う た う ひ と 

2007年06月12日(火)

煮え切らない雨の中
日傘を差して駅前まで
レンタル屋も終わる頃
一人飲みの場所を探して
エレベーター降りると
いつものバーに降り立つ
メニューはないから
オーダーの仕方にいつも困る
でもいつも美味しいから良い

受け入れてくれるなら
誰だって良いなんて
そんなはすっぱな嘘が嵌る歳でもないし
なんとなく微笑んで 
煙草も吸えないから
なんとなくグラスから唇が離れない

今日の夕食は南瓜の煮物と
じゃこと梅干と胡麻のご飯に
茄子と豚肉をこってりと炒めて
きゅうりのたたき漬けも一緒に
夕食は外にしようか それとも何か作ろうか
とっくに準備できていても 知らない振りをする

ボストンクーラーは初めてこの店で飲んだ味
常連の会話の狭間に無口な女が一人
ピアノの先生みたいなお行儀の良い女
黙って微笑んでひたすら飲んでいる
いつなら逢える 
どんな私ならあなたに逢える
訊いた時点で終わりになるとよくよく判る三十路の袋小路
今日も好き好んで迷い込む雨の側道

抱かれながら好きとつい漏らしても
あやすように軽く笑うあなたの指ひとつで
私のすべてが翻弄され口に出せない波のすべてが
しずかな涙になって頬に沁みてゆく
最後の瞬間に抱きしめたその指が背中に食い込んでくる
それだけで ただそれだけに愛情の欠片を乞う
救われたくもない闇の中に一人






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あかり [MAIL]

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