Shigehisa Hashimoto の偏見日記
塵も積もれば・・・かな?それまでこれから


2002年11月10日(日) ”この人の声に酔いたい” Vol.9 塩沢兼人

概論
塩沢兼人(しおざわ・かねと)代表作:「戦国魔神ゴーショーグン」レオナルド・メディチ・ブンドル、「銀河旋風ブライガー」ブラスター・キッド(木戸丈太郎)、「究極超人あ〜る」R・田中一郎、他多数。浮世離れした声をお持ちの方である。クールと言うより耽美、軟派と言うより甘美、要するに超現実的なお声なのである。「ガンダム」のマ=クベあたりからぽつぽつ人気はあっただろうが、この人が完璧にキャラを確立したのは間違いなくブンドルであろう。ブンドルの登場によってアニメキャラ界には「耽美系美形男」という新たなるパターンが追加されることになった。しかも、それらブンドルの流れを汲むエピゴーネンのほとんどを塩沢さん自身が演じているのだから驚嘆ものである。とすると、この人は声そのものがジャンルの一派なのか。とは言っても決して演技の幅が狭いわけではない。その辺の詳細は「独断のプレビュー」に書く事にする。尚、大変残念なことだが2000年に亡くなられている。

独断のプレビュー
私はこの日記で幾度となく「塩沢ブンドル礼賛」を言い続けてきたが、何もブンドルだけが塩沢さんの代表作ではない。よく考えてみると、私は塩沢=ブンドルをあまりに口やかましく言い過ぎてしまって、結果的に塩沢さんの評価を矮小化させてしまっているのではないだろうか、という疑念が沸いてきた。塩沢さんの演技の本質が最終的にはブンドルに帰結してゆくのは正しいとしても、それを強く主張して塩沢さんに固定イメージをつけてしまっていたのなら、塩沢さんに対して失礼極まりない。この場でお詫びするとともに、ブンドル以外の塩沢さんについても分かる限り触れてみたいと思う。

私がはじめて塩沢さんの声を意識したのは「はーい!アッコでーす」である。この作品、結構長いこと放送していたと思うのだが意外と知名度が低い。何でだろ?まあ、それはおいて置くとして、塩沢さんが演じていたのは主人公であるアッコの夫・ジュンちゃんである。すっごい爽やかな声で、後年私が知ることになる塩沢さんのメイン・イメージとはかなりかけ離れている。放送終了から10年以上経つと思うのだが、私は未だに塩沢さんの「おーい、アッコ!」というセリフが耳に焼きついてはなれない。

「ガンダム」のマ・クベは気持ちの悪いキャラクターであった。狡猾でぬるっとした嫌らしさを持ち、悪と言っても単純悪というよりは物語の構成上、必要悪に廻ってしまった男、といった感じ。非常に視聴者に気持ち悪かったが、それを計算して演じていたはずなので塩沢さんとしても本望であろう。

「宇宙戦士バルディオス」では主人公のマリン・レイガンを演じていた。おそらく初めて主役を張った作品だと思われる。マリンは他星系(と最初は思われていた)から地球にやってきて、同郷人と地球人の間で様々に葛藤する青年であるが、塩沢さんはこのマリンをまさしく熱演!”自らの境遇に苦悩しながらも、基本的には実直で情熱的な青年”としての人情の機敏を的確に捉えていたと思う。

「銀河旋風ブライガー」を始めとするJ9シリーズでも全て主役を担当。私はキッドしかしらないのだが、このキッドは塩沢さんの役にしては珍しく陽性度がかなり高い。だが、こちらの方も寸分のすきもない見事な名演技!「イェ〜イ」などという軽い演技も塩沢さんはできるのだ。

「奇面組」では物星大。出ました!変体オカマ男(笑)。濃い、濃すぎる!でも面白いからいい。しかしようこんな番組やったもんだよ。他のCVも千葉繁とか玄田徹章とか濃い人ばっかり。主題歌はおにゃん子だし。分けのわからない世界だなあ。
「未来警察ウラシマン」ではもろにブンドルライクなキャラクター・ルードリッヒを演じていた。「悪の美学」とか、極めて真面目なんだけど、どっかずれているところが面白かった。

近年の代表作は「クレヨンしんちゃん」のぶりぶりざえもんだろうか。塩沢さん独特の声を逆手にとって下簸たキャラクターとのミスマッチを意図したのだろう。狙う方向としては山本正之が美形キャラを担当して何とも言えぬ脱力感を出したのとちょうど逆ベクトルである。確かに、あの顔にあの声では脱力してしまう。

上であれこれ理屈を捏ねていたけどやっぱりイメージが絶大なのがブンドルであるのはまごうことなき事実である。これは掛け値なしに塩沢さんの個性と役の個性が一致してしまった奇特な例である。「美しい・・・」という一言だけで声優とアニメの中の肖像画との垣根は取り払われ、キャラクターが一人の人間として動き出す。「ゴーショーグン」は登場キャラクター全員が魅力的であったが、そのなかでも一番キャラが立っていたのは間違いなくブンドルなのである。おそらく塩沢さんがこの役を担当していなかったらブンドルの魅力は本来の半分にも満たなかっただろう。このハマリ具合は尋常なものではない。空前であり、絶後である、といっても良いかもしれない。

そんな塩沢さんのライブな声を聞けなくなって久しい。これぼど強烈な個性をもちつつも、様々な役柄をこなした人は多分いないだろう。46歳での物故はいくらなんでも早すぎる。もっともっとその声を聞かせて欲しかった。悔しい。


2002年11月09日(土) ”この人の声に酔いたい” Vol.8 藤田淑子

概論
藤田淑子(ふじた・としこ)代表作:「一休さん」一休、「キャッツ・アイ」来生泪、「キテレツ大百科」キテレツ(木手英一)、などなど。この人も少年から美女まで演じちゃう人だが、どの役柄にも共通しているのは”知性がある”ということだ。一休さんやキテレツは「頭の良い少年が主人公」という珍しいアニメであったのだがそのどちらにでも主役を張っているのだから彼女がいかにインテリジェンスの素養を携えているかは推して知るべしだ。さらに「キャッツ・アイ」でみせた大人の色香溢れる演技の凄みは絶品。洋画でもゴルディ・ホーンの吹き替えで有名である。

