読書日記

2001年12月25日(火) 恩田陸「三月は深き紅の淵を」の第一章読了、中坊公平「罪なくして罰せず」(朝日文庫)を読み始めた。

恩田陸「三月は深き紅の淵を」の第一章読了、中坊公平「罪なくして罰せず」(朝日文庫)を読み始めた。
「三月は深き紅の淵を」の第一章は「待っている人々」(117ページまで)を読み終えた。履歴書の趣味欄に「読書」と記入したということだけで会社の会長の屋敷に招待された若手社員鮫島巧一を待っていたのは限定自費出版本「三月は深き紅の淵を」をめぐるミステリーだった。一冊の本についての喜劇的状況に投げ込まれた鮫島は待っている人々の期待に応えて謎を解明する。物語の体裁を借りた読書論、読者論、文化論ともいえるが作者の饒舌はなめらかである。
今日はJRに乗らねばならない羽目になったので車中読む本として丁度良い大きさと厚さのものを選んだ。中坊公平「罪なくして罰せず」にした。行き帰りで76ページまで進んだ。記者や新聞の衰弱のことなどに始まり筆者の意見が冴え渡り、またそれらがいちいち得心がゆく。予想以上の迫力ある「意見の書」である。今まで筆者についてはテレビを通しての知識やイメージしか持っていなかった。今回はこの著書によってその独自性や正義感、信念などをはっきり知ることができるにちがいない。本との「出会い」を感じた。



2001年12月24日(月) 私的今年のベスト20(今年は「デルフィニア戦記」と時代小説の年だった。)

私的今年のベスト20(今年は「デルフィニア戦記」と時代小説の年だった。)
茅田砂胡の「デルフィニア戦記」は「本の雑誌」の企画によってその存在を明確に知り、全15冊でちょっとした読書の旅を経験した。その原型とも言うべき「王女グリンダ」は未読のままとってある。その昔、田中芳樹の「銀河英雄伝説」を毎年楽しみにしていたことを思い出したり、さらにその昔のトールキンの「指輪物語」との思い出も蘇えったりで、完結して「しまった」ことが今でも残念である。続編をというありえない期待あり。
そして、佐伯泰英の時代小説との出会いは鮮烈だった。読むに値するのは隆慶一郎と池波正太郎の二人だけという思い込みを見事に解放してくれた。知った時には既に相当の売れっ子で自分だけの作家というわけにはいかなかったのが悔しかった。読むものすべてが傑作と感じられ楽しかった。
下の作品だけでは20作品にはならない分は上の二人の作品の分である。
また、この並び方は読んだ順番である。
「GO」金城一紀(講談社)
「コフィン・ダンサー」ジェフリー・ディヴァー(文藝春秋)訳=池田真紀子
「汝ふたたび故郷へ帰れず(リバイバル版)飯嶋和一(小学館)
「天下騒乱(上・下)」池宮彰一郎(角川書店)
「だれが「本」を殺すのか」佐野眞一(プレジデント社)
「ゼームス坂から幽霊坂」吉村達也(双葉社)
「模倣犯(上・下)」宮部みゆき(小学館)
「牙の領域(フルコンタクト・ゲーム)」中島望(講談社)
「クリスマスのフロスト」ウィングフィールド(東京創元社)
「フロスト日和」ウィングフィールド(東京創元社)
「始祖鳥記」飯嶋和一(小学館)
「宮崎駿の<世界>」切通理作(筑摩書房)
「ほぼ日刊イトイ新聞の本」糸井重里(講談社)
「秘伝・宮本武蔵(上・下)」光瀬龍(徳間書店文庫)
「江戸忍法帖」山田風太郎(講談社)
「銀の雨」宇江佐真理(幻冬舎)
「黄金」ディック・フランシス(ハヤカワ・ミステリ文庫)

ビデオで映画を見た。「サトラレ」主演は安藤政信。2時間を超える長さ。現代の癒し系ファンタジーとでも呼べそうなワン・アイデア徹底的貫徹作品で好感。外国映画を見ているようだった、はほめ言葉になるか。3時間ほどゆとりがあるときに是非「どうぞ」と薦めたい。



2001年12月23日(日) 「明治九年の謀略」(舞岡淳)「アンドロイド殺し」(二階堂黎人)「三月は深き紅の淵を」(恩田陸)を少しずつ読んでみる。

「明治九年の謀略」(舞岡淳)「アンドロイド殺し」(二階堂黎人)「三月は深き紅の淵を」(恩田陸)を少しずつ読んでみる。
最近は読書にこれといった目標がなくなっているのせいかこんな読み方をして結局どれも読了せず、が多い。根気がなくなっている。
「明治九年の謀略」(光文社カッパノベルス)はわずか六ページ。題名の通りの時代にしても会話が辞典のように固い。しかし、雰囲気は期待できそう。
「アンドロイド殺し」は「少女の空間」(徳間デュアル文庫)の一編。三分の一ほど読んだ。「アクロイド殺し」のパロディというより「スタートレック」のそれらしい。
「三月は深き紅の淵を」(講談社文庫)は単行本時に一度読んでいる。50ページほど読み進むも新鮮である。また記憶がない。今日、本屋さんでこの作者の大部の新刊のタイトルを見てこの「三月」を思い出した。まず「三月」を読んで記憶を新たにしてからでないとあの新刊は読むべきでないような気がした。「三月」の中で言及されている本が新刊の本にちがいないと考えた。
いざ読んでみると楽しくすいすい読める。小説の形をとったエッセイのごとくで、ディック・フランシスは人間を語ったが、恩田陸は物事を語って面白い。特にこの小説は長編評論随筆というおもむきで文化論的である。暫くこの作品を読むことにする。
今日は本の雑誌社の「おすすめ文庫王国」を買いに本屋さんに出かけた。しかるに、まだ店頭に出ていなくてがっかり。
手ぶらでは帰れず次のような買い物になった。
恩田陸「三月は深き紅の淵を」(講談社文庫)
デュアル文庫編集部編「少女の空間」(徳間デュアル文庫)
山田風太郎「黒衣の聖母」(ハルキ文庫)
町田康「夫婦茶碗」(新潮文庫)
ニコラス・ブレイク「死の殻」(創元推理文庫)



2001年12月22日(土) 「黄金」読了。語り手の観察力や洞察力に基づく

「黄金」読了。語り手の観察力や洞察力に基づく一見謙虚に見える痛烈な言葉が魅力である。犯人を罠にかける点では独創性はないが、犯人の動機や過去への遡及性で「驚き」を用意している点で創造的な物語である。
競馬シリーズの最上の部類に入る読みごたえのある作品だった。最近遠ざかっていたことを反省した。
ディック・フランシス(訳=菊池光)「黄金 HOT MONEY」(ハヤカワ・ミステリ文庫1993.10)
今月も世間よりも1週間ほど遅れて書店から届いた「本の雑誌2002.1」(本の雑誌が選ぶ2001年度ベスト10)をまた拾い読み。
ベスト10の中で読んだのは「25時」一冊。この作品を高く評価している北上次郎の「このラストのどこがいけないのか」(80ページ)が注目。結末が夢想なのか現実なのかどちらにしても眠たい頭を醒ますほどインパクトのあるものだった。どちらでもいいのかもしれないが、題名が「自由な時間」を象徴するならあれはさりげなく「現実」ととって主人公の「自由」な「その後」をめでて豊かな気分になる道もある。


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