かなしみを
口に出さずに
顔にも出さずに
やり過ごそうとすると

かなしみが
口もとまで
そっとのぼってきて

つめたい水のように
流れるのです
青い水が口もとから
からだじゅうにみちて
からだじゅうが
しん　とするのです

だから

そっと泣いてみてください
いっそ笑ってみてください
いずれ変わらぬ
あたたかさが
かなしみを包むでしょう

かなしみはそれを
待っていると
思えてならないので

どうか
気づいてあげてください

葉桜の頃に
もう一度会いましょう

春花盛りの季節は
あんまり賑やかすぎるから
幸せの空気に染まりすぎるから

勘違いなど
してしまわぬように

約束は今は
これだけにしましょう
葉桜の頃に
もう一度会いましょう

強い風の

次の日には

上にもさくら

下にもさくら

あなたのことが

心配だなあ　と　

思っていると

顔が正直だから

心配顔が隠せなくて

それがあなたを

心配させる

心配がふたりの間を

ぐるぐるぐるぐる

廻っている

そんな

花曇りの日

そこにいつも
あなたがいるように
振り返ってみる　
通りの隅

季節の所為にするのは
多分正しくない
でも今は

ずっと手をつないで
歩かなくていい
もしも転んで泣いても
どうか助けないで

優しい声を
待たない振りをしながら
ふと歩を緩める
改札の前

悲しくない顔をするのは
多分潔くない
本当は強くない
でも今は

あなたが居なくても
大丈夫と言える様
もしも転んで泣いても
どうか突き放して

最後の声が震えても
ありがとう　が終わるまで
どうか何も言わないで
そして全てを閉じて