独断のプレビュー
あてた作品総数はそんなに多くないけれど、圧倒的に印象に残る声で世代を越えた認知度を誇るのが藤田さんである。20代後半より上の人は一休さん、20代前半からハイティーンの人はキテレツ、ローティーンの人は「地獄先生ぬ〜べ〜」、もっと小さい子なら「デジモン」・・・とこんな感じで結構きれいに住み分けされてるんじゃないだろうか。で、私はというと、やっぱり一休さん。これで決まり!(わしゃ21歳だが・・・)賢くて、優しくて、少々の茶目っ気も持ち、しかもちょっぴりの甘えも同居している彼のメンタリティーを極めて的確に表現している。EDも藤田さんが歌われているが甘ったるい歌声がとっても魅力的だった。少し話が脱線するが、一休さんの声優陣てチームワークが抜群だと思う。藤田さんを中心に、某超強力ロボットの兄弟機が活躍するアニメの「サンダーブレイク!」でおなじみの野田さんや某海産物名称夫人アニメの「ちゃーん」でおなじみの桂さんがいる。そして某七つ集めると龍の神様が出てくるアニメの「パフパフ」でおなじみの宮内さん、某ノスタルジー+エッセイ風アニメの「後半へ続く」でおなじみの山田さんもいる。某眼鏡をかけた怪力少女アニメの「んちゃ!」でおなじみの小山さんは早々に退場してしまったが、その後は某80年代風ちょこっとスケベアニメの「まいっチング」で有名な吉田さんに引き継がれ、某伊賀の山奥からやってきた覆面忍者アニメの「ちくわ食べたい」でおなじみの緒方さんと絶妙なコンビぶりを発揮している。某牛丼好きな主人公が活躍するプロレスアニメの「アデランスの・・・」でおなじみのはせさんもいるし、ナレーションは某世界的大泥棒の三代目が活躍するアニメの「ルパ〜ン」でおなじみの増山さんだ。もう言うことなしって感じ。(キミは何人分かったかな?)みんな個性が強いけど、決してバランスを崩すことはなく、作品をより一層盛り上げていたと思う。

「キテレツ」は一休さんより心持ち年齢を上げた感じだったけど、賢そうな声色は全く変わらず。ほんと、聞いてて「頭良さそうだなあ」と自然に思わせる力量は凄い。やはりもって生まれたものが違うのだろう。バカな人にはこんな声は出せない。存在としては稀有の極致である。


そんな藤田さんが「キャッツアイ」では超美人3姉妹の長姉役で出てくるのだからたまらない。なんという知性、なんという色気。時として相反するこの二つの特徴が重なり合わさうことによって言いも知れぬ「艶」がそこにうまれる。いやはや、全く持って脱帽。

「新・ビックリマン」では主人公・ピアマルコを演じていた。今まで藤田さんが演じたキャラとは異なり、割合快活なキャラクターであった。「がんばれ元気」では名前の通り元気のいい少年を演じていた。そうそう、アメリカ発スラップスティックの傑作アニメ「トムとジェリー」ではジェリーを演じていたことも忘れられない。あとはパタリロとか「ダイの大冒険」なども有名。ホント、息の長い活躍。
今年公開された「ドラえもん のび太のロボット王国」でも客演されたそうで、まだまだ藤田さんの艶やかな声は健在のようだ。


2002年11月08日(金) ”この人の声に酔いたい” Vol.7 鈴置洋孝

概論
鈴置洋孝(すずおき・ひろたか)代表作:「無敵鋼人ダイターン3」破嵐万丈、「機動戦士ガンダムシリーズ」ブライト・ノア、「戦国魔神ゴーショーグン」北条真吾、他多数。現在、ダンディ・ボイスの第一人者といったら彼であろう。低めの甘い声を緩急自在に操ることでクールでストイックな役とキザでナンパな役の両方を演じることができる。前者の代表がブライト艦長であり、後者には破嵐万丈が挙げられる(ただし万丈についてはその胸に秘めた熱き激情までしっかり表現している)。近年は洋画の吹き替えでも大活躍。

独断のプレビュー
だぁ〜はっはっは、とうとうこの人を取り上げる日がきたぜ!何を隠そう、美形キャラ男声優の中で私が恣意的に一番好きなのが鈴置さんなのである。とにかくカッコいい。声質そのものも、演技も。「男」として、すっごい魅力があると思うんですよ。ああ、何から書こうかな、はやる気持ちを抑えつつ順に追っていってみよう。

まずは鈴置さんの初主演作「ダイターン3」から。もうね、私はこの作品一本に鈴置さんの魅力の全てが詰まっていると思うのね。いや、今一度考えてみて「全て」と言い切ってしまうのは語弊があるかもしれないから(鈴置さんの作品全部を見ているわけじゃないし)、8割くらいということにしておこう。主人公の万丈は普段は軽妙で、洒落ていて いかにも軟派って感じなんだけど、ことメガノイドに関わる時は熱い、アツイ。ちょっと狂気が入っているんじゃないかと思うくらい気性が激しいんです。それに、父親を憎む姿とか亡き母を思うときの弱さなんかを見ていると、これは単なる正義漢じゃないんだなって感じがします。スーパーヒーローの強さと、優しさと、そしてヒーローだからこその脆さが滲んで見えて、これはもう一人の立派な人間として成立してるんだよね。「生々しい人間を描く」ってのは本作品の監督・富野氏の十八番なんだけど、そういう話を作るには多面的なキャラクターを捻り出さなきゃいけないわけで、かかる人物を演じるのは役者としては大変難しいことだと思う。しかし鈴置さんはこの要請に見事に応えた。それどころか、彼の熱演は「万丈」という男をより一層の魅力に溢れたキャラクターに仕立て上げちゃった。これは本当に稀有な例だと思います。塩沢さんのブンドルとか、八奈見さんのボヤッキーとか、小山さんのアラレちゃんと同じぐらい、奇跡的な廻り合わせ。この役を演じられるのはこの人しかいない!という絶対感。滅多にないですね、こういうことは。

