THOKOの日々

2010年06月01日(火) メッセージ

その患者さんは、いつもスケッチブックとクレヨンを持っていた
少し歩けるようになると外の景色を描いていた
自分が掲載されている雑誌を見せてくれた時もあった
担当になった看護師の似顔絵を描いて、私にもくれた

「いっぱいしかられてすてきな強くてやさしい看護師さんになって下さいね」
薬袋の裏にそう書いて、退院の日私にくれた
先輩看護師に「いっぱいしかってやってね」と笑顔で頭を下げて退院した
この地域では、その意図がわかりずらかったようで先輩は最初頸をかしげた
「色々と教えてやってね」の意味であると少しして先輩は理解したようだった
その人はもう空になった
それでも、その人の描いたものは手元にあって私を励ますことができる
その人の想いは殆ど泣けなくなってしまった私をむせびなかせる程の力を持つ
くじけてしまった私の心が奮い立つ為の一助となっている


看護師という職業からなのか、恩義とか義理とか情とかは早期に消失するようだ
似顔絵を描いてもらった先輩たちは2,3日は覚えていて丁寧に応対するものの、その後早期に手のひらを返していた
私はその薄情さに驚いた
同時に、国家資格の強さを実感したのだった
事務職や一般企業の職とは違って求人にはことかかず、ここをやめたら働けなくなるかもしれないといった危機感はない
それが更なる身勝手を招いている一因とも言えるだろう
そして、建て直しの早さが要求されるから冷淡になるほうが気楽でいいのかもしれない
でも、私は冷淡すぎるのも自分が辛いし
ぎりぎりのところではやはり心を見失いたくない


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