ちくま文庫版の日本文学全集から宮本常一集を読む。古書店で200円でもとめたもの。民俗学者として全国を歩き、名も無き庶民の暮らしのあとを訪ね日本人の原像というべきものを記録しつづけたひと。中の一編に「土佐源氏」という作品があった。孤児として馬喰にひろわれ馬喰として生計をたてながら放蕩三昧に生き病を得て盲目となり橋の下の掘っ建て小屋で死を待つ男から聞き取った半生記。読みようでは艶笑譚でもあるが、正直に生きた人間の実相が描かれている。 「ああ、目の見えぬ三○年は長うもあり、みじこうもあった。かもうた女のことを思い出してのう。どの女もみなやさしいええ女じゃった」(本文より)
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