「ダイターン」の次は「ガンダム」。この流れはスムーズでしたね。なにしろ後番組ですから。富野さんも鈴置さんの声が気に入ったということでしょうか。でも、ガンダム見ていて鈴置さんを強く意識するということはなかったなあ。これは役柄のせいもあるんですけど、多分に感じるのは自分の居場所をちゃんと作っているなということです。役者の演技って独り善がりではダメなんですよね。「俺はいい演技をした、だから後は知らん」じゃ困るわけです。全体を見渡して、自分はどういう役なのか、でしゃばっていけば良いのか悪いのか、的確に読み取らなきゃいけない。要するに音楽で言うところのアンサンブルの調和に目を配ることが必要なんです。評価の高い作品は役者のアンサンブルが絶妙なのです。そうやって考えてみると、ブライトは言葉が悪いかもしれないけど他のキャラクターの引き立て役だったと思うんです。それは決して目立たないということではなく、ブライトに透かして見ることで他のキャラクターの魅力が増してくる、ブライトと絡ませて初めてWBの連中が生きてくる―つまりクリスタルみたいなものだとおもうんです。これは大事な役ですよ。ひょっとしたら主人公よりも重要かもしれない。この作品は強烈な個性をもったキャラクターが沢山出てきますけど、振り返ってみると表向きの主役はアムロで、真の主役はシャアで、影の主役はブライトだったんだなあとしみじみ感じ入っています。

「逆転!イッパツマン」のナレーターも良かった。富山さんとは違った魅力があった。考えてみるとこの手の声はナレーションに向いていない気もするんです。本来は。でも、前にも少し書きましたけど、ナレーションがナレーション以上の脚光を浴びるのはナレーターの個性が作品とがっちり合わさってもう一歩上の段階にステップする時だと思うんです。そんな境地に達するにはナレ−ションの中に”何か”が加わってなければならない。だから、鈴置さんはその何かを持っていたということになりますね。素晴らしいです。

時代はぐっと下って、今度は「DRAGON BALL」の天津飯となります。これ、多分私が初めて鈴置さんの名前を意識した作品です。「DRAGON BALL」は声優が無茶苦茶豪華ですよね。大御所・ベテランから脂の乗り切った中堅まで新旧織り交ぜて見事でした。今じゃあんなキャストは到底期待出来ませんね。物故された方もいらっしゃるし。
閑話休題。天津飯はクール&ストイックの王道を行くキャラで、まさに鈴置さんにうってつけでした。悪になりきれない悪で、至極不器用な生き様が本当にシブかった。しかしあの声で「排球拳、いっくわよ〜!!」「はぁ〜い!!!」とか言われたらぶったまげますね。あまりにも落差が激しすぎる・・・私は大笑いしていましたけど(こういうところにトリさんのセンスを感じます)。

「ゴーショーグン」の真吾は典型的な熱血キャラでしたけど、決して紋切り型に収まろうとしなかったのが良かったです(『典型的』なのに『紋切り型ではない』というのは矛盾しておりますが)。他の登場人物同様凄く洒落ていました。「聖闘士星矢」の柴龍は天津飯よりももっと無骨なストイックさが抜群でした。「キャプテン翼」の日向も小学生とは思えないほどシブイキャラでした。「マクロス」のリン・カイフンは嫌な奴でしたね。鈴置さんはイヤミキャラも上手いんですよ。この間観に行った映画「千年女優」でもそれ系の役をやっていたけどすっごい決まっていました。結局、名優ってのは何をやらせても上手いってことでしょうね。

洋画ではトム・クルーズやメル・ギブソンの吹き替えが有名でしょうか。やっぱりカッコいい人が似合うよね。でも、洋画でもちょっと崩れた感じの男を演じる鈴置さんも見てみたい気もする。この系統はあんまり演ってないんだよね。絶対上手く行くと思うんだけどなあ。関係者の方々、もしこれを読んでいたら(誰も読んでいないが)ひとつ宜しくたのんます。

とにかく魅力いっぱいの鈴置さん。これからの活躍にも大いに期待しています(と言っても最近のアニメは見ないけど)。どういうわけか今回の文章が口語文法・ですます調になったことに疑問を感じつつ、次回へとひつこく続きます。


2002年11月07日(木) ”この人の声に酔いたい” Vol.6 戸田恵子

概論
戸田恵子(とだ・けいこ)代表作:「キャッツアイ」来生瞳、「ゲゲゲの鬼太郎(第三作)」鬼太郎、「それゆけ!アンパンマン」アンパンマン、などなど。向こうっ気の強い少年から質実剛健な職業婦人までこなす人である。もともとはNHK名古屋製作のドラマ「中学生日記」に役者人生の端緒を発しており、その後歌手時代を経て声優業に定着、「機動戦士 ガンダム」のマチルダ役で一躍有名になる。さらに別途作品でレギュラー出演を重ね、「キャッツアイ」ではじめて主役の座を務める。続いて「ゲゲゲの鬼太郎」「アンパンマン」などの作品でも主演し、洋画の吹き替えでも存分に活躍。そして近年では演出家・三谷幸喜にその資質を見出され女優としても開眼、名バイプレーヤーとして確固たる地位を確立したのは衆目の知るところである。

独断のプレビュー
なんか概論が半生記みたいになってしまった。私、この人についてはまず、その「生き様」に感服しちゃうんだよなあ。16歳で上京して、親からなんも援助を受けないで働きながら高校行って、さらに歌手になるためのトレーニング学校にも通ってたというのだから驚いちゃう。残念ながら歌手としては大成できなかったようだけど(でも歌は無茶苦茶上手い)、声優界で長い長い下積みを経て、今や女優として大ブレイクだもんなぁ。別に声優が下で女優が上とか言いたいわけじゃないけど、サクセスストーリーとしては完璧だと思うんだよね。雛型と言うべきか・・・でもでも、三谷がこの人をドラマ界に引っ張ってっちゃったことには多少恨めしく思ってるんですよ。だって戸田さんの声の仕事が減っちゃったんだもん。まあ実力があるんだからいいけどさ・・・美味い肉もないところにハイエナはたからないだろうし。

少年声の代表作は一般的にはアンパンマンが有名だが、私の中では完全にゲゲゲの鬼太郎である。初代や二代目鬼太郎のファンには戸田・鬼太郎に不満な人も多かったみたいだが私は逆に野沢・鬼太郎に違和感を感じてしまう。まことに世代間の溝はかくも深きものなのか・・・とまれ、戸田さんの鬼太郎は演出の意図もあっただろうが素朴な野沢・鬼太郎と違ってとにかくカッコよく、ヒーロー色の強いキャラクターだった。幼い私はそこらへんに滅法しびれた。戸田さんのハキハキした喋り方が実に決まっていたんだよな。

「キャッツアイ」の瞳は色っぽかった。何と言うか、「余裕」を感じさせる声、大人の余裕といった趣き。でも、おきゃんな性質もまだ残っていて要するに”セクシー系等身大女性”(なんのこっちゃ)。あの声で「としぃ〜」と甘えるんだから俊夫もたまったもんじゃないだろうな。雰囲気抜群、魅力たっぷりのキャラクターだった。

