2002年09月12日(木)  PINGPONG 〜スマイル、タムラに行くまで〜


 カッ。カッ。コッ。カッ。
 
「おい月本ォ!星野はどこ行った!」

 軽快な音が反乱する中、体育館中に大田キャプテンの怒鳴り声が響いた。日課になりかけているそれに、僕は呆れ半分で答える。
 「知りませんよ。例の卓球場なんじゃないですか」
 「な・・・ならここでやりゃいいじゃねーかよ!何のための卓球部だよ!」
 あまり僕が事も無げに答えたせいか、追求する側のキャプテンが狼狽した。

 だって仕方ないでしょ、うちの部員じゃペコの練習相手にもならないんだから。

 口に出しても現状を悪化させるだけとわかっている台詞を心中で呟く。
 1年の僕から見ても、弱いくせに部員数とチームワークばかり先行してるうちの卓球部はかなりどうしようもない。はっきり言って鬱陶しい。・・・不愉快なくらいに。
 「お、お、お前、星野の幼なじみなんだから連れ戻してこい!」
 「いないのは彼個人の意思です。僕には関係ありません」
 「・・・こ、個人の前にチームじゃないかっ」
 けど個人競技でそんなことを主張されても。大体ペコにはそんな理屈は通じないということくらい、本人を見ていればいい加減わかりそうものなのに。
 溜息を噛み殺して、無数に転がる球を踏まないようにしながら僕は歩き出した。
 「一応言いますけど、来るとは限りませんよ」
 ペコはうちで最も期待されているルーキーだ。にも関わらず、部活に望む態度は幽霊に近かった。出席よりも欠席回数の方が圧倒的に多い。
 「いいから連れ戻せ、無理矢理にでも!」
 「・・・・・・」
 「聞いてんのか月本!絶対だからなァ!」
 これ以上言ってもエネルギーを浪費すると感じたので、後ろからガンガン響いてくる不快な叫び声と部員たちの視線を無視し、隅に置いてあった自分の用具を拾ってさっさと体育館を出た。


 うちの卓球部も昔は名門だったと以前オババから聞いたことがある。
 「『片瀬』の校名を背負った選手がそこかしこで活躍してたもんだよ」
 そのあとオババは僕とペコをじっくり眺めてタバコの煙を大きく吐き出し、シケた高校になったもんだねまったく、とわざわざ付け足した。
 僕やペコがどうかはともかく、今では元名門校に華々しい過去の面影がないのは事実だ。片高が『卓球通信』の紙面を飾ることなどないし、これからもないだろう。

 そんな部だから、ペコはたまに部活に出ても僕としか打とうとしなかった。マイペースという言葉で表すには生ぬるいほど自分本位なペコが、団体行動を強制される場所に自ら入っていく理由は一つしかない。大会に出るためだ。


 外の陽射しは思ったより強くて、僕は手を翳して空を見上げた。
 空の青、木々の緑。初夏の兆しはそこここに現れている。

 

 卓球でてっぺん取るかんね。
 一切の迷いも衒いもなく、僕の幼なじみは言い放つ。
 んでこの星で一番高く飛んでやんよ、俺。
 うん、と僕はラバーを張り替えながら答える。ペコなら行けるんじゃない。
 
 行けるんじゃない。

 

 ルービックキューブがドラムバッグのポケットに入ってることを手触りで確認すると、僕は駅に向かって歩き出した。










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映画感動記念。ほんっっっっっとに、月本くんてば何て素敵キャラなんですか。ペコとのコンビが!コンビが!
オンライン小説やってないかなーと探したんですがなんか全然ない感じで・・・。汗。なんでー!なんでー!と凹みながらそれでも楽しんで書かせていただきました。私にはこれが限度です。本当は2人とも、もっとずっとカッコイイんだが・・・。1人称の本人をカッコよく書ける人ってすごい。しかも他人の評価を入れず自分の行動だけで表してるやつ。
ちなみに漫画版でなく映画版のつもりです。つもり。漫画第一部しか持ってないから自信ない。

邦画を3回観たのって初めてです。というか繰り返し観たことなんてなかった。でも・・・観れば観るほど二人が・・・!!映画のスクリーンで観てないと後でビデオで観た時に後悔すると思いますよ!いやするよ!するね!乙女なら見てなんぼだね
一緒に行った子も2回目だったんですが観終わった後「最高!」を乱発。グッズ買う勢いですよ二人。アレとかコレとか。もう少しでコスプレの域です。当然シナリオブックが届いたら主人公二人の台詞を暗記する方向で。



来週また別の人と観に行くかもしれない予定。
スマイルを見られるのは最後かなぁ・・・。うう。ううううう。


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cerri ■