言いたいことがあるならメールにしなさい、といって入室禁止にした。めちゃくちゃ言ってくるかも……とちょっと身構えていたんだが、それっきりなしのつぶてなのだ。メールアドレスさえ教えたくないようだ。 自分がどのような人間なのか、なにひとつ明らかにせぬまま、いきなり人を馬鹿だアホだダメだという態度は、まるで通り魔のようだ。 一生、他人のことをとやかく言い続ける人生ってどうよ? と聞いてみたい気もしたが、まあ、まともに答えないだろうね。 10年前を思い出した。 仕事がうまくいかず、ストレスで気が変になりそうな時期だった。そのころを考えると、荒らしくんの心理が少し分かるような気がした。 目の前の現実にうまく対応することができず、周囲から孤立し、下に見られていると感じていた。そのストレスをうまく発散する方法も分からなかった。現実では、いい子ぶって、上司に反抗するどころか意見すら言えず、思うようにできない自分の未熟さや無能力に対する怒り、わかってくれない他人や何もしてくれない現実への恨みを抑え込むことしかできなかった。そういう状態が長く続くと、ちょっとしたことが自分への侮辱のように感じられるようになるのだよね。 利害関係のある上司や同僚だと何もできないのだが、それが全くの他人(それに、甘えられる人。家族など)となると話は別になる。ちょっとでも気に入らないところ(多分、コンプレックスを刺激するようなことだ)を見つけると、ここぞとばかりに反撃――って、自分に害を及ぼしてきたわけでもなんでもないのだから、反撃ではないのだが、ともかく、日頃のうっぷんを晴らそうと攻撃する。 恨みが基本になっているから遠慮がない。自分のことは棚において、怒りをぶちまける。そんなことをしても何ら解決するわけはなく、むしろ破滅に近づくのだが、そうせざるを得ない心理状態なのだ。誰かをめちゃくちゃに殴り飛ばし、血を流して横たわったところに、ざまーみろ! とツバを吐きかけたいのである。 よく抜け出せたな、と思う。 当時、パソコン通信があったが、唯一正直な自分をやれる場所で問題を起こしたいとは思わなかった。自分で言うのも変だけど、もともと悪い人間ではなかったのだ。 パソ通ではIDという証拠が残るが、インターネットではIPを記録されなければ、まず身元は分からない。身元がばれず(ということは、責任を問われることなく好き勝手ができる)、赤の他人がうじゃうじゃいるネットという場。 ストレスMAXな、暴れたい人にとっては、まさに理想の場だろう。殴り飛ばしても(言葉でだけど)現実には何の影響もない。相手は自分を罵るかもしれないが、やはり現実には何の影響もないし、逆に相手を嘲笑したり論破する愉しみがある――と考えるのかもしれない。 現実では我慢して、仮面をかぶり、自分を作っているのかもしれない。その現実に、(ネットでしているような)本性をむき出しにした自分の姿をさらけ出すのは、もっとも避けたいことなのかもしれない。だから、ひたすら身元を隠す。 推測ばかりになってしまいましたが。
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