「ガンダム」のマチルダも有名だけど、正直再放送で初めて彼女の演技を聞いたときには「下手だなあ」と思ってしまった。抑揚に乏しくって、まだアフレコに慣れていないって感じがありありと伝わってくる。でも劇場版「ガンダム」の時には見違える(聞き違える)程上手くなっていた。僅か一年ちょっとの間にこんなにも上達するんだからやっぱり素質は抜群なんだろうなあ。そしてさらに一年後に封切された映画「宇宙戦士バルディオス」ではヒロイン(と言って良いのか分からんが)・アフロディアを演じている。これがまた上手かったから戸田さんの演技が着実に進歩している証拠の裏づけになっているといっていいだろう。アフロディアは烈火の如きキャラクターで相当苛烈な性格なんだけど、戸田さんの気の強そうな声がきっちりハマって出色のキャラクターになっている。この作品もTV版があり(ちょっと注釈しておくと、この時期のアニメ作品はTV版で人気を得たり、未消化な部分があると映画を製作して諸々の決着をつける、というパターンが多かったのだ)劇場版とはほんどキャストが入れ替わっている。アフロディアはTV版では神保なおみさんが担当しているが映画から入った私にとっちゃ、アフロディアと言えば戸田さんです(神保さんごめん)。

洋画の吹き替えも多いよねえ。主人公の男と激しくディスカッションしながら難題を解決する、「デキル女」系はかなりこの人がこなしてるんじゃないの?(洋画の方には暗いんでイマイチ分からないけど)有名なのは「X−ファイル」のスカリーかな。戸田さんのスカリー、カッコよかったよねぇ。やっぱり、戸田さんの個性は”気の強さ”に収斂されていくのかな。

最初に書いたように、最近ではもっぱらドラマでの活躍が多い戸田さん。声のファンとしてはアニメにももっとバンバン出て欲しいのが実情である(なかなか折り合いが難しいだろうけどサ)。でも、個人的に応援している人なのでこれからも自分の道を突き進んで欲しいと思っている。


2002年11月06日(水) ”この人の声に酔いたい” Vol.5 八奈見乗児

概論
八奈見乗児(やなみ・じょうじ)代表作:「巨人の星」伴宙太、「タイムボカンシリーズ」グロッキー他、「DRAGON BALLシリーズ」ナレーションなど、他多数。その紳士的な素顔からは考えられないがギャグ系キャラクターを演じさせたら日本一!の方である。そのお笑い的素養は恐ろしいほど高く、アドリブも絶妙なるタイミングで出てくる。神品と言っても過言ではないだろう。かと思えば、もう一方で「マジンガーZ」の弓教授に代表されるようなリベラルな役もこなしてしまう御人なのである。

独断のプレビュー
おお、やっと第5回の作成に取り掛かれる・・・思えばここ数日、風邪・歯科矯正・薄毛(もう半分アキラメとる)・その他身辺のくだらない問題に振り回されてパソコンそのものすらろくすっぽ開けない体たらく。メッチャしんどかったのでアリマス。本当はこの間観てきた「たそがれ清兵衛」の感想も書きたいけど、一旦乗っちゃった船、今月はアニメネタで・・・と決めたんだから最後までトコトン行っちゃいます。おっと、そんなことはどうでもいい。八奈見さんの話、八奈見さんの話・・・

誰がなんと言おうがタイムボカン!だよね〜。グロッキー、ボヤッキー、トボッケー、セコビッチ、コケマツ、コスイネン、ダサイネンとシリーズ全てに登場し事実上の主役を見事に張った。タイムボカンの真のヒーローは三悪なのは言わずもがなだがその中でも核となるのは上記の八奈見キャラであると思う。それは総監督笹川ひろし氏が自身のキャラクターを彼らに投影していたことなどからよくわかる。ホント、八奈見さん抜きのタイムボカンなんて見たくない!と言うか自主的に見ないね、私なら。ハマリ役という点では渥美清の寅さんみたいなものだもん。渥美清以外が演じる寅さんなんて、誰も見たくないでしょ?「ポチっとな」なんて八奈見さんが担当していなきゃ絶対生まれなかったセリフだと思うよ。

「DRAGON BALL」のナレーションも絶対はずせん。なによあの仰々しさたっぷりのしゃべりっぷりは!愉快、痛快、奇々怪々。本作品の世界観の確立に多大なる貢献を与えたのであります。このシリーズって、途中からストーリーが間延びして見るのが非常につらかったのだが「前回までのあらすじ」で八奈見さんのナレーションが頑張っているのでついつい目を向けちゃうんだよな。セッカチ上り凧の私がこのアニメに対して堪忍袋の尾を切らさずに済んだのはナレーションのおかげだもんな。

そして私の大好きな「ゲゲゲの鬼太郎(第3作)」では一反木綿を演じていた。これがまた味があってよかった。ピンチになると「鬼太郎〜!」とどこからともなく現れる。ガラガラ声の博多弁が見事に決まっていたなあ。

ちょっと印象が違うところでは「チンプイ」のワンダユウなんかが挙げられる。一応他星(名前をど忘れしてもうた)から来た犬の侍従で、つまるところカタイキャラなんだけど、八奈見さんの声によってジェントルマンともギャグキャラクターとも取れる味わい深いキャラクターになった。誠にスンバらしいのでござるよ。

あれ?私が知っている八奈見さんのキャラクターってこれで全部かなあ・・・?意外と少ないな、フム。でも、逆に言えば作品数が少ないのにこんなにも印象に残る八奈見さんって凄いよな。あの存在感の素晴らしさね。今の声優であれほどの個性を出せる人っていないでしょ?そんなおサムイ現状を踏まえると、この人は現人神って呼ぶべきかもしれんよ。いや冗談でなく。それほど素晴らしいのサ!


