う た う ひ と 

2002年08月21日(水) 夕方

雲の影が音を立てて
アスファルトを転がる
髪をざわめかせ
季節の終わりを風が往く

駐車場の日陰には
誰の目も刺さらない
存分に泣いたあとは
街までゆっくり歩く

夕立のにおいがする








2002年08月12日(月) 雷鳴

そう聞きたくないと
耳を塞いでも
この音はずっと
わたしたちのなかで鳴ってる
いつからともわからないまま
世界を揺らしながら
どんどん大きくなる
とても怖くて痛くてかなしくて
わたしたちは でも 止められなくて
ただ泣きながら暗い空を見てた
涙も鼻水も拭えず
指ひとすじすら動かせず
わたしたちは茫然と窓辺にいた
音にさらわれぬよう
互いを抱きとめることさえ
できないまま
わたしたちの空気が割れ
世界が壊れ
音がすべてをさらってゆくのを
