読書日記

2001年08月27日(月) 「始祖鳥記」「あるく魚とわらう風」をやっと読む。

8月24日(金)から8月27日(月)までのまとめ。
「始祖鳥記」「あるく魚とわらう風」をやっと読む。
「始祖鳥記」飯嶋和一(小学館2000.2)遂に47歳の幸吉が夢を実現するために動きだす。幕末までわずか64年の時代である。時代の新しい動きに呼応して傑出した人物が登場する中、自由のすばらしさを象徴するかのように宙に飛び出した。
 奇矯な人物の一代記という予想を裏切ってその時代を見事に活写した。一つ気になるのは砂絵の名人卯之吉の消息だが、今のところ、この著者には傑作しかない。稀有な寡作の作家である。あの「雷電本紀」(河出書房新社)の執筆以前からあたためていたという題材を傑作に仕立てた。
「あるく魚とわらう風」椎名誠(集英社文庫2001.2)はこの筆者の超常日記。こんなに日本中を動いて、食べて、飲んで、読んで、語って、書いて、会って、写してなどなど超人的行動の記録である。1995年から1996年まで1年半の実録。似たような行動の反復といえばそれはそうだが、こんなに行動する知的な作家は今の日本にはいない。アウトドア、インドアどちらでもいけるのが特色。
 ダン・シモンズの超傑作SF「ハイペリオン」を世間よりもちょっと遅れて読んでウハウハ言っているところに共感。「ハイペリオン」の翻訳が出たのはこの頃だったのだ。
 椎名誠といえばエッセイと「岳物語」だが、わたしのベストはSFの「アド・バード」エッセイを少し減らしてSF大作を物して貰いたい。 



2001年08月23日(木) 「始祖鳥記」もうすこし。

「始祖鳥記」もうすこし。
 主人公のはずの幸吉が背景に消えて伊兵衛が全面で活躍。しかし、事の実現目前に死病で26歳の若さで消えてゆく。源太郎とともに舵取りとして重要な位置にいた杢平も視力の衰えのためリタイア。第二部の終幕は離れてゆく船を杢平と幸吉が二人で見送る場面である。299ページまで読む。第三部は11年後。幸吉は42歳になっているようだ。後90ページ足らずの物語になった。予想を覆す展開である。
 「月刊アスキー九月号」「ダ・ヴィンチ九月号」「文藝春秋9月号」をそれぞれ軽く読み流す。今のところ、気になるような記事は一つもない。
 明日から、二日間旅に出るので今夜のうちに「始祖鳥記」は読み終えたい。明日、あさっての分の日記はゆとりがあれば26日まとめたい。今回は列車に往復六時間は乗っているので逆に本が読めるかもしれない。眠ったらそれまでだが。



2001年08月22日(水) まだ「始祖鳥記」を読んでいる。

まだ「始祖鳥記」を読んでいる。
 第二部は、塩問屋である巴屋の伊兵衛の登場から始まる。その伊兵衛と買積船の船頭である福部屋源太郎が出会いから話が大きく展開して、やがて幸吉と結びついてゆく。
 今日は野暮用の合間に234ページまで読んだ。今日は台風が猛威をふるっているが、天明五年1785年の幸吉や源太郎たちが乗った船も強烈な颶風に翻弄されている。
 人と人との素の出会いから生まれる崇高さを描きながら物語はより大胆な方向へ当たり前のように進んでゆく。残り約150ページ、どんな展開になるのか楽しみである。
 
 「本の雑誌九月号」再読。青山南の連載が注目。「楽しみの読書」が今回のタイトルでアメリカの新聞の書評家ジョナサン・ヤードリーを話題に取り上げている。「読んでいて楽しい」と言うヤードリーが書いたリング・ラードナーとフレドリック・エクスリーの伝記が読みたくなった。翻訳されていない面白い本はまだいっぱいあるのだろうな、と改めて本の世界の広さ、多様さを実感した。



2001年08月21日(火) 「始祖鳥記」(飯嶋和一)を再び.

「始祖鳥記」(飯嶋和一、小学館2000.2)を再び読み始めた。第1部(138ページ)まで読む。主人公幸吉は30歳になるが、凧で空を飛ぶことに成功していない。成功はしていないが、夜な夜な空を飛び回る不気味な鵺として世間を騒がせる存在、ひいては幕府を揺るがす元凶として逮捕されてしまう。一介の職人幸吉が鳥人幸吉の道をひたすら進んでゆく様子がダイナミックかつ繊細に描かれる。ここまでで既に傑作である。
 これまでの作品もすべて必読の傑作である。
「汝ふたたび故郷へ帰れず」「雷電本紀」「神無き月十番目の夜」(すべて河出書房新社)手の内をあまり明かさない冒頭はちょっととっつきにくいが、すぐに主人公やその周りの人物たちの魅力にとらえられてしまう。
 現代最高のストーリー・テラーである。
 
今日はこれだけ読むのが精一杯だった。


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