実家に帰った時、部屋の片隅にコーヒーカップを見つけた。
焼き物で、手作りで、味わいのあるカップ&ソーサーのそれは、元彼からの誕生日プレゼント、だった。
正確には、私が「奪い取った」のだけれども。
別れてから、彼に一度会った時に、泣きながら彼が「ぼむのために買った」と持ってきていたもので、同じく私も泣きながら「頂戴。私のために買ってくれたんだったら、頂戴」と言って貰ったものだ。
別れることは決めていたけれど、彼が私のためを思って買ってきてくれたものを、手元に置いておきたかった。
泣きながら貰って、…そして今。
それを見ると、あの時の別れの時を思い出してしまう。
そして、頭が痒くなった。
この、コーヒーカップがいけないのだと思った私は、家の庭でそれを 割った。
すっきりするはずで、確かにすっきりしたのだけど、細かな欠片を残さず綺麗に5つに割れたそれは、逆にあっさりしていて悲しかった。
そうして頭が痒いまま帰ってきて、彼(旦那)と一緒に過ごして、やっと最近、落ち着いてきた。
特に腕を組んだ時に安心する。
この腕だ、と思う。
「ぼむと離れたらダメだ」と旦那は言うけれど。
離れたらダメなのは、きっと私の方なんだと思う。
忘れていた筈なのに、乗り越えた筈なのに。
君がいなくても大丈夫、なんて高をくくっていたらこのざまだ。
愛することに慣れてきて、毎日いる事に慣れてきて、それが普通になってしまいそうな今だから。
改めて思う、君の存在の大きさ。
そして、思いたくないけれど、元彼の存在の大きさ。
あの人では決して幸せになれないことは分かっているのに、どうして。
それでも、旦那と腕を組む度に落ち着く気持ちが。
私に、大事なものを忘れずにいさせてくれる。
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