食卓にかりもり(瓜)の粕漬けを添えた。
懐かしい祖父の姿がよみがえる。 私にとっては思い出の味だ。
酒かすの香りと粗目糖とお塩。 祖父が大きな漬物樽の前に腰掛け、二つに割った瓜の種を除くと びっしりと規則正しく綺麗に敷き詰め並べる。 瓜のツルリとした固い表面を下にして、一面敷き詰めると その上に酒かすを敷き、粗目糖を撒く。幾段もその繰り返し。 その祖父の脇にちょこんと腰掛け、樽を覗き込んではよく 粗目糖を撒くお手伝いをさせてもらった。 漬物を仕込んでいる祖父の顔はいつも、楽しそうだった。
時間をかけじっくりと漬かった瓜はシワシワと柔らかで、 うっすらと薄茶色に染まったそれを 祖父はよく客さんのお茶請けにと添えていた。
駅前で自転車預かりをしていた祖父母のところへは 日常、いろいろな人が寄ってはお茶を飲んでいった。 自転車を預けていく常連さん、売店のおばちゃん、 ポリスボックスのお巡りさん、バスの運転手さん、 お隣りの洋品店のおじちゃん、ケーキ屋のおばちゃん、 床屋のおじちゃんに靴屋のおじちゃん、ご近所さん。
祖父はそんな人たちをもてなすことが好きだった。 テレビを眺めながら、道行く人を眺めながら、 訪れるお客さんと楽しげに話をしながら、 いつもにこやかに笑っていた。 厳しい顔の祖父を、私はあまり見たことがない。
祖父の漬けた粕漬けは、ほんのりと甘く美味しかった。 小学生の頃は酒かすの口に広がる風味が苦手だった私も、 いつしか祖父の粕漬けを好んで口にするようになっていた。
結婚して家庭を持って、度々思うことがある。 祖父が今生きていたなら...... 教わりたいことがたくさん沢山あるのに、と。 お料理好きで、釣り好きで、地元のお祭りをとても大切にしていて 家の修繕もお手のものだった。さまざまな祖父の姿を 私は自分の生活のそこかしこに感じ思い出す。
粕漬けもそのひとつだ。
口に含んだ一片がカリリッと小気味好い音を立てる。 祖父の嬉しそうに目を細めて笑う顔がふっと浮かんだ。
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