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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
まあ、読んでも読まなくてもそんな大差はないかと。 「見て! 見て見て!」 そう叫んで飛んで来たのはルイだった。文字通り、黒い蝙蝠のような羽で飛んでくる。普段なら消しておけるその羽は人目を引いていた。 「どうしたんだ?」 「まずはその羽しまうといいぞ、ルイ」 サムディクルディという大陸でもきっとあまり人に知られていないだろうと思われる宿も無い小さな村の役場にて二人は部屋を借りる相談を村長としていた時だった。ウォンテッダーが多く蔓延る世の中、宿がない時は役場に相談すれば大体貸してくれることになっている。 「宝の地図だよ! あたし、初めて見た!」 「何!」 「宝の地図だとお!」 ルイが持って来た地図は相当古くあちこちかすれて見えなくなっている。それでもなんとか読めない事はない。 「どこで手に入れたんだ?」 「知らないおじいちゃんがくれたの」 「知らぬ人からものを貰ってはダメだと言っただろうに」 「でも、無理矢理押し付けて来るんだもん」 「まあ、いいじゃねーか。どうせ、もう誰か見つけちまったヤツだろ?」 「そうだな。ルイ、この手の地図はもう誰かが掘り起こしたもんと決まっておるものだ」 「うーん、でもおじいちゃん言っていたよ。なくならないたからだって」 「なくならないたから?」 「どうせ、ここまで来たんだからダメもとで行ってみない?」 翌朝、三人は宝の地図の場所へ行ってみる事にした。 「嫌な予感がするのう」 アニムはそう何度も呟く。 「ああ、なくならないたから、な。俺の祖先とかが絶対どこかでやってそうなネタだよ」 「何それ?」 「ああ、まあ、いろいろだな」 「いろいろあるのう。ともかく、無駄働きみたいなもんだ」 その場所についた時には夕方になっていた。 「きれいね」 「きれいだのう」 「ああ、きれいだ」 その小高い丘から村を臨み眺める夕日はきれいだった。 「なくならないたから、か」 「無くならない宝、ね」 三人は景色を堪能して、そして村へ戻った。村はしいんと静まり返っていた。それどころか家一軒無かった。村であった囲いだけがある。 「ど、どうなってんだ?」 「あ、アニム、道、間違えてないよね?」 「い、いや確かにここだ。これは、どういうこった?」 そこに一人の老人が歩いて来た。 「やあやあ、お嬢さん。お帰り」 「ああ、昨日のおじいちゃん!」 「どうだい、夕日は? きれいだったろう」 そう尋ねられても三人は唖然とするばかりで何も応えられなかった。 「無くならない宝の為に足を運んだ旅人は久しぶりじゃ。そしてこれはちょっとしたサプライズ」 老人が杖を軽く持ち上げ、地面を突いた。バリーンとガラスが割れるような音がする。 「空間崩壊だとっ!」 「これって、え?」 アニムとルイが驚く。バルクにはよくわからずただ黙るだけだった。 「こんな芸当ができる人間がまだいたとは......」 「すごい、全然わからなかった......」 「ほっほっほっ、じゃあ、お前さんたち、我々の歓迎会に案内しよう」 朝に出た小さな村は三人を歓迎するためにランプの明かりや花で彩られ、テーブルには様々な料理が並んでいた。 「ある意味、宝だのう」 「そうね」 「なんだよ、そんなすごいのか?」 「小生らは魔族だのなんだのに会って酷い目にあっているからかもしれんが」 「人間がこんな魔法を、こんなことのために使うのって」 「ものすごいことなのだ」 バルクにはいまいち理解出来なかった。 「とにかく、バルク。喜んで歓迎会に出席しよう」 「そうね、おいしいものいっぱいありそう」 こうして三人は真夜中まで村人の歓迎を受ける事にした。
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