2002年11月05日(火) ”この人の声に酔いたい” Vol.4 杉山佳寿子

概論
杉山佳寿子(すぎやま・かずこ)代表作:「アルプスの少女ハイジ」ハイジ、「科学忍者隊ガッチャマン」白鳥のジュン、「魔法のマコちゃん」マコ、他多数。アニメ創世期から活躍されている方。少女、美女、キャラものとこれまた幅広く活躍されている。美しい声というタイプではないが風邪をひいたかのようなダミ声が妙に艶っぽかったりする。つかせのりこ亡き後の「つるピカハゲ丸くん」を演ったり、小山茉美降板後のコロ助を受け持ったりして声の汎用性も意外に高いことが証明されている。

独断のプレビュー
風邪のせいで高熱が長々と出ちまって、更新が大幅に遅れてしまった。学際休みで時間もあるからバンバン書きまくろうと思ってたのになんとも無念(誰も気にしていないと思うけど)。それはさておくとして。

杉山さんと言えばハイジの可愛い声が文句なしに有名であろう。何年か置きに必ず再放送されるからこれはもうどの世代でも通用する。元気で、溌剌として、一生懸命なハイジにぴったりな声だった。なんというか、底抜けの明るさがあったよなあ。そんで素直なんだよね。笑うときは笑う、泣くときは泣く。杉山さんの声、本当に良かった。

もう一方では白鳥のジュンや「サイボーグ009」のフランソワーズ・アルヌール(003)などの正統派ヒロイン役も見事である。「ガッチャマン」は流し見程度でしか見たことはないが、冒険活劇アニメにとかくありがちな女性キャラを”添え物”とか”紅一点”的な位置に収めようとする傾向から脱却しているから流石である。杉山さんのキャラクターには確かな存在感がある。

また、杉山さんの特徴のひとつとしてキャラもの(非人間系キャラクター)に強いということが挙げられる。
「GU-GUガンモ」のガンモなんか強烈だったなあ。作品自体はあんまり好きじゃないんだけど(失礼)、杉山さんのガラガラ声が耳に残ったものだ。また同系等として「うる星やつら」では関西弁を喋るテンという役をやっていたはず。これも杉山さんにはもってこいの役柄なのだろう。そしてコロ助(2代目)もこのカテゴリーに入る。前述のように小山さんの後を引き継いだ形だが、8年間のTVシリーズのうち小山さんが担当したのは2年で、杉山さんが6年だから普通の人に「コロ助の声優さんは?」と聞けば大抵杉山さんの方を指すだろう。実際コロ助上手かったしなあ。オリジナルの雰囲気を残しつつも、大局では自分の声で勝負していた印象がある。小山さんのコロ助とは違った魅力があったと思う。

でも、杉山さんが演じた役の中で個人的に一番好きだったのは「Dr.スランプ アラレちゃん」の木緑あかねだったりする。なんかあかねって杉山さんの地がそのまま出ているんじゃないかって気がするんだよね(勝手な憶測だけど)。杉山さんが担当した結果、単なる不良とは違う、茶目っ気たっぷりのヤンキーに仕上がっている。鼻掛かった声で「なんだあ?」って言ったりして実にノリノリ。キマっていたなあ。また、「Dr.スランプ」では他に皿田きのこ役も兼任していた。こちらは杉山さんの十八番、可愛さ炸裂のキャラだった。

他にも色々あるぞ!「SF西遊記 スタージンガー」のオーロラ姫、「マグネロボ ガ・キーン」の花月舞、「はいからさんが通る」の藤枝蘭丸、「魔境伝説アクロバンチ」の蘭堂レイカ、「マジカル タルルートくん」の伊知川累(これ、もろにあかねの系譜ですな)etc・・・そういえば一度きりの特番で放送された「若草物語」では主人公のジョーをやっていたなあ。勝気な感じがよくあっていた。この作品もキャストが豪華なんだよね。長女・メグが増山江威子さんで、次女・ジョーがさっきも言ったように杉山佳寿子さん。んでもって三女・べスが麻上洋子さんで末娘・エミーが小山茉美さん。そして彼女ら4人のお母さんが池田昌子さんときた日にゃあ、誰が誰でもチャンネルあわすっていうもんですよ。映画スターに例えれば原節子・高峰秀子・司葉子・吉永小百合の四姉妹に田中絹代のお母さんが出てくるようなものだもん(ちょっとわかりづらいだろうか?)。今じゃあ到底考えられんキャストだなぁ。溜息出ちゃいます。

最近どういった活躍をされているのか不勉強で知らないが、杉山さんは間違いなくアニメ界の屋台骨を支えた名声優の一人。その輝きはいつまでも消えることはない。


2002年11月04日(月) ”この人の声に酔いたい” Vol.3 神谷明

概論
神谷明(かみや・あきら)代表作:「ゲッターロボ」流竜馬、「勇者ライディーン」ひびき洸、「キン肉マン」キン肉スグル、他多数。
古今東西、あまたいる声優の中でヒーロー声などという極めて抽象的なカテゴリーがあるのかどうか知らないが、もしあると仮定したのなららその声の持ち主として称えられるに一番相応しいのは神谷明だろう。竜馬や洸、あるいは「大空魔竜ガイキング」のツワブキ・サンシローなどの正統派ヒーローは勿論のこと、「キン肉マン」や「シティ・ハンター」冴羽リョウ(漢字が出ない)といった二枚目半から三枚目まで見事に「ヒーロー」足りえているから流石である。あるいは上記2作品に「北斗の拳」のケンシロウを加えて「週刊少年ジャンプ声」などとも呼ばれる。どちらにしても「ヒーロー」とは切っても切れない関係にあるのが神谷明なのである。

独断のプレビュー
私にとって神谷さんと言えばまずはキン肉マンである。時期的に直撃世代ではないのだが、5つ上の従兄弟が大好きだった(後にキン肉マンの消しゴム、通称”キン消し”を何百個も貰った)のも手伝って熱心に見ていた。TVシリーズ分断後の「キン肉星王位争奪戦」までちゃんと見届けたりもした。このキン肉マンの声はそれまでの神谷さんの持ち味である「高く澄んだ声」とはかけ離れたガラガラ声だったわけで往年の神谷ファンはそれを嫌ったようであったが、ここから神谷さんを知った私には無論何の違和感もなかった。後発参加者はこういうところで得をする。でも3枚目とは言え必殺技を繰り出す時の声はとても格好良かったと思う。「キン肉・ドライバー!」とかね。神谷さんも従来のイメージを破って新境地を確立した訳だしこの起用は正解だったと思う。

次は「シティ・ハンター」である。この作品で演じた冴羽は正統派2枚目とキン肉マンを足して2で割ったようなキャラクターであり、まさに神谷さんの本領発揮といったところ。普段は「ヌフフフフフ!」とか言っているのに決める時はきっちり決める。今までの神谷氏の集大成的キャラと言えるのかもしれない。

