umityanの日記
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2008年11月15日(土) 送迎バスに揺られて買い物へ。

僕たちは指定された送迎バスに乗り込んだ。一人、行方不明で、23名が同乗した。不思議なもので、旅行社が一緒で、同じバスだと、昔から皆、既知だったかのごとく親近感がわいてくる。互いに笑顔で挨拶なんか交わしている。黒のスーツに、緑色のコートを羽織った女性添乗員さんが、流暢な日本語でガイドを始めた。我々は首を縦に振りながら、彼女の話にうなずく。僕は思った。「もう、すつかりコントロールされてしまったぜ」と。未知の場所へ行くと、これも仕方がない。

ホテルへ行く前に、どこかの免税店へ寄るらしい。一泊しかしない人たちへの配慮なんだろう。バスは中央分離帯のない数車線の道を、ガンガン。ビュービューとばす。添乗員さんの話より、このスピードと、平気で車線変更するドライバーのテクニックの方が心配だった。いみじくも、添乗員さんが言った。「我が国は世界でも一番交通事故の多い国なんですよ。最近は規制が厳しくなったので、幾分かは事故も減りましたけどね・・・・」。この言葉に僕も、のび太君も「ぞーーーーーつ」として、背筋がふるえた。

ここまで来たら、ドライバーさんに命を預けるしかない。平気を装いながら隙間争奪合戦を繰り広げている外の車ばかりを眺めていた。30分程度走ったのだろうか?。とある町の一角にそびえるビルの前で車は停車した。「およよ・・・」。ほっとしたぜ。1時間ほど、買い物タイムと相成った。受付があり、どうやらここでは、割引券と何か小物の品が全員にプレゼントされるらしい。小物に弱い僕たちは、とりあえずビルの中を散策することにした。僕たちには縁のないブランドの店が、ずらりと並んでいる。気後れしながら、ウインドウショッピングを決め込んだ。

僕は一件の店を覗いてみた。「うひゃーーーー」と驚いた。バッグやら宝石類を見ると、○の数がやたらと多い。一、二、三、四、五、・・・と数えてみた。「この通貨単位は何だったっけ?。えーーーつ、円」。とてもとても、僕には縁がありませんぜーーー。のび太君と僕は這々の体で退散した。

ところで僕は思った。「あんなに高価なバッグや宝石類を、一体、誰が何のために身につけるんだろうか?」って。まあ、一般的には女性を高貴で気高く美しく見せるための道具なんだろう。女性達があこがれるのも理解できる。男から見ると「くだらない・・・」としか見えないのだが。美しくブランドで身を固めるのは理解できたとしても、肝心要のものが備わっていなければ、「猫に小判、豚に真珠」みたいなものだ。その肝心要の物とは。やはり「優しさ」の一言に尽きるだろう。

「あんたは自分を何様と思ってんの??・・・。あんたから、そんなこと言われたくないなーーー」。そんな声がした。ごもっともです。つい口が滑ってしまった。それでも、時々思い出す。僕と同い年の友人で、まだ独身の者がいる。彼の口癖はこうだ。「おいは、めっぽう気の優しか女性でなかとあかん。周りは物質欲と気の強か女性ばっかり」と。うんんんん・・。確かに・・・・。僕や友人達が何度か彼にお見合いを斡旋したが、ことごとく砕けた。よく、考えてみると、今時、「めっぽう優しい女性」なんて希少価値の存在だ。観音様ならどこにでも存在していらっしゃるが、そういう観音様だって中性だ」。いやはや、世の中は大きく変わりました。

話しが脱線してしまった。のび太君と僕は、指を口にくわえながら、他人様の消費行動に熱い視線を送るのでした。





2008年11月10日(月) 海から陸へ。(3)

船は揺れることもなく、定刻に岸壁に横付けされた。曲がりくねった通路の準備ができた。二階と一階から客がひしめきあいながら通路へ押し寄せた。僕たちも遅れをとるまいと列に食い込んだ。通路の横揺れで、一人のおばさんが床に倒れた。すかさず救助をと思ったが、既にたちあがり、「大丈夫、大丈夫」と言う。年配の人には、この横揺れは禁物だぜ。「おっと」僕も危ない。

