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  2001年12月24日(月)   「恋に落ちて」  

ときには大人のクリスマス映画も、いいよね。

ということで、クリスマスから始まる出会いを描いた
映画、「恋に落ちて」をピックアップ。

Movie Data;
1984年(Falling in Love)
監督:ウール・グロスバード
主演:メリル・ストリープ
ロバート・デ・ニーロ

もう17年も前の映画なんですね。
当時はずいぶん話題になってましたが、
やっとこの冬、はじめてビデオで観ました。
この映画に触発されたドラマやなんかも、ずいぶん
多いと聞きます。
ニューヨークを舞台に、大人の男女が出会って
恋の喜びと苦悩を描く、という設定だったはず。
大人の恋愛ものというと、すぐ思い浮かぶ映画ですよね。

ニューヨークのクリスマス・イブ。
買い物客で込み合う「リゾーリ書店」で、
二人は出会います。
写真集などが充実している書店らしく、
二人はそれぞれ大きな写真集を買い、
取り違えて持ち帰ります。
共通の趣味があって、書店で話し掛けるのかと思ってたら、
ほんとに、「単純に」ぶつかるのでした。

そして3ヵ月後、電車で再会した二人は、
おたがいにいけないと知りながら、
どんどん惹かれていきます。
結末を早く知りたいという思いと、
うまくゆくはずがないという思いと、
表情ゆたかで抑制のきいた二人の名演技に
「さすが、メリル。さすが、デ・ニーロ」とうなりながら、
クリスマスの街角もしっかりチェック。

あまりにも有名なロックフェラーセンターの前の
クリスマスツリーとスケートリンク、
街角でベルを鳴らすサンタ、
家族のクリスマス。
「メリー・クリスマス」と声をかけあう人々。
そのひとことに、いろんな気持ちがこもっているのを
この映画で知りました。
最初と最後にクリスマスがやってきて、
恋人たちに魔法をかけてゆく。

そうそう、デ・ニーロって、
ニューヨーク生まれだったのですね。
今見ると、若いなぁと驚いてしまうほど若いです。
メリル・ストリープもイングリッシュ・ローズのような
清純さが香りたつよう。
強い女、できる女のイメージではなく、
イラストレーターらしい仕事も少ししているようですが、
いかにも消極的。
対するデ・ニーロも、普通の建築家(現場監督が多いらしい)。
当然ながらマフィアや変質者じゃないのですが、
そういう役どころを思い描きながら観ると、
なんだかよけいに楽しい映画です。

今年はどんな風に言ってみましょう?
「メリー・クリスマス」のひとことを。
(マーズ)

  2001年12月22日(土)   「ジャック・フロスト」  

大ヒットしたファミリー映画ということで、
「ビートル・ジュース」や「バットマン」の
マイケル・キートンファンとしては、
今ごろになってやっと観ています。

Jack Frostは英語で「霜」や「冬将軍」を
いいますよね。ううっ、さむい。

そんな名前の主人公、ジャックは売れないバンドマン。
いつもジョークを連発するお父さん。
知る人ぞ知る、といった渋さが少しずつ注目されたころ。
ひとり息子のチャーリー少年との大事な
約束を、仕事のためにすっぽかしてしまいます。
そして、クリスマスに訪れた最大のデビューチャンスを
家族のためにあきらめようとしたジャックは、
その夜、かえらぬ人となりました。

しかし、ここからがこの映画の始まり。
ジャック・パパは、わが家に帰ってきたのです!
一年後のクリスマス・シーズンに。
チャーリーがつくった雪だるまに"入って"。

この映画の日本語版は「パパは雪だるま」。
ちょっとおかしいほどですが、まさにそのとおり。
雪だるまになってしまったジャックは、チャーリーと
仲直りして、新しい思い出をつくるのでした。

