読書日記

2001年12月29日(土) 津村巧「ドゥームズデイ(審判の夜)」(講談社ノベルス)を一気に読了。

津村巧「ドゥームズデイ(審判の夜)」(講談社ノベルス)を一気に読了。殺戮につぐ殺戮の物語。圧倒的に優位な立場からの一方的な皆殺しゲームの物語。結末までにはじめの予想を軽く越える数の死亡者が出る。こんな殺伐たる小説を好んで読む者がいるのだろうか、と読みながら考えるくらい救いのない雰囲気がある。
そんな話をやめることができなかったのはひとえにその筆力とこちらの結末のつけ方への期待による。
じっくりと味わうような描写や思想はほとんどない。むしろ漫画の原作にした方がよかったと思うくらい。
しかし、語る情熱を感じた。それが500ページを一気に読ませたような気がする。
結末は予想を越えるものではなく、やや期待外れだった。
それにしても最初の十数ページは、最近はこういう話にはなれっこになっているとしても決して心地よいものではない。
この作者には今度はもっと違う、たとえば「青春」ものとか、SFならば「時間」ものとか殺人の出てこない熱気あふれる物語をかいてほしい。
昨日、購入した本は二冊でロバート・A・ハインラインの作品。
「宇宙の呼び声」(森下弓子=訳)創元推理文庫1990.8
「栄光の星のもとに」(鎌田三平=訳)創元推理文庫1994.9



2001年12月28日(金) 横山秀夫「陰の季節」を読んだ。

横山秀夫「陰の季節」を読んだ。短編集の表題作、70ページほどの長さで第5回松本清張賞受賞作とある。春も間近、人事異動に多くの人々が悩み苦しむ季節に警察内部でも定年退職者の天下り先の件で手間のかかる問題が起きた。三年たったら後任に空ける約束で天下った元警官が辞任を拒否してきたのだ。泡を食った幹部たちは人事担当の核とも言うべき人物に事情を探らせ説得しようとする。やがて未解決の事件との関わりが浮かび上がってる。
展開は謎が謎を呼ぶ式で興味が最後まで持続し、思いがけない結末まで一気に引っ張られた。その点では凄腕の作者である。
しかし、その過去の事件がすべて同一犯の仕業というのが説得力がないし、追う者と終われる者の出会いがあまりにも都合がよすぎて不自然である。
ひとつのほら話としては面白いが冷静に考えると納得できなかった。
今日もまたビデオで映画。
「ジュヴナイル」テトラという小型ロボットと小学生の子供たちとの交流と冒険を描いたSF映画である。地球を侵略する宇宙人。ワームホールを利用したタイムマシーン。藤子不二雄に捧げるという言葉が最後のスクロールの中にあったので二人のSF漫画を思い出した。結末はちゃんと作ってあるので日本のSF映画としては珍しく心地よく見終わることができた。



2001年12月27日(木) 恩田陸「出雲夜想曲」とジョン・クロウリー「ナイチンゲールは夜に歌う」を読んだ。

 恩田陸「出雲夜想曲」とジョン・クロウリー「ナイチンゲールは夜に歌う」を読んだ。両方とも短編で「出雲夜想曲」は「三月は深き紅の淵を」の第二章、「ナイチンゲールは夜に歌う」は同題の短編集の冒頭に置かれたもの。
「出雲夜想曲」は二人の女性編集者が「三月は深き紅の淵を」の作者を捜しに出雲に出かけて行く物語である。その旅の言い出しっぺの堂垣隆子は三十代、誘われて一緒に行く江藤朱音は四十代という設定だが、夜汽車の中での作者についての純朴かつ乙女チックな会話が延々と続きこちらをにやりとさせてくれる。終りの場面の重いイメージと意表を衝く返し技が印象的だった。
第一章同様、小泉八雲を思わせる謎の人物が主人公の女性の近くに登場する。
恩田陸は日本のエリナー・ファージョンである。その物語は成人のための「童話」というおもむきもある。もちろん小学校高学年の子供や中学生が読んでも面白く読める。一般向けに普通に書いた作品が児童文学や童話になっていても何の不思議もない。思い切ってファージョンのような児童のための作品を書いてみたら物凄い傑作になった、もあり得るのではないか。
「ナイチンゲールは夜に歌う」はメルヘン的な読みやすい作品。神が「人間」を思いついたばっかりに世の中が汚れてゆき、取り返しのつかない事態に陥る。
今日はビデオを見た。
「スペース・トラベラーズ」はあの映画版「踊る大捜査線」と同じ監督ということで期待し、ラストの寸前までは比較的面白かった。しかし、「明日に向かって撃て!」を真似したようなラストには不満。テロリスト役の渡辺謙が大勢に紛れて逃げた場面の後からぐっと平凡になり意哀しい終わり方には不満。全員無事に逃走させるという一種のコン・ゲーム的展開を考える関係者がいなかったのだろうか。快作(怪作)になり損ねた、もったいない映画だった。



2001年12月26日(水) 「文藝別冊追悼特集山田風太郎」と芦辺拓「時の密室」を手にとったが、全く読めず、残念。

「文藝別冊追悼特集山田風太郎」と芦辺拓「時の密室」を手にとったが、全く読めず、残念。
今日は野暮用の最たる日で今午前零時になるところだが、その用が終わっていないので日記もゆっくり書いていられない。
山田風太郎の「開化の忍者」は題名からそそる面白そうな短編。すぐにでも読みたいが。今漠然と読みたいと考えている本は次の通り。
恩田陸「ドミノ」(角川書店)
大野晋「日本語と私」(朝日新聞社)
ディーン・クーンツ「奇妙な道」(扶桑社文庫)
逢坂剛「重蔵始末」(講談社)
今日はここで。


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