やっと通路を抜けて、いよいよ入国だ。僕達は審査に臨んだ。パスポート、荷物、ゲートくぐりだ。順調に進んだかに見えたが、ゲートをくぐるとき、人はピンポンピンポンと音がする。どうもこれはオッケーらしい。僕の場合は何も音がしなかった。「おかしいなあーーー」と思って上を仰いだが、何の変化もなし。係員の女性が手招きして、「はい、両手を挙げて」という。素直に従うと、白魚のような手が、僕の両脇腹から足まで、さすった。くすぐったいぜ。何事もない。オッケーかと思ったら、「帽子を脱いで」と言われた。僕はすかさず、はげかかった頭を露出し、「にこっ」と笑うと、係員の女性も「にこっ」と笑い返してくれた。この「笑い返し」がどういう意味だったのか、定かには分からないが、自己流に解釈すると、「すてきですよ。何も問題ありません」ということか?。どうやら、のび太君も僕と同じ行程をを踏んだようだ。

「やれやれ」と思いながら、僕たちは歩みを進めた。なんと、トンネルをくぐると、そこは雪国ならぬパラダイスの出口だった。初めて見る風景。よく目をこらすと、黒ずくめの制服を着た女性達が半円周上に取り囲んでいる。手には旅行社の名前の書かれた、とりどりの旗を持っていた。

なるほど。出迎えか?。僕はこういうシチュエーションが嫌いである。小っ恥ずかしいのである。僕のプライドがそうさせるのか?。ところで、僕にプライドってあったっけ?。あり、あり、大いにあり。まさにプライドの固まりだぜ。今はそんなことを言っている場合ではない。

取りも直さず、「郷に入っては郷に従え」だ。僕とのび太君は、とある旅行社の旗の前に集合した。24名が仲間らしい。ところが、どうしたわけか?、一人の仲間が間違った旗のもとへ走ったらしい。僕たちはベンチに座って待つことになった。ハプニングだぜ。

僕とのび太君は、しびれを切らし、ベンチの後ろに設けられていたミニ喫茶室でコーヒーを飲みながら待つことにした。コーヒーが入り、代金も支払い、一口飲んだところで、添乗員さんが「はい出発します」と言う。僕たちはコーヒーを飲み干そうと思ったが、かなりの熱さで、それを放棄。テクテクと添乗員さんの後ろに従った。オー・マイ・ゴッド。

旅はまだ始まったばかりだが、出足は必ずしも好調ではない。まああ、終わりよければ すべて良しだ。




2008年11月09日(日) 天高く波静か。(2)

どのくらい眠ったのだろうか?。ふっと、時計に目をやると、まだ30分くらいしか経っていなかった。のび太君は、相変わらず首をうなだれたままだ。僕は海をしげしげと眺めた。広い。180度みわたしても、水平線ばかり。「太平洋ひとりぼっち」という本を思い出した。乗員が僕一人なら、まさにそんな感じだ。波間の波紋が、光の反射できらきらと輝いていた。美しい。

僕はふと考えた。この母なる海は一体どこから生じたのか?。何故、地球からこぼれ落ちないのか?。未だに分からない・・・・。もっと物理を勉強しとけば良かった。後悔先に立たずだ。恐らく、複雑な化学反応が海を生み、万有引力が海を引き寄せているのだろう。ならば、何故、化学反応が生じ、万有引力が存在するのか?。ここまで来ると、もうさっぱりだ。話しがあらぬ方向へと行ってしまった。そのときの僕はただただ、この母なる海に畏敬の念を抱くことで精一杯だった。

船内に荷車を引くような音が聞こえた。船内販売だ。飲み物にありつける。僕はのび太君の肩を揺すり、ホットコーヒーを注文した。のび太君は、何を勘違いしたか?、座席の前に立ちはだかる壁に取り付けられていた長方形のクッションみたいな物を手前に引いた。「バリバリ」っと、音がした。