この雪だるまの表情が、とてもユニークで、
「死」という境界をはさんでいることもあって、
涙をさそわれます。
マイケル・キートンの顔に似せた雪だるま、
とにかく表情がくずれていて、悩ましげで、愛嬌がある。
人間みたいに複雑なのです。
SFXはILM、アニマトロニクスは
ジム・ヘンソン・スタジオとのこと。
日々進歩している世界では、3年前となると
技術的には古いのかもしれませんが、
親子の情愛は年を経ても色あせず、
死をへだてても気持ちは通じます。

それにしても、このママは美人ですね。
星のつえを持った、クリスマスの天使みたい。
そして、ジャックがシャウトする、
ジャック・フロスト・バンドのライブも
なかなかでした。

子ども向けのファミリー映画、と
一筋縄ではいかない奥行きのある映画です。
(マーズ)

  2001年12月15日(土)   「ハリー・ポッター」  

映画「ハリー・ポッター」は、もう観ましたか?

魔法使いの学校ホグワーツ魔法学校の
クリスマスは、どんなだろうと楽しみでした。

入学が9月なので、楽しいハロウィーンがすぎると
もうクリスマス(休暇)の足音がきこえてきます。
ホールでは、先生が厳粛なおももちで、
浮遊術を使って、大きなツリーに
きらきら輝くオーナメントを飾り付けていたり。
キリスト教的な要素はあまり見られず、
冬の美しく楽しい行事として描かれていました。

寮に残るハリーとロンは、ほとんどの子たちが
家に帰ってしまったので、ふたりだけのクリスマスを
お祝いします。
いつものけ者だったハリーにとって、
ともだちとお祝いするクリスマスは
わくわくする経験でした。
プレゼントも、ちゃんとありました!
なんだったかは、観てのお楽しみ。(マーズ)

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「ハリー・ポッター」公式サイト
http://harrypotter.jp.warnerbros.com/

  2001年12月14日(金)   「グリンチ」  

映画「グリンチ」は、
クリスマスを何よりも愛する
メルヘンの村「フーヴィル」の住民、フーたちと、
ゴミ捨て場のクランピット山に住む怪物(心が怪物)グリンチが
クリスマスをめぐって、ほんとうに大切なものは
なにか、気づいてゆく物語。

緑色で毛深くて、"ハートのサイズが2つ小さい"グリンチ役は
ジム・キャリー。いじわるで人をよせつけない臆病者。
この役は彼自身の望みと聞いて、少し安心(笑)

監督はロン・ハワード。
現代のマザーグースと呼ばれ、
アメリカで1957年から50年近くも親しまれてきた
Dr.スースの「グリンチはどうやってクリスマスを盗んだか」の
映画化です。

小さい子どもたちと一緒のクリスマスには、特におすすめ。
吹き替え版も、ナレーションがフーの街の不思議な雰囲気を
それこそマザーグースを意識した日本語になっています。

グリンチの細長い、毛の伸びた指が妙にかわいい。
グリンチと友達になる少女、シンディ役のテイラー・マムサンも
茶目っ気たっぷりの表情で、とってもはまり役。
グリンチの犬のマックスも熱演しています。(マーズ)

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「グリンチ」公式サイト
http://www.uipjapan.com/grinch/

  2001年12月10日(月)   「夏至」  

☆ベトナムの空気の色

 「これで、始められます」と館主のおじいさんが
 初日の初回に入った二人きりの観客に、
 ほっとしたように言いました。

 「夏至」という映画です。
 三姉妹が主人公の、それぞれの日常の悲喜をお洒落に描いたもの、
 ということだけは知っていました。
 ベトナムのイメージは、いまではずいぶん
 やわらいだものになっていて、それこそ現地でも
 戦争を知らない世代が増えているのでしょう。
 アジア的で叙情的なインテリアや食文化は、
 ここ数年、アジア雑貨の特集雑誌などで
 必ずといっていいほど登場しています。

