| 2001年07月15日(日) |
正統的ホラー「タイタス・クロウの事件簿」を半分読んだ。 |
ブライアン・ラムレイ「タイタス・クロウの事件簿」を半分まで 東京創元社の創元推理文庫の一冊。ラヴクラフトの後継者登場はいいが、邪神対名探偵とかオカルト探偵小説、オカルト・ミステリなどと宣伝してはいけない。近代的ホラーの決定版である。赤ん坊のとき偶然にも霊液の混入した聖水を浴びたことが後のタイタス・クロウの運命を決めたという短編「誕生」己の運命、またはなすべきことに気づくきっかけとなった妖怪紳士との対決を描いた中編「妖蛆の王」の二つを読んだ。じっくりと読むに値するイギリス発の伝統的ホラーは、読みごたえ十分である。 巻末で紹介されているタイタス・クロウもの長編6作品も早く出してほしい。 全く関係ないが、創元推理文庫には他社の文庫では感じない不思議な魅力がある。昔から長く買ったり、買わなかったりを繰り返してきたからだろう。
| 2001年07月14日(土) |
恩田陸「ライオンハート」は情熱的構成。 |
この話は古本屋に合う。恩田陸の「ライオンハート」(新潮社)。時空と肉体を超えた純粋な魂の放浪のラブ・ストーリー。 この作者もどんな陳腐な話も心躍るような魅力的な物語に変える錬金術師だ。かつてアガサ・クリスティについてもそう思っていたことがある。犯人探しの話でなくてもその語り口と登場人物の存在感で十分に楽しめた。ロバート・ネイサンの「ジェニーの肖像」フィリパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」を思い出したが、「ライオンハート」はより複雑でいいとこどり総集編というおもむき。構成的にも視覚的にもより洗練されたおしゃれな物語である。 構成の点では、結末のつけ方は「トムは真夜中の庭で」を連想させる。さらにさだかではないが福永武彦の「風土」あるいは「海市」もしかしたら「忘却の河」のいずれかと共通しているようなのだが。
| 2001年07月13日(金) |
川端康成の掌編「バッタと鈴虫」のこと |
川端康成の掌編「バッタと鈴虫」は忘れがたい魅力を持っている。旧帝大、旧制高校界隈の描写から始まって鈴虫取りの子供達を見ながらの独白で終わるのだが、語り手の急激とも思える想像力が思いもかけない展開を見せる。語り手の、または作者の得て勝手な思い込みの押し付けが過ぎるとも受け取れるが、二十人におよぶ子供たちが集まって一緒に虫取りをする夕暮れの景色は今となっては懐かしい景色である。「掌の小説」中の一編。
| 2001年07月12日(木) |
江國香織「デューク」は三回読んだ。 |
江國香織「デューク」(「つめたいよるに」中の1編)を読んだ。古本屋は出て来ない。出てくるのは、涙、犬、ジェームス・ディーン、キス、男の子、電車、クリスマス、十二月の街、オムレツ、プール、アイスクリーム、地下鉄、銀座、小さな美術館、落語、大通り、横断歩道など。そして、デューク。自分が大のつく甘ちゃんであることがわかった。犬を飼っているからなおさら、か。
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