2001年10月05日(金)



秋も深まりつつあります。

いかが御過ごしですか。

あなたと過ごしてから
2度目になる紅葉の時期がやってきました。

思えば去年の今頃は
もう少し寒かったように思えます。
あなたはあの時、たしか
セーターを着ていたような。
僕はジャケットを着ていて
寒がるあなたに奪われた貸して与えた。
そんな記憶があります。

そう考えると
今年の秋は
まだ暖かい方かもしれません。
ただ、
あなたが側にいないことで
満たされないなにかは
確実に僕の中の温度を
この乾いた空気へと
流しつづけています。

いかが御過ごしですか。


あの時は
二人で滝を見にいきましたね。
ドライブの途中で見つけた看板を頼りに
国道から横道に入ったのは
君と美しい風景を見たかったから。
君の喜ぶ顔が見たかったから。
ただそれだけでした。


やがて景色がかわり
窓から食い入るように
外を眺めていたあなたの横で僕は

脱輪しないように懸命でした。

あなたは笑っていたけれど
まさか国道から10kmも山道を走らなくてはならないなんて
僕にはとても予想外でした。


ほんとうは
すぐにでも来た道を引き返したかったんですが
あまりに楽しそうにしているあなたを見て
言い出せずにいました。
と言うよりは
不用意に喋ると
舌を噛みそうでした。
砂利道と言うにしても
あの砂利はデカすぎでしたね。




あなたは僕の横で
美しい自然の
その実り。
彩り。

懸命にその素晴らしさと感動を
僕に伝えていたけれど
僕はそんなあなたの表情をみるだけで
心が満たされたのd話し掛けないで欲しかった。
対向車がきてたんです。
あまりに細い道で
すれ違うスペースもなく
バックをして道を譲ろうとして
エンストした時
君は笑っていたけれど

僕はちょっとだけ泣きそうでした。



道端の草木が
車のボディを擦る音を聞きながら
ようやくついた駐車場で
「滝の音が聞こえないね。」
という君に僕は心の中で

「そんなことよりあの道をまた帰るんだぞ。ヘコむっつーの。」

という言葉を飲み込んで
優しく笑い掛けたりもしました。



駐車場から滝へと下る入り口の方へ
手を繋いで歩いた時、
あなたの手の温かさに
少しだけ鼓動がはやくなったのは
あなたは知らないでしょう。

そして
見つけた立て看板に

「ここより徒歩2km」

という文字を見つけた時、
その場に崩れ落ちそうになったことも。



時刻は昼を回り
すこしづつ空気も冷えてきたけれど
自然の中を散策するように歩くと
案外、身体が温まるもので
あなたは暑いくらいだと言っていた。
あなたは僕が思っていたよりも元気で
そして、こういった状況が好きなようだった。
とてもよく笑い
よく喋った。


僕はそんなあなたを見ながら

「つーか道がなくなってきたたんですケド。獣道みたいなんですケド。」

と言ったのですが

「イヤ。こっち。足跡ある。」

と、僕を驚かせたりもしました。
その横顔はまるで
獲物を追跡する猟師か、ゲリラのような凛々しさでした。



ようやく滝の音が聞こえて来た時は
少し陽も傾き、
薄暗くなりつつあったのですが
その時点で僕らは

完全に道を見失いましたね。
今となっては懐かしい思い出です。


あなたは笑っていたけれど
僕は
「このまま日が暮れたらリアル遭難じゃん。」
と、気が気ではありませんでした。



結局、滝のところまで
辿り着く事はできず
木々の間から微かに見える滝を
疲れ切った目で眺めていたら

「そう言えばカメラを車の中に置いてきた。」

という君の言葉に
ちょっとだけいやな予感がしたものです。


そして帰り道、
泥だらけになった靴をほろい
また山道を下っているときに

「今度はちゃんとカメラ忘れないようにしようね。」

という言葉に
いやな予感が的中したことを
僕は知ったのです。


あなたは
今度は滝まで辿り着くんだと
笑っていたけれど

そして今でも
行く気マンマンらしいけれど














どうかカンベンしてください。


いや。行くのはいいんですが。
明らかに道がなくなってたやん!行き止まりやん!
あと熊とかいるって。絶対。

 < past  INDEX  will >
MY追加




日記才人