売り子さんがすかさず制した。「あっつ、お客さん、それ違います。テーブルは座席の袖にあります。」と。確かに。座席の袖に小さなテーブルがしまい込んであった。それを引っ張り出すわけだ。しからば壁に取り付けてある長方形の物体は何だ?。恥ずかしくて聞けなかったが、恐らく、なにかの弾みで、船に衝撃が走ったとき、人様の危険を防止するための緩衝具なのだろう。それも無理矢理に剥ぎ取ろうとしたのだからいただけない。僕も最初、それを見たとき、のび太君と同じように考えたから同罪だ。

僕たちは照れ笑いをしながら、小さなテーブルをだして、コーヒーで頭を静めた。船は気持ちよく進んでいく。船内は満席。金融不安、株価下落というが、そんな雰囲気はみじんも感ぜられない。このギャップは何なのか?。まああ、人様の心の内なんて分かるすべもないが、それぞれに、思うことがあるに違いない。それはそれでよい。

コーヒーを飲みのみ、今後のスケジュールを話し合った。






2008年11月08日(土) 天高く波静か。(1)

久しぶりと言っていいのか?、何十年ぶりと言ったがいいのか?、船に乗った。船室に続く危うげな通路を手摺りにつかまりながら、我が座席へと急いだ。僕こと、ジャイアンと、弟のごとき、のび太君との旅がスタートしたのだ。

船に乗るまでのいきさつを少し書いておこう。僕たちは地元の駅を集合場所とし、電車とタクシーで船着き場まで行くことにした。早朝6時。めいめいの出で立ちで二人が登場。のび太君は、ハンチングキャップみたいなものをかぶり
、あたかも、クリケットをやっているイギリスの紳士風。ジャイアンたる僕はと言えば、笑うセールスマンタイプの帽子をかぶり、ジーパンにジャンパー。ちぐはぐもいいところだ。「旅の恥はかきすて」。誰も文句を言う者はいるまい。僕たちは顔を見合わせてにんまりと笑った。互いに自分のスタイルの方が「勝っているーー」と思っているかのように・・・・・。

のび太君がハンチングキャップを脱ぎながらいみじくも言った。「最近僕の頭の毛が薄くなってねえーーー」と。確かに・・・・。髪らしきものはあるが、地肌があちこち透けて見える。僕もハットを、「はっ」としながら取り、「同じ穴のむじなさ」と、風前の灯火となった髪を掻き上げ慰めあった。

小一時間僕たちは電車に揺られた。会話はたわいないことばかり。二人ともこれから展開するであろう、「恋の予感」ではなく、「旅への不安」が頭をよぎっていたのだろう。時はお構いなく僕たちを目的地へと誘う。

電車を降り、タクシーで船着き場へと向かった。15分程度で到着した。港には大小の貨物船や観光船が停泊していた。平日をねらっての旅か?、結構、港内は混雑していた。僕たちはとりあえず乗船券を求め、いくばくかの金を両替することにした。円高で儲かったと、人はみな思っているようだったが、「果たしてそうなんだろうか?」と僕にはいぶかしく思えた。両替の後、乗船にはまだ時間があったので、朝食を取ることにした。

こじんまりとした、食堂があり、僕たちはそこへ陣取った。定番の朝食を注文。飯、味噌汁、納豆、のり、卵、漬け物で一式。450円とはこれは安い。空きっ腹だったので、おいしく平らげた。さあああ、いよいよ乗船だ。ここから冒頭の文章となる。

僕たちは船の二階席を指定していた。見事良い席にあたった。何が良いかといえば、一番前列の席で、僕たちの前には壁しかない。要するに、他人の席が前にない。僕たちは靴を脱いで、その壁に短いがやっと届く足を投げ出して、突っ張り棒とすることが出来る。これが結構、足の緊張緩和にやくだつんだよなあーーーー。見た目には悪いが・・。これから数時間の船旅が始まる。僕たちは朝が早かったので、海を十分、見ることもなく眠りに落ちたようだ。

天高く波は静か。鼻提灯一つふくらませ。最高の旅日和だ。










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