「未来警察ウラシマン」のクロードも良かった。カッコいいんだけど、ギャグっぽい性格で神谷さんのキャラクターの崩し方が完璧だった。「うる星やつら」の面堂終太郎もこの系統だと思われる(私は見てないのであまり知らないのだが)。あるいは「帰ってきたDr.スランプ」のDr.マシリト、なんてのもあった。野沢那智さんのマシリトと違ってカッコよすぎる気もしたが。

「スーパーロボット大戦」をやり始めてからは神谷さんの声に触れる機会がぐんと増えた。東映系のSFアニメはほとんど彼の独壇場なのである。先述の作品群に加え「闘将ダイモス」「惑星ロボ ダンガードA」では主役を務め、「宇宙海賊キャプテンハーロック」や「宇宙戦艦ヤマト」といった松本零士作品もレギュラー出演している。「ゲッタァァァァ・ビィィィィム!」や「ゴォッドバァァァァド・チェェェェェェンジ!」の高音で響く声の美しさ。これは人気が出るわけだと思った。反則レベルと言っていいほど澄んだ声である。

洋画方面では何をやっているか。なんと「007」のブロスナンなのである。海の向こうでも典型的なヒーローを演じているわけで、やっぱり神谷さんは根っからの”ヒーロー”なんだなあとしみじみ思った。

声優の理想的な姿を追い求め続ける神谷さん。これからも活躍を期待したいところである。


2002年11月03日(日) ”この人の声に酔いたい” Vol.2 小山茉美

概論
小山茉美(こやま・まみ、昔は『小山まみ』という名前であった)代表作:「Dr.スランプ アラレちゃん」則巻アラレ、「魔法のプリンセス ミンキーモモ(第1作)」ミンキーモモ、「戦国魔神ゴーショーグン」レミー島田、他多数。おそらくアイドル声優の先駆けだと思われる。好むと好まざるとに関わらず、後の声優ブームの礎を築いた(声優としてレコードを出したり、ラジオのDJを務めたり、エッセイを出版したりした)感が否めないが、この人の力量なら誰も文句をつけないだろう。まだこの頃は人気に実力が伴っていた幸せな時代であった。
彼女の魅力は単純に声質が良いのもさることながら、どんな役でも嘘のように見事にこなし、なおかつそれぞれの役を全て素晴らしく演じられることが第一にあげられるべきであろう。アラレちゃんのパワフルボイス、モモの少女声、レミー島田や18才モモのお姉さん的ざっくばらんな大人の女性、キシリアや蕗子のような冷徹非情な女、果てはニルスのような少年すら演じることが出来る。キティやコロ助といったキャラクターも抜群。どれも素晴らしいほど完璧に演じている。まさに七色の美声の持ち主である。洋画や海外ドラマにも多数出演しており、古くは「チャーリーズ・エンジェル」やナターシャ・キンスキー、近年ではシャロン・ストーンの吹き替えが有名である。

独断のプレビュー
個人的に一際思い入れの深い人。相当長い文章になると思うので、最初に注意しておく。
小山さんと言えば何はさておきアラレちゃんである。30%超の視聴率を維持した国民的人気アニメのヒロイン・アラレを唯一無二の声で演じきった。あのバイタリティー溢れる声は何に起因しているのか、ちょっと素人では考えが及ばない。「クレヨンしんちゃん」の声マネをできる人はいてもアラレちゃんのマネをできる人は皆無であろう。原作でもパワーの塊であったアラレだが小山さんの声を得て、よりエネルギッシュに、よりパワフルにブラウン管を駆け回ることになる。

リメイク版の「ドクタースランプ」で声優が変わると聞いた時、一体どうなるのか戦々恐々の思いで第一回を見たのだが現れたアラレが単なる幼稚園児のような声でガックリきてしまった。キャスティング担当者は単にアラレが小さい子(それでも13歳のはずだが・・・)という理由だけであの声を選んだのだろうか。溢れ出るアラレのパワーが全く表現できていない。やっぱりアラレちゃんは元気がなきゃね。新アラレが大人しい作品に収まってしまったのはここら辺にも要因があるのだ。

話が少し脱線してしまったが、私は小山さんのアラレちゃんが小さい頃より大好きであった。私が物心ついたときから「Dr.スランプ」は当たり前のように放送されていて、我が家でも当たり前のように見ていたのだがそんな中においてもアラレちゃんの声はとても心に残るものだった。ただし、声優・小山茉美を意識することはなかった。勿論小さかったこともあるのだが、小山さんの場合作品によって声がガラリと変わってしまうので他の作品に小山さんが出ていても「あ、アラレちゃんの声の人だ!」と認識することができなかったからである。

はっきりと小山さんの名前を憶えたのは五年程前のこと。ゲーム「スーパーロボット大戦」に出てくるロボット・ゴーショーグンが気に入ったので原作アニメのほうも見てみようと思い立ったのである。「ゴーショーグン」の面白さはアニメ思い出館の第一回に書いた通り。レミー島田もとても魅力的な女性であった。たおやかな美貌を持ちながらも決して男に媚びたりしない。あけすけとして物怖じしない、本物の大人の女性である。また、その声がとても美しく麗しくて、これをきっかけに私は小山さんのファンになってしまった。それで、他にどんな作品に出ているのか調べてみたのだが、それによって恐ろしいことに気づかされることになる。「え?アラレちゃんと同じ声の人!?」
驚きはこれだけでは収まらなかった。さらに調べていくうちに私は意外と小山さんが出ていた作品を見ていたことがわかった。記憶のうちから古い順にたどってみよう。

まずは「DRAGON BALL」のランチさん。知っての通り彼女は二重人格で、声も大人しい時と凶暴な時とでは全然違うから私はてっきり別々の声優さんが担当しているのかと思っていた。だが、現実には二つとも小山さんが担当していた。それを知った時は私はただただ感心してしまったが、今思えば七色の声を持つ小山さんにとってはこの程度はお茶の子さいさいであり、まさに面目躍如だったのであろう。

次に「あんみつ姫」。私はあんみつ姫が大好きであった。保育園のころ使っていた茶碗が何を隠そうあんみつ姫のプリント入りなのである。とっても可愛らしい声であった。「あまから城あっぱれ音頭」なんかよく歌ったものだ。

