読書日記

2001年10月14日(日) 光瀬龍「秘伝・宮本武蔵(上巻)」読了。勇んで下巻を探したが・・・

光瀬龍「秘伝・宮本武蔵(上巻)」読了。勇んで下巻を探したが・・・
 久々に一冊読了。光瀬龍「秘伝・宮本武蔵(上巻)」(徳間書店文庫1982.7)を就寝前に読み終えた。最初に出てきてその後消えた柳生兵庫助が終盤で再登場し、いよいよ役者が揃ったところで上巻が終わった。下巻はどこかにしまってあったはずと段ボール箱を開けると出てきたのは、なんと上巻だった。冗談でなく、上巻だった。ショックで寝込んでしまった。またもどかしい毎日になる。残念賞。
 気が狂って、糸井さんの本に手を伸ばした。「ほぼ日刊イトイ新聞の本」(講談社)で、著者はもちろん糸井重里氏。軽い気持ちと軽快な文章で一気読みの気分だが、結構内容は重いし、思いがけない。始めの方の「子どもの偽ウォークマン」と「ADのまっとうなジーンズ」の話と糸井氏の考え方は、先日の「失われた手仕事の思想」とも通じるようなところがあって感銘を受けた。今、234ページまで来て野暮用で中断しているが、意外にも良い本であった。
 他にちょこちょこ拾い読みしている本は次の通り。
永江朗「批評の事情(不良のための論壇案内)」(原書房)パラパラめくっておっと思ったところを読むと必ず引き込まれてしまう。
中村真一郎「読書の快楽」(新潮社)格調の高さというムードがほしいと読む一冊。小説は一冊も完読していない点では大江健三郎以上に困難さを覚える著者である。



2001年10月13日(土) 木枯し紋次郎と宮本武蔵を読んでいる。

 木枯し紋次郎と宮本武蔵を読んでいる。
 佐伯泰英氏の時代劇を絶賛しているうちに、これ以上の作品を書いている作者は本当に他にはいないのだろうかと疑問を持った。ただし、この問は現在、つまり今の時点で、である。佐伯泰英氏が時代劇を発表した1999年前後から2001年の今まで、ということである。過去を顧みたらきりがないのは少し知っているので、バリバリの現役作家を対象に考えている。
 とはいっても、実際にちょっと読んでみたのは、笹沢佐保の「帰ってきた木枯し紋次郎」(新潮社文庫)だから、考えていることと違うことをしているわけである。最初の「生きている幽霊」を読んでの感想は「文句なし」である。一つの世界が見事に描かれている。老いを感じてきた紋次郎の悲哀は、惣三郎の老いの描写に通じるような気がする。しかしバリバリの現役作家の、というよりも、ベテランの名匠による標準作、安定作であった。
 次に、光瀬龍の「秘伝・宮本武蔵」(徳間書店文庫)を読み始め、とうとう267ページまで来た。1976年に単行本でまず発行された作品である。一応この作者のファンだったのに気になったまま読まずに今日まで過ぎたわけである。いや、もしかしたら一度読んでいるのに忘れているだけなのかもしれないが。
 開いて小さい活字にまずひるんだが、読み出すと知名度の高い人物が宮本武蔵の周りに続出、剣戟場面も鮮やかで100ページすぎまでなめらかな展開である。そこに歴史的説明が挿入され、暫く遅滞するが、あらためて時間が少し過去にもどったところから再び、今度は佐々木小次郎を軸に話が進んでゆく。
 故・光瀬龍の最高峰に立つ作品であるにちがいない。見事なストーリー・テリングを持つ歴史学者が書いた時代活劇の傑作である。
 この文庫本は昨日ブックマーケットで見つけたものである。
 現役作家バリバリの一人に鳥羽亮という作家がいると聞いた。いま、探しているところである。
 





2001年10月12日(金) 「橘花の仇」と「失われた手仕事の思想」をちょっと。

 「橘花の仇」と「失われた手仕事の思想」を少しずつ。
 佐伯泰英の鎌倉河岸捕物控「橘花の仇」(ハルキ文庫)の第二話「逢引き」を読んだ。強烈な個性をもつ侍が主人公の話とは違って人情味で読ませる。作者の器量の大きさが控えめに出ている。直心影流免許皆伝という同心寺坂毅一郎が抜群の腕前を示す場面は数行だが、光っている。
 塩野米松「失われた手仕事の思想」(草思社)は最近評判の単行本。まえがきと最後の第4章「手の記憶」を先に読んだ。具体的な手仕事や職人を扱っている部分は避けたことになる。興味が今一つ湧かなかったせいである。平明かつ綿密な文章が描き出しているのは冷徹な現実だった。かつて川田順造が「サバンナの手帖」で語った、日本における手仕事の未来は「今」だったのだ。すべては題名が語っている。



2001年10月10日(水) 「氷の天使」と「ミステリ講座の殺人」を少しずつ。

「氷の天使」と「ミステリ講座の殺人」を少しずつ。
 まとまった時間がとれないので、気になっていた海外のミステリーの最初の方を読んでみた。オコンネル「氷の天使」はキャシー・マロリーのシリーズ一作目。16ページで期待感が大。キャロリン・ハート「ミステリ講座の殺人」はほとんど期待していなかったが、女性主人公が大学のミステリ講座をつい引き受ける22ページまで楽しめたのはミステリに関する蘊蓄の魅力かもしれない。こちらもまた期待できる。


 < 過去  INDEX  未来 >


イセ [MAIL]

My追加