| 2001年11月15日(木) |
宇江佐真理「銀の雨」恩田陸「MAZE(めいず)」読了。 |
宇江佐真理「銀の雨」恩田陸「MAZE(めいず)」読了。宇江佐真理「銀の雨(堪忍旦那 為後勘八郎)」(幻冬舎文庫2001.8.25)は、五話からなる連作集。冒頭十二歳だった勘八郎の娘小夜が最後の話では十七歳の新妻に成長し、太一郎という子供まで生む。だから、その小夜がたわいない少女から一人の女性へと成長してゆく過程を描く物語とも言えるかもしれない。 その他にも十代前半の梅吉、おゆた、おみちと魅力的な子供たちが登場し、いずれもその健気さが胸を打つ。 「その角を曲がって」と「魚捨てる女」が読後余韻を深く残す。愛する者を失う少女と少年の記憶すべき物語である。 佐伯泰英と並んで重要な作家となった。 恩田陸「MAZE(めいず)」(双葉社2001.2.15)は一つのアイデアに鋭く切り込んだ痛快ファンタジーである。 未開の奥地の丘の上に立つ白い豆腐のような建造物。入り口は1カ所。中は迷路のようになっている。中に入ると出て来られなくなるという伝説があった。その謎をつきとめるために膨大な金を費やして四人の男たちがやって来た。 長編というより中編で結末はややあっけないが人間消失の謎の解答は壮大なイメ−ジで「マトリックス」に通じるものを感じた。 しかし、迷路を内蔵する矩形の白い建物が人工物なのかそうでないのかはっきりしない終わり方は納得できなかった。伝説の建物を利用したのか、それとも人間が作って伝説をベールとして利用したのか。面白いことは面白いのだが、というところ。
| 2001年11月14日(水) |
宇江佐真理「銀の雨」が、やはり大傑作。「 |
宇江佐真理「銀の雨」もう少しで読み終わる。やはり大傑作。日本人必読である。「その角を曲がって」「犬嫌い」「魚捨てる女」「松風」と続き、最後の「銀の雨」に至る連作集は親と子の情愛を中心にさまざまな世代の脆さ、弱さ、強さ、優しさなどの思いを的確に描き出している。主人公の「堪忍旦那」と呼ばれる同心もよいが、何よりもその同心の娘や馴染みの男の子などの少年少女たちが魅力的である。特に主人公と行動をともにすることの多い小者の娘は場面をさらうほど生き生きとしている。こういう小説は大人向けのものということになっていても悪い意味でなくなにかしら児童文学的時代小説の香気が漂う。中学生くらいの少年少女が読んでも魅力を感じるのではないだろうか。 今、これを読み終わるところだが、今日は恩田陸の「メイズ」にもちょっと手を出した。
| 2001年11月13日(火) |
宇江佐真理「銀の雨」感動あり涙ありで大傑作。 |
宇江佐真理「銀の雨」感動あり涙ありで大傑作。初めの二話を読み、驚愕した。人間がしっかりとした輪郭で描かれているのでその言動を読んで感動するやら涙するやら、とりあえず文句のつけどころが皆無。同じ時代小説でもジャンルが異なるが佐伯泰英の強力なライバル出現のイメージで作者の名前を記憶する。 日本人必読の作家の登場である。こんなに生き生きとした日本人を描く作家はまれではないか。また、あとがきも面白い。講談社文庫の「室の梅」のあとがきも読んでみた。これも良かった。エッセイとしても見事に成立している。 時代小説の賞をとり単行本でデビューして評判をとっていたのは知っていたがこれほどとはついぞ知らなかった。 財津和夫のコンサートに行ってきた。終盤からアンコール三曲が盛り上がり非常に良かった。
| 2001年11月12日(月) |
福井晴敏「亡国のイージス」宇江佐真理「銀の雨」ちょっとずつ。 |
福井晴敏「亡国のイージス」宇江佐真理「銀の雨」ちょっとずつ。両書とも冒頭の4、5ページを読んだだけでその後の面白さが十分期待できることがわかった。主になる人物の造形がしっかりしている。さらに取り巻く人間たちとの関係や場面も同様にすっかり出来上がっている。話の展開もさることながらまず人間の言動が魅力的である。 宮部みゆきの「R.P.G.」の事を今考えている。面白かったのだが、ああいうやり方が警察の中で行うことは可能なのだろうか。また、可能だとしたらとんでもなく恐ろしいことにつながるのではないかと。 読み終わって見れば自白を得るための一種のいじめである。目撃者もいたのだからあそこまで組織だった巧妙な計画を実行しなくても良かったのでは、などなどいろいろ考えている。
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