| 2002年01月21日(月) |
鳥羽亮「隠猿の剣」(講談社文庫)は傑作時代活劇。「編集者の学校」(講談社Web現代・編)の始めの方の数ページを. |
鳥羽亮「隠猿の剣」(講談社文庫1998.10.15)は傑作時代活劇。単行本は1995年刊行とあるから7年前の作品。今更力を込めて褒めても、「遅すぎる」とは思うものの何作か読んだ鳥羽作品の中でこの作品は抜きんでている。今までのものも面白さは確かにしてもどこか今ひとつという印象だった。 しかし、この「隠猿の剣」は全編に渡って、いわば気力が充実かつ漲っているのである。本格ミステリーの持つ謎の味わい。陰謀の大きさと深さ。敵側の剣豪や忍者の圧倒的強さ。悪役の残忍さ、不気味さ。剣戟場面の見事さ、迫力。主人公たちの強さと魅力。 文句なく面白い時代活劇がすでにあったことに驚いた。 最近読んでいない佐伯泰英と比較して「保留」扱いしていたが、若い剣術使いを主人公にした清新で斬新な物語を創造し達者な書き手だった。 読んでみるつもりで開いたら、「1章 カリスマ編集者にきく」の「第1講 見城徹(幻冬舎社長)」は途中でやめられなかった。風貌はテレビの本を扱ったバラエテイ番組「ほんパラ」で知っていたせいもあってか第1講は最後まで読んでしまった。 感動した相手に「踏み込め」という発言が印象深かった。 「本の雑誌2月号」「イン・ポケット1月号」が届いた。
| 2002年01月20日(日) |
芦辺拓「時の密室」はダイナミックな大阪物語である。マキューアン「夢みるピーターの七つの冒険」を6ページほど読んでみた。 |
芦辺拓「時の密室」(立風書房2001.3.5)はダイナミックな近代大阪物語である。明治初期、昭和、現代という三つの時代の事件がすべて密接に絡み合って大団円に向かっていくという胸のすくような構成になっているのが特色。 一つの重要な役割を果たすのが水上アクアライナー。大阪城公園から実際に乗ってみたが、作者の説明・描写の通りであった。この時期に乗っても目立つのは川岸に並ぶ青いシートばかりでかろうじて大坂城が救いの主となっていた。物語は春のことだから桜並木などでもう少しはなやかなはずだ。 前作の「時の誘拐」同様に大阪の歴史と大阪そのものが主人公である。決して良くは変貌していっていない大阪という街に対する哀惜の念を根底に秘めながら現実の大阪をリアルに描写し、しっかりとした物語を構築していく作者の手腕は敬服に値する。 もちろん、意外な解決や結末を含めてトリックと人物描写も出色の出来である。 俄然次回作が楽しみな作家となった。 イアン・マキューアン(訳=真野泰)「夢みるピーターの七つの冒険」(中央公論新社2001.11.7)を6ページほど読んでみた。7つの話の前にある「ピーターはこんな子供」の最初である。ピーターは十才の少年で大人から「むつかしい」子供と見られている。一人でいることが多く呼ばれてもなかなか返事をしないから。単に空想に耽っているだけなのだが、大人にはわからないのである。 印象に残る文章が多いのが特色。これだけしか読んでいないのにこんな文章が目についた。 「ひとりでいるということについても、大人はあまり喜びません。ほかの大人がひとりでいることさえ、喜びません。みんなといっしょになってくれれば、そのひとが何をしようとしているかわかります。みんながしようとしていることを、そのひともしようとしているのですから。」(15〜16ページ) このこのつづきはいつよめるかわからないが、きたいしてよさそうな本である。
| 2002年01月19日(土) |
椎名誠「本の雑誌血風録」(朝日文庫)「新宿熱風どかどか団」(朝日文庫)を読む。 |
椎名誠「本の雑誌血風録」(朝日文庫2000.8.1)「新宿熱風どかどか団」(朝日文庫2001.8.1)を読む。 徐々にエッセイ化していっている自伝的大河小説。週刊文春連載のエッセイとの違いが少しずつ消え、どこかで融合しそうな気配。現代日本の私小説作家の極北というべきか。 身辺の何を書いても面白い小説やエッセイになるというすばらしい作家である。 二冊読んで印象に残った人物は情報センター出版局の星山編集長である。椎名誠にとっては本の雑誌社関係の人々と同じように大切な人のようである。 「哀愁の町に霧が降るのだ」「新橋烏森口青春編」「銀座のカラス」と続けて読み、そのあと暫く間が空いて、また椎名誠に戻ってきたわけだが、この読書はややノスタルジックな読書になった。 「本の雑誌」がいつ出て、どこで買えるかわからなかったかつての時代が懐かしい。あんな風に主体的に自分が動かなければ手に入らない、あるいは動いても手に入らないスリルは最近はとんとない(なくて幸福だが)。 今回「おすすめ文庫王国」が見つからずすこしいらついたが、都市部に行けばあることは分かっていたから、本質的にスリルとは言えない。 前にも書いた通り、目黒考二の文章を「小説推理」で毎月読むことで「本の雑誌」への飢えを癒し、「哀愁の町に霧が降るのだ」の下巻を本当に出るか不安になりながらも待ち遠しく思っていた日々がシンプルで良かったような気がする。 と、こちらがいろいろな事を思う種本であった。
| 2002年01月18日(金) |
「おすすめ文庫王国2001年度版」(本の雑誌社)をやっと入手。 |
「おすすめ文庫王国2001年度版」(本の雑誌社)をやっと入手。車で30分圏内にあるどの本屋さんにもなかったので、いくらなんでもとしびれをきらして結局大阪駅前の旭屋書店まで出かけて購入するということになってしまった。 店の中央の柱棚で見当たらないので小柄な男性の店員さんに「本の雑誌社の文庫王国ありませんか。」と尋ねた。するとすぐには見当がつかないらしく彼は近くにいた小柄な女性の店員さんに相談した。その店員さんはすぐにわかって先程の柱棚のところに案内してくれた。なんとさっきは人がいて見えなかったところに本の雑誌2月号と一緒に並んでいたのだった。 彼女はもう二冊しかないのでと言って裏表紙の折れている方を見せながらきれいなもう一冊の方を差し出した。 こうして消費税込み735円の本の雑誌増刊を思い立ってから約1カ月後に手に入れることが出来た。 その日のうちに本文4ページから95ページまであらかた読んだのは言うまでもないの「い」である。 それにしてもこういう本を読むのは難しい。しっかり読みすぎると先入観を持つことになり、驚きや感動が減るような気がするからだ。何も知らないで読み、感動したり驚いたり、読んでよかったと思いたい。あらすじが書いてあったりすると記憶に残らない読み方をするかという気持ちになる。 本の紹介をする人もそのあたりが難しいのだろう。 この増刊号を読んでまず読む気になったのは各社の売れ筋コーナーの「朝日文庫」(95ページ)「新宿熱風どかどか団」(椎名誠)。「本の雑誌血風録」の続編が出ていることを初めて知ったのだ。そして、その本を関西空港の丸善でその日に購入した。
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