「キテレツ大百科」のコロ助も小山さんであった。これも出色の出来。人間じゃないからキャラクターの作り方も難しかっただろうが、独特の抑揚のつけた喋り方で見事に個性を確立してしまった。途中で杉山佳寿子さんに交代してしまったが今年の正月特番でドラマとして復活した際にはまた小山氏に戻っていた。

少し行数を取りすぎたので残りは駆け足気味に紹介しよう。
「おにいさまへ・・・」の宮様は強烈だった。普段は感情を表に出したりはしないが内にはエゴイズムの激情が渦巻いていてその心理のひだを小山氏は上手く表現していた。
再放送で何度も目にしていた「機動戦士ガンダム」のキシリアも凄い。冷徹だが、部下を思いやる一面も持つキシリアはこの人しか演じることは出来まい。それにしてもアラレちゃんと同じ声の人とは思えない程の違いである。
同じく再放送で見ていた「キャンディ・キャンディ」のアニ―もこの人。今となっては幻しの作品になってしまい残念である。
友達が好きなせいでつられて見てしまった「シティ・ハンター」の美樹も小山さん。「聖闘士星矢」のシャイナも小山さん。「ワンダービート・スクランブル」のリー隊長も小山さん。これ以外にも、私の見ていた作品に小山さんはたくさん出ていた。80年代は私もアニメ(と言うかテレビ全般)を見まくっていたのでかなりの確率でバッティングしているのである。

映画・特番関係でも活躍は目立つ。手塚治虫が存命の頃、日本テレビの「24時間テレビ」で毎回放送されていた手塚アニメに小山さんは常連のごとく出演していた。私がよくみる「伊勢湾台風物語」のヒロイン・津島ひかりも彼女があてていた。また「ゴーショーグン」のOVA版「時の異邦人」での迫真の演技は特筆ものだ。小山氏がやっていたからこそあの作品は間が持ったに違いない。「ドラえもん のび太の魔界大冒険」の美夜子も良かった。
異色なところではキャストを一新した「ルパン3世」のOVA「風魔一族の陰謀」での峰不二子を挙げることが出来るだろう。増山江威子さんのデフォルメされた圧倒的な色気とは違う、現実的な生の妖しさを持った不二子を好演していた。他にも「幻魔大戦」「カムイの剣」「AKIRA」などでも主役級を務めている(私はまだ未視聴であるが)。

洋画の吹き替えも非常に多い。私はナスターシャ・キンスキーやキム・ベイジンガ―のころはあまり知らないが近年の作品なら割に見ている。シャロン・ストーンの吹き替えなんかイロっぽいを通り越してエロっぽい領域にまで到達している(笑)。重ねて言うがアラレちゃんと同じ声の人とは思えない。

ここまで長々と書いてきたがまだまだ私の見ていない作品が多々あり、現在掘り起こして鑑賞中である。長年レンタルビデオ屋を探し歩いても見つからなかった「魔法のプリンセス ミンキーモモ」が8月よりBSデジタルで再放送され、やっと私も見ることが出来た。この作品は本当に素晴らしい。まだ全話を見たわけではないが、傑作の称号を戴くにふさわしいと個人的に考えている。小山さん自身がが歌うOP・EDも感情表現がとても上手く突出している。また、私の住んでいる東海地区では「二ルスのふしぎな旅」の放映が始まっており、こちらの方でも小山さんの素晴らしさを十二分に堪能することが出来る。楽しみはまだ尽きることはなさそうだ。

演じて良し、歌って良し、書いて良し(実はエッセイや対談集のほかに脚本も一度だけ書いている)の小山さん。その麗しい声はまだまだ現役である。これからもその見事な演じ分けによる妙味を期待しつつ、この項を閉じるとしたい。


2002年11月02日(土) ”この人の声に酔いたい” Vol.1 富山敬

概論
富山敬(とみやま・けい)代表作:「宇宙戦艦ヤマトシリーズ」古代進、「UFOロボ グレンダイザ―」デュ―ク・フリード(宇門大介)、「タイムボカンシリーズ」ナレーション、他多数。二枚目から二枚目半、三枚目、ギャグキャラ、変人、妖怪、さらにはナレーターまで何をやっても超一流の力量を発揮する人である。ディス・イズ・ボイス・アクターであり、何から何まで全て完璧であり、もう言いようもないほど素晴らしい役者である。
デュ―ク・フリードが見せた正義と愛の心、「タイムボカン」での冷静かつコミカルなナレーション、「イッパツマン」のシャイな好青年、「ゲゲゲの鬼太郎(3作目)」のいかにもずる賢いねずみ男、「ちびまる子ちゃん」の愛情深き老人・友蔵、以上全て富山敬が当てていなければその魅力は半減していたに違いない。洋画の吹き替えでも2枚目からイッちゃってるキャラまで自由自在に活躍。残念なことに95年に物故されたが、その輝かしき業績は今でも色あせることはない。

独断のプレビュー
私がはじめて富山さんの声を聞いたのは、やはり「タイムボカン」であろうか。疑問系にどどめるのはあまりにも小さい頃から慣れ親しんできた声なので記憶が定かではないからだ。そのタイムボカンにしたって勿論リアルタイムの放送時には生まれていないor物心がついていないから、再放送(朝の五時半ぐらい)での邂逅である。何遍も言っているが私はタイムボカンシリーズが大好きで、それこそリピート放送だろうと早朝放送だろうと食いつくような勢いでみていた強者であった。その中においても富山さんの「解説しよう!」はお決まりの台詞であったことも手伝って一際耳に残ったものである。このナレーションが珠玉の逸品なのであった。善玉には甘く、悪玉には容赦ない。登場するキャラクターを馬鹿にするナレーションなど、この作品以前にあっただろうか。今考えてもつくづく斬新なナレーション手法だったと思う。この”ツッこむナレーター”はやがて「ちびまるこちゃん」でキートン山田が確固たる新境地を切り開き大好評を博したが、元をたどれば富山氏のそれが源泉であることに間違いないはだろう。まさにアニメナレーション界のエポックであったのだ。
そんな富山さんがボカンシリーズ6作目「逆転!イッパツマン」でついに主役を演じることになる。これがまた素晴らしくカッコよかった。明らかに今までのシリーズの主人公よりも大人の雰囲気を漂わせており、それが作品を締りのあるものに引き上げていた。勿論、富山氏の力量があってこその話である。「イッパツマン」が他の作品よりもとりわけ成功しているのは富山氏が主人公をやっていたことが重要な要因のひとつであった。

