気まぐれ日記
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2013年08月17日(土) いや、なんか失敗した

 お題:缶の入れ物 って、なんだよ!




 缶の入れ物

 「じゃ、開けるぞ」
 父はそう言って、ふたを開けようとした。
 ばあちゃんが亡くなって一週間後、ばあちゃんの遺書とともに出て来た家の地図。ばあちゃんの家は代々から受け継いだ伝統ある日本家屋で、条件が田舎でなかったらこの物件は何億なんだ、という歴史的建造物だった。ま、ただ古いだけのだだっ広い家なのだが。地図を頼りに見つけたのが、多分菓子が入っていた入れ物なのだろう、錆び付いた缶が見つかった。わざわざ地図を作ってまで隠した缶なんだろう、その缶の中には、ビー玉やおはじき、お手玉などが入っていた。
 「きっと母さんが子どもの頃に隠したんだ」
 父はそう言って、仏壇にあげた。
 田舎故に交通の便が悪く、一週間過ぎた今でも、弔問客が絶えなかった。毎日ぽつぽつと何人かやってくる。母はその対応をしていたため、夏休み中の俺は母と一緒にこの田舎で過ごす事にした。ばあちゃんが亡くなって十日目、母も知らないというおばあさんがやってきた。
 そのおばあさんは、ばあちゃんの幼いころの友人で、若い時に引っ越ししてそれから会っていないらしい。仏壇で手を会わせると、この前父があげた缶に気づいた。
 「これは、どこにあったんだい?」
 俺が説明するとおばあさんは目を細めた。
 「まあ、みっちゃんったら、そんなところに隠していたのかい」
 懐かしそうに缶の中の物を眺めていたので、そのおばあさんにそれを上げる事にした。
 おばあさんは喜んでそれを受け取った。
 しかし、更に数日後、そのおばあさんは申し訳無さそうにまた家に来た。
 「これはお返しするよ」
 缶を返して来たのだ。
 「みっちゃんが夢枕に立ったんだよ。孫に渡してくれって。中身は私が貰ってしまったけれど、缶は孫のあんたの物だって」
 缶を受け取って開けてみる。そこにはこの家と土地の権利書とばあちゃんの遺言の一つが入っていた。たくさんのビー玉やおはじき、お手玉に隠れて最初は気づかなかったのだ。
 「さすがに私も歳だからね、こんな家はいらないさ。でもみっちゃんったら毎日のように返してやって返してやってって......」
 ばあちゃんの遺言はいずれ相応の歳になったら俺にこの家を譲りたいというらしい。でも俺はいらない。確かに田舎暮らしは気楽でいいが、都会に慣れた俺にはここは退屈すぎる。
 だけど、そうならなかった。相応の歳になりこの家を売っても必ず俺のところへ返って来る。結局ばあちゃんが夢枕に立って、家を返却しろと言ってくるらしい。俺が何したって言うんだ、ばあちゃん。ある種、この家は呪われている。
 


草うららか |MAIL

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