読書日記

2001年10月23日(火) 佐伯泰英「橘花の仇」の第3章「神隠し」を読んだ。

佐伯泰英「橘花の仇」の第3章「神隠し」を読んだ。しほが聞き書きした似顔絵がきっかけにして若い娘の神隠し事件は解決へ向けて大きく進展し、解決する。とんでもない神隠しがあったもので現代の日本の風潮にも通じるところがあり、苦い結末でもある。江戸庶民の群像を書き分けるのが作者の意図ではないかと思われるほど行き届いた物語で見事である。剣豪を書くのがうまいだけではないのだ。
今日は、やっと「本の雑誌」の11月号が届いた。1週間ほど前に主なところは立ち読みしているのであまり嬉しくない。鏡明のエッセイが良かった。50ページから64ページまでは毎号充実していていつも楽しみなイエローページである。
ほかに講談社の「イン・ポケット」の最新号も来た。二百円だった。最初は100円だったのに。150円を経て200円である。
中村真一郎「小さな噴水の思い出」(筑摩書房)の第8章の題は「『世界市民』の理念」である。世界市民または人類の理念が日本人にないと説く。人類の将来のために日本はどのような役割を果たすことができるのかをまじめに考えることが今こそ必要だと述べている。結びの「私は忘れないつもりである。」が印象的だった。
今日も全く読まなかった。



2001年10月22日(月) 今日は「江戸東京物語(都心篇)」を購入。

今日は「江戸東京物語(都心篇)」を購入。今年九月の新潮文庫である。時代小説に凝るとこういう本にも興味を持つようになる。解説を山本夏彦が書いている。その他、佐伯泰英「橘花の仇」の第3章「神隠し」をちょっと読み、林望の「魅力ある知性をつくる24の方法」(青春出版社)を広く拾い読みした。
中村真一郎「小さな噴水の思い出」(筑摩書房)の第7章の題は「友よ、眠れ」で、これは野間宏を送った文章。「現代文学の柱であった大いなる友よ、安らかに眠れ。」と結んでいる。今日は時間がなく、ここで終わり。



2001年10月21日(日) 佐伯泰英「瑠璃の寺」を読み始める。

 佐伯泰英「瑠璃の寺」を読み始める。遠路長崎から江戸に着いたばかりの子供連れの若者が老人の命を救う。その老人は江戸の非人頭だったから若者の熱い思いは思いがけない速さで現実になってゆく。と、物語の展開は核心に迫るのが早そうだ。
中村真一郎「小さな噴水の思い出」(筑摩書房)の第6章の題は「めでたい正月」筆者の必ずしもめでたくはなかった幼少から青年期、さらに壮年期を振り返りながら七十代に達したその時の「今」の自分をやや誇らしげに語っている。
「私のまわりに集まってくるのは、新しい仕事の夢の群である。」最後まで仕上げるべき作品の夢想と構想に耽っていたという筆者の若々しい精神が感じられる。
「新年早々、近代作家の冗舌な言葉の氾濫は、もう中年過ぎた私にはわずらわしい。ラテン語の簡潔な後の配置が、精神に快いのである。」
筆者が本や読書について語る部分は特に生き生きとしている。
物置から「新宮本武蔵」の1と2を掘り出してきた。裏を見ると連作剣豪小説とある。目次にも「人形武蔵」「幽霊武蔵」「ぶんしん武蔵」などとあり短編集のようだ。最初の「人形武蔵」を読んだ。傀儡師の使う三寸ほどの人形たちがまるで生きているように動き、武蔵に集団で襲いかかるという伝奇的な話で、一方の武蔵も素直にこわがって逃げ回る後世に言う所の剣聖でも剣豪でもない普通の男として描かれている。「秘伝・宮本武蔵」の武蔵と同じと言えば同じか、というところ。



2001年10月20日(土) 佐伯泰英の新作に驚く、しかし・・・光瀬龍を読む。

 ハルキ文庫に佐伯泰英の新刊がでていて、驚く。が、よく調べてみると「瑠璃の寺」の改題文庫版。11月12月続けて文庫の書き下ろし新刊が出るのは、ケイブンシャ文庫によって知っていたのでかえって驚いたらしい。
光瀬龍「秘伝・宮本武蔵(下巻)」(徳間文庫1982.7)読了。いわゆる剣豪ものと歴史ものを融合して伝奇ものを加味した時代小説である。主人公を扱う視点が明瞭でなく、つまり宮本武蔵、佐々木小次郎、申、松山主水、柳生一族、真田幸村、服部半蔵のいずれでもなく歴史そのものが主人公というべき物語となっている。読み手の感情移入がしずらかったり、はぐらかされたりするのは、作者の意図である。娯楽的な時代小説とは根本から異なる作品なのである。しかし、最初からそういう意図で書き始めたかどうかは疑問で、途中から作者の関心が標準的な時代小説を書くことから大きく離れていったような気もする。
 佐伯泰英や鳥羽亮を読んでいる眼で見ると首尾一貫していないので、安心して物語の展開を楽しむことがアホに思えるスリリングな作品とも言える。
 中村真一郎「小さな噴水の思い出」(筑摩書房)の第4章の題は「九〇年読書五点」で五冊の本を取り上げている。どれも海外(パリと中国)で刊行されたもので原書である。近代文学に対する解毒剤として精神衛生上いいそうである。また、毎日、一冊必ず未見の本を開く習慣を強情に守っていると最後に述べている。
 第5章は「九〇年、私のベスト3」これは早川書房のミステリマガジンのアンケートへの回答。クレイグ・ライス「死体は散歩する」キャロライン・グレアム「闇の告発」ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」これらを本当に読んだのだろうか。少し疑った。
 最近購入した本は以下のとおり。
ヴァン・ダイン「ベンスン殺人事件」(創元推理文庫)
鳥羽亮「穏猿の剣」(講談社文庫)
鳥羽亮「剣客同心・鬼隼人」(ハルキ文庫)
 


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