次に富山さんの声を聞いた作品は「ゲゲゲの鬼太郎(三代目)」である(戸田恵子が鬼太郎役)。この作品ではねずみ男を演じていた。私は「鬼太郎」は大好きであったのだが、ねずみ男は嫌いで嫌いで仕方なかった。ずるいし、卑怯だし、すぐ敵の妖怪に寝返るし、おまけに夢子ちゃんにはちょっかい出すし、で憎ったらしくてしょうがなかった。裏を返せばそれだけ印象深いキャラクターだった訳である。でも、たまに鬼太郎に協力したり、意外と情にもろいところもあったりして極稀にそういう描写があるときはとても頼もしく見えたものだ。これも富山氏の味のある演技の賜物であり、確かな実力があったからこそあの妙味を表現できたのだと思う。余談だがこの作品、今見てみると声優陣が無茶苦茶豪華である。

そして「ちびまる子ちゃん」のおじいちゃん役である。ひたすらまる子に甘い、ちょっとおとぼけのおじいさん・友蔵をまさしく好演していた。本当に味わい深い演技だった。友蔵がまる子を呼ぶ時の「まる子や」なんて、孫が可愛くって仕方ない老人の愛情が滲み出ていて、その声を聞くだけで心が和んだものである。この作品の放映中に富山さんは亡くなわれてしまい、以降青野武が代役を務めているが、私はこのキャスティングに不満である。青野氏は無論大ベテランであり、私も嫌いなどころかむしろ大好きであるが、富山氏とは声質が全然違う。青野氏の演技の質ならやさしい人よりも厳しさの中に毅然とした態度を光らせる役の方があっている。雰囲気があわないから違和感が出てくる。このキャスト変更の時期は、「ちびまるこちゃん」の作品自体が自序伝的痛烈エッセイアニメから、やたらエキセントリックなキャラばかり出てくる陳腐なアニメに成り下がった時期に重なり、私がこの作品を見限るきっかけとなってしまった。

異色なところでは海外ドラマ「特攻野郎 Aチーム」なども印象深い。富山さんはなんと精神病院からの脱走患者という役どころ。何分私が小さい頃に放送していた番組なのでほとんど記憶にないが、冒頭の各キャラクターの自己紹介が印象的だった。富山さん演じるマードックは「奇人?変人?だから何。」というものだったが、もし富山さん自身の自己紹介だったとしたなら「天才?秀才?だから何。」とすべきであろう。

富山さんが亡くなわれてから、彼の業績をたどってみて驚いた。本当に多彩な役をこなされているからだ。「グレンダイザ―」のデュークが富山さんだったとは・・・「ダブル・ハーケン!」なんてカッコ良すぎである。かと思うと「あさりちゃん」ではパパを演じている。これは完全に友蔵タイプ。タタミとママに無茶苦茶されている(?)あさりにとって、パパだけはやさしい味方だった。「ザ・ウルトラマン」のヒカリも演じている。これは古代進に通じるものがあると思われる。その他いちいち挙げていたらキリがないので割愛させていただくが富山さんの偉業は充分わかっていただけたと思う。

アニメの黎明期から活躍を続け、数々の素晴らしい業績を残した富山さんに、私は心から”ありがとう”と言いたい。


2002年11月01日(金) 11月の指針

ぼやぼやしているうちに10月もどこかへすっ飛んでしまった。年月の過ぎ去るスピードは恐ろしいほどに速い。疾風だね、疾風。疾風のように現れて、疾風のように去って行く、月光仮面は誰でしょう〜♪なんて脱線して歌っている間に日が暮れて、カラスがカァと鳴き、今日一日を無駄に過ごした後悔の念が三差神経にズキズキと伝わってくる今日この頃・・・ってそんなことはどうでもいいんです。本題。

唐突ですが、今月は「アニメ強化月間」として、この日記の大半をアニメネタで攻めてみたいと思います・・・と、ここでゲンナリしてしまった人はお疲れ様。しばしのお別れです。1ヶ月後にでも会いましょう。サヨウナラ。

それでも読んでやろうという奇特なアナタ。後悔しても知りませんよ。この件に関して当局は一切責任を負ったりはしないからそのつもりで。くだらんネタに付き合うんだからそれなりの覚悟をしてもらいましょう。

具体的に何やるんだ、とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、私は次のようなことを考えています。既存の企画がありますね、「アニメ思い出館」と「アニメソング感想」の二つ。これだけだと間が持たないのでアニメをもうちょっと別の角度から焦点をあててみたいと思います。次の題材は声の役者の方々。声優さんについてあれやこれや垂れ流してみたいと言う訳です。題して”この人の声に酔いたい”シリーズ。

誰だ、ダサいネーミングとか言った奴は!反論はしないけど。まあとにかくこの題名で声優を語っちゃおうというとんでもない企画です。私は声優でアニメ作品を選ぶと言うことはないのですが(若干の例外を除く)、それでも好きな作品にはスンバラしい役者さんが揃っているので、当然その知識についても割かし身についてしまうわけです。例えば「逆転! イッパツマン」。前にも紹介しましたが富山敬、原えりこ、つかせのりこ、鈴置洋孝、肝付兼太、土井美加、そして三悪の小原乃梨子、たてかべ和也、八奈見乗児とわかる人にはわかる、垂涎もののキャスティング。結果論ですがこれだけでも見てしまおう!という気が起こるものです。一言でもセリフがあるアニメなら画・スジ・声がなければ話になりません(無論これ以外にも重要なものはありますが必然性はないので省きます)。しかれども、声優に対する一般の人の意識は結構低い。自分の好きなアニメでさえ誰が声をあてているかを知らない人もいるのです。そんなやるせない世間の風潮に立ち向かうため(ウソ、実は単にひけびらかしたいだけ)私は声優さんの魅力について筆の及ぶまで書き付けたいと思います。もちろんこれを含むアニメ関係だけで通すつもりはありませんが基本のラインはこんな感じということです。

因みにこれはあくまで私の個人的主観に立った上でのものであり、従って私が見た作品の範囲での話になるので、その辺はご了承願いたい。さらに言っておくと、私は90年代以降の声優ブームの後に出てきた声優には興味も知識もさらさらありませんのでそっちの方を期待しておられる方にもご退場願いたい。

さあ、うっとうしい但し書きはこの辺にして、さっそく書いてみるか!・・・と思ったけど何やら色々書きすぎて、行数が足りなくなってしまったようなので具体的な話は明日以降にしよう。



橋本繁久

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