 それでも、何がベトナム的なのか、と
 いわれると、これというイメージを持っていませんでした。
 もちろん、訪ねたことはありません。
 アメリカ映画で観てきた戦争の場面ならいくらでも
 あるのですが、それは戦争という極限状況の描写です。
 「青いパパイヤの香り」の監督が
 撮った珠玉作品ということで、前作を観ていない私には、
 ほんとうに、どんな映像なのかも含めて未知の世界。
 映画を観ることでベトナムを知るという目的もありました。

 ベトナムは、18世紀までは中国との独立戦争や内戦に
 よって長い混乱の時代がありました。
 18世紀末にはカンボジアとともに仏領インドシナ連邦とされ、
 第2次大戦では日本に占領され、
 日本の敗戦後はフランスからの独立戦争。
 さらにこじれていって、
 アメリカにとっても悪夢であった南北ベトナム戦争を経た国。
 その後またカンボジアの内戦にも介入しましたが、
 ドイモイ政策が自由化を進めた結果、
 1995年に、やっとアメリカの経済制裁が解かれ、
 国際社会の 一員として認められました。
 --これが歴史的背景としての、一応の、前知識。


 映画に映されていたのは、女性達のたおやかな美しさ。
 黒いつややかな髪と、やさしいまなざしの奥にあるもの。
 アジア的大家族としての、きずな。
 緑を主調においた、しっとりした空気の色。
 明るく透明な光と、激しい雨のなかでのびてゆく生命のイメージ。
 これまでイメージに強く残っていた都市ハノイの雑踏は
 夜のなかでわずかに描かれ、
 主人公たちの経営しているカフェや、家の内側、
 風光明媚な秘境めいた土地などが主な舞台となっています。
 彼女たちのお父さんとお母さんの命日は
 1ヶ月しか離れていなくて、
 その二つの日をめぐる三人三様のドラマ。

 末娘リエンを演じたトラン・ヌー・イエン・ケーは、
 「青いパパイヤの香り」(1992)出演後、監督の公私ともにわたる
 パートナーになっています。
 フランスで映画を学んだベトナム生まれの若い監督らしく、
 光と影をバランスよく配した、抑制のきいた繊細さ。

 仏教的な場面では13世紀頃まで公用語だった漢字も見られるし、
 家事の道具は天然の素材が多くてどこかなつかしい。
 部屋のつくりは都会なせいか、かなりヨーロッパ的。
 やはりビーズの暖簾やおしゃれな布のカーテン、
 あふれる花は雑貨の王道。すべてが自然にセンスよく
 ひとつのトーンにまとまっています。

 朝食は路上で買うのが普通のようで、ちょっとうらやましい。
 特に末娘のコスチュームは部屋着が主なのでシンプルなのに、
 はっとするような美しさ。
 彼らの普段使っている文字は映画には出てこなかったようですが
 語られる言葉はやわらかく、美しい抑揚です。
 それにしても、男性陣ときたら…(以下略)


 そして思いました。
 こういう映画が、いまの日本を舞台にして
 撮れないはずはありません。

 伝統の文化や風習を受け継ぎながら強く生きている女性たちは、
 日本のどこにでもいます。
 戦後、なにもかも均一化されて、特徴がなくなったなんていうのは
 ある種の思い込みにすぎないことも事実。
 どうか、女性の監督にそういう映画を撮ってもらいたいものだと
 思いながら帰りました。
 まあ、似たストーリーとしては谷崎潤一郎の「細雪」が
 そうなのかもしれませんが、
 かといって決して「サザエさん」ではない、
 むしろその間にあるもの。
 かつて巨匠といわれた監督たちが
 描いた世界の味わいを、ほのかに思い出させるもの。
 感性をもって日常の美を描いていくには、そして、
 そんな映画が世界で珠玉の作品として受け入れられるには、
 いまの日本にあふれている若い世代の「センス」と、
 戦後60年たって、浮かび上がってきた日本的な洗練さを
 ミックスした映像というのも、
 ひとつの要素ではないでしょうか。 (マーズ)

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 ・「夏至」公式サイト:http://ge-shi.com
   監督・脚本:トラン・アン・ユン
   2000年カンヌ国際映画祭正式出品作品