天下無敵な過ごし方
ああ、今日も今日だねぇ。
ここんとこの円高のおかげで薔薇が安いのはありがたい
2004年12月28日(火) 総浚い

今年のアタクシの生活の特徴と云えば、和事 につきる。

長唄三味線を習いはじめ、歌舞伎芝居を見物し、歴史や風物の趣を感じる為の旅行をしてみたり と、今までの『小説なら時代もの』、『テレビならマゲチャンネル』といった通年の好みに加えてのこの充実ぶりは、我ながらその身の恵まれっぷりに天下無敵と吠えるとこうも違うものなのかと恐れおののく。

その集大成と云うべき 先週末の京都旅行は、金比羅様の御利益もまだまだ継続中と相なって、隅から隅まで一瞬一瞬が素敵だった。

目的は、十一代目市川海老蔵襲名披露の南座吉例顔見世歌舞伎 昼夜通しの見物。
これを決断したのは、9月。なんせチケットが、23,000円もするのだ。それを昼夜通しで見るんだから、金額はその倍。諦めようともしたんだけど、5月に見た『勧進帳』、6月に見た『助六』がそれぞれに素敵だったものだから、エヴィ好きのねえさんのススメもあって、決心。まだまだチケットを入手するまでに時間があったので、決心したその日から500円玉貯金を始めた。
チケットが無事に入手出来たとの知らせがあった11月吉日、500円玉貯金は、ちょうどチケット代の46,000円貯まっていたと云う、嘘みたいなホントの話。
ホテルは、運良くリニューアルオープンの日航プリンセス京都を格安で予約出来、往復の旅程もまぁまぁといったところ。
そして当日。
6時台の新幹線に乗る為に、朝4時半起き。何と珍しくたけぞ氏が起こしてくれた。丁度目覚ましが鳴るちょっと前に目が覚めたんだそう。この珍し事を吉兆と取って、いざ勇ましく夜明け前の東京を出発。
9時前に京都に到着。あまりにも時間があったので、京都駅からぐ〜っと鴨川に出て、川べりを四条手前まで北上。ホテルまでてくてくと朝の散歩を楽しみながら歩く。ホテルに手荷物を預けついでに、大覚寺へのバスのコトを聞き、教えられたバス停へ辿り着くと、丁度大覚寺行きのバスが来た。ついてる時には、とことんついてる。そして、アコガレの大覚寺。冬だったのと、本殿の葺き替え工事のせいと、そこにマゲの世界があることを分かち合う相手がいないのが残念だったのだが、それでもそこそこに楽しむ。地図では少し離れたトコロに広沢の池という、やはりマゲのアコガレの地があったんで、そこまでまたてくてくと歩いた。歩いている辺り一帯は、歴史的風景保存地域みたいなことになっているらしく、電信柱などがあまり目立たない。畑が広がり、嵯峨野の山々が穏やかに美しい田舎風景がそこに。「あぁ この畑を紋次郎は走ったのかしら」なんて、一人感慨にふける。こういう時こそ相方がいないのは寂しい。そうこうしているうちに、やはり冬のせいで水が干上がっていた広沢の池に辿り着く。そして、正午を少し越して如何せんお腹が空いたので、錦市場まで戻り、もちろんバスの待ち時間は殆どなしで、活気あるかけ声や呼び込みの声と美味しそうで魅力的な京都独特の食材を楽しみつつ、ハナッから目的のソバ屋の親子丼を喰らう。地鶏がぷりっぷりしていて熱々で、予想以上に美味しかった。頼まれたチケット譲り渡しまで間があったので、新京極から四条通りを歩いて、祇園あたりを散策。三味線屋を窓越しに見物したり、灯りやでサルの形の灯籠掛の鋳物を買ったり、香煎を買ったりしてるうちに、待合せの時間。人込みの中だったのだけど、アタクシがとてつもなく目立つコート(店主絶賛の一品)を着ていたせいで、迷われることなく無事逢うことが出来て、任務完了。エヴぃ姉さんをホテルで待つ為に、チェックインしてみたら、予約した部屋の数ランク上の部屋をあてがわれた。東山界隈を見おろせ素晴らしい風景が眺められる広々として綺麗な部屋。本を読んだり、風呂に入ったり、テレビを見たり、エヴぃ姉さんが当初の予定を繰り上げて京都入り出来たせいもあって、退屈をする暇もない。姉さんも部屋の豪華さに喜んでもらってから、二人で蛸薬師までゆーこさんお薦めの割烹小料理屋へ夕飯を食べに行く。そこのカウンターに座って、初めて今日1杯目の酒を飲む。冷やの日本酒がく〜〜〜っと喉を通ってなんともイイ気分。なめこと青菜の胡麻和えに始まり、焼きぐじ、生ずし、ぬた、うざく と 出されるもの出されるものどれも美味しい。酒もくいっくいっとすすむ。ほどよくお腹も満たされたので、店を出て、今回の顔見世を始め、いつも歌舞伎のチケットを手配して下さってる先斗町の姐さんの店に御挨拶に。そこで当然のように芝居の話で盛り上がり、明日の弁当の手配までして下さる始末。味に五月蝿い姐さんたちも満足したと云うお弁当が楽しみに加わる。明日があるので、お名残惜しくも早々に店を出る。寝つきはイイので、豪華なホテルのベッドに入ってものの10分も経たないうちに違う世界へ。
朝、起きる予定にしていた時間の1時間前に二人とも目覚める。朝焼けの東山界隈の京都の街の風景に感動しつつ、着々と準備。南座に敬意を表して化粧をする。(前回した時は、歌舞伎座に着物を着ていった時)朝食も豪華にバイキングを楽しんで、ちゃっちゃかと仕度・移動等をして、南座へ。

海老蔵は、6月よりもなお強く輝いていて、なんだか芝居を楽しんでるようでもあって、見ていて胸がすっきりとした。どこをどうみても歌舞伎の花形役者。よどみがなくて、自然で、大きい、そして綺麗。ぐわんとそこに存在している。
それに負けない菊之助。綺麗さも色っぽさも艶っぽさも、溜め息が出るほど。玉三郎に負けず劣らず。一つ一つの仕草がかわいくて、キラキラと綺麗で、本当に女形なのかと疑うぐらい。
丁度倒れた当日の芝居を見た団十郎の復帰。息子と一緒の舞台に立てたのが本当に嬉しそうで、それを隠してもないので、こっちもついつい一緒に嬉しくなってしまう。
そして、その襲名公演を二重三重に引き立たせる豪華な出演陣。演目も笑いあり愉快あり、お涙もありで、バラエティー。
歌舞伎の約束事や役者を覚えてきてるせいなのか、10時半から9時半までの長丁場も、途中うとうとすることもあったのだが、殆ど起きてやんややんや楽しんだ。
助六の余興で、三味線や太鼓でマツケンサンバを聴けたのも一興。
そして、先斗町のお姐さん手配のたん熊の弁当は、質量ともに豪華豪華で、普通だったら全部食べられないぐらいの量だのに、30分の休憩で平らげてしまった。食べはじめたら止まらない、それぐらい 美味しかった。

芝居が終って、その席でエヴぃ姉さんとは別れて、帰る為に京都駅へ。そこから深夜バスに乗り、48時間前に新幹線に乗った時刻頃に東京駅へ着いた。

長々と書いてしまったけど、最後のバスがちょっと体にあわず、二度と乗りたいと思わない以外は、何から何まで楽しんだのがお分かり頂けたと思う。
大概、今年の旅行も余興もそんな感じだったのだけど、そういうことを楽しめる環境にあることが、つくづく幸せ。

500円玉貯金は、来年の京都でのおさらい会に当てるべく再開。さくらのさく頃までに また京都。


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