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2006年10月26日(木)
日本シリーズ「日中対決」第5戦。 王手をかけた北海道日本ハムファイターズが中日ドラゴンズに4−1で勝利し、 見事に日本一に輝いた。 前身の東映フライヤーズ以来44年ぶり、日本ハムになってからは初の日本一。 北海道に移転してから3年目、見事にホーム・札幌ドームで頂点に立った。 やはり、この優勝は北海道のファンの熱い声援の結果ではないだろうか。 今夜の札幌は大騒ぎなんじゃないかな。 札幌の場合、川に飛び込むとしたら石狩川あたり??
このシリーズの流れは第2戦で決まったと言える。 7回一死から稲葉がエラーで出塁し、それが金子の逆転打につながった。 野球にとって、たったひとつのエラーは怖い。 流れをガラッと変えてしまうから。 その稲葉はシリーズで打率.353、2ホームランで見事MVPに輝いた。
日本ハムと中日の戦いを見て、守備や走塁の重要さをすごく感じた。 日本ハムは主に足で点を取っている。 2試合目の新庄の本塁突入や森本の盗塁と好走塁。 ヘッドスライディングでの3塁打はチームのムードを最高潮にさせる。 一方の中日は第4戦でウッズが2塁にいた時にライトフライで ウッズは足に不安があるとはいえ、タッチアップしなかった。 これは是が非でも3塁へ行くべきだ。 2塁と3塁とではプレッシャーが違う。 例えアウトになったとしても、積極さで弾みがつく。 そう、積極的な走塁はチームに勢いを与えるのだ。 それを怠った時点で中日は自ら勢いを殺してしまったのではないか。
守備は両チームとも素晴らしかった。 2死満塁のピンチを好守が救う。 好守で守りきれば、守った方には弾みがつき、攻める方は意気消沈する。 スポーツは心理戦でもある。 ひとつひとつのプレーが選手に影響を与え、試合の流れを作る。 だからディテールが重要なのだ。 これはドラマや小説でも同じこと。 1シーン、1セリフ、1文章を大事にしない作品は面白くもなんともない。
さて、今回ドラマという点では、ほとんど日本ハムに分があった。 ・新庄の引退 ・北海道のファン ・そして金村の復帰
第4戦に先発した金村は、ファンとチームに謝り、感謝した。 ヒルマン監督も「私にとってもチームにとってもファンにとっても 彼は誇りだ」と返した。 昨年の千葉ロッテといい、ドラマを抱えているチームは強い。 ファンは各選手の抱えているドラマを知っていて応援にも熱が入る。 新庄のため、金村のため、チームのためにファンが力を送る。 そして選手たちもファンに応えるために実力以上の力を発揮する。 この循環が日本シリーズという短期決戦ではプラスアルファを生む。 ドラマは求心力を作る。 だからドラマを抱えているチームは強いのだ。
さて、今シーズンで引退を決めている新庄だが、 過去にも阪神時代に引退を発表したことがあったので、 今回も本当に引退?と疑っている人も多かったが、 最後のバッターボックスで涙をふいている様子を見て感動してしまった。 新庄が日本ハムに入る時「札幌ドームを満員にする」と言ったことが現実となり、 「日本一にする」と言ったことも現実となった。 満員の札幌ドームで日本一、新庄らしい最後の花道である。 新庄はこの日本シリーズのプレー中、常に笑顔だった。 第4戦、満塁の場面でショート井端の好プレーでアウトになった時も 新庄はその好守を賞賛していた。 野球を楽しんでいた。自分にとって最後の野球を本当に楽しんでいた。 新庄は日本シリーズという舞台、勝敗というプレッシャーからは超越していた。 お祭りを楽しめて、結果勝てればいいと思っていた。 まさに「楽しみながら勝つ」それが新庄の魅力。 そして、その精神は若いナインたちにも伝わっていた。 だから日本ハムは余計七プレッシャーを感じることなく 楽しんで勝てたのではないだろうか。
現役最後の打席となるかもしれない8回は打席で感極まって泣いていた。 優勝が決まった瞬間も外野の位置から動けなかった。 現役最後のシーズンを日本一で飾れるなんて、やはり他の人にはない 強運というものを新庄には感じてしまう。
ヒルマン監督のインタビューの第一声「シンジラレナ〜イ!」 いったい、シーズン前は誰がファイターズが優勝すると予想しただろうか? 昨年は5位だったし、目立った補強もなかった。 だが近年のドラフトで獲得した選手が飛躍した。 ダルビッシュ、八木、マイケル、武田勝、鶴岡と1〜3年目の選手が 今シーズン大活躍したことによって前評判を覆し、 そして昨年まで強行一辺倒だったヒルマン采配も昨年の反省を活かしてか 今季はバントを多用して1点を守り抜く野球に徹していた。 そして何よりも北海道のファンの後押しによって勢いを力に変えていった。 札幌ドームの熱気と歓声は本当にスゴイね! あの新庄を応援する「真っ赤な応援団」は選手たちの力になるのだろう。 稲葉が打席に立った時の稲葉ジャンプの応援でドーム自体が揺れる。 40000人が同じタイミングで跳ぶので震度3と同じ揺れだそうだ。 それにドームとはいえ、北海道なのに球場内では半袖姿で観戦していた人もいた。 移転して3年目、ファイターズというチームが完全に北海道に 根付いているのが今回の日本シリーズで分かった。
日本シリーズは2003年がダイエー(現ソフトバンク)、2004年が西武、 2005年は千葉ロッテが日本一になっており、4年連続ですべて異なる パリーグのチームが制した。 プレーオフの恩恵もあるが、パリーグチームの地元を大切にする 企業努力も関係しているのだろう。 人気ではセリーグにかなわないと言われたのは昔の話。 いまやパリーグチームの各地元ではファンと一体となっている。 昔の栄光にあぐらをかいているセリーグ各チームは 運営方針を考え直す時期なのかもしれない。
さて、負けた中日ドラゴンズは、札幌ドームの雰囲気に呑まれたのか 最後まで「らしくない」戦いで終わってしまった。 きっと不完全燃焼だったのではないか。 先発投手陣、ストッパーの岩瀬は盤石だが、中継ぎ投手陣が夏場以降から不安定。 これが今回の日本シリーズでは命取りとなった形だ。 あとA級戦犯4番のウッズに打点がなかったのも痛かったね。 これで半世紀以上、52年もの間、日本一に辿り着けないことになった。 毎年セリーグで優勝争いをする実力のあるチームなのに 50年以上も日本一になれないのは何かに呪われているに違いない。 以前、メジャーリーグで「バンビーノの呪い」なるものがあったが、 もしかして中日にはきっと「板東英二の呪い」があるのかも!?
さて、ファイターズは来月開催のアジアシリーズの挑戦権も獲得した。 昨年の千葉ロッテ同様にアジアチャンピオンに輝いてもらいたい。 アジアシリーズに新庄は出場するのかな?
本当に北海道日本ハムファイターズ、日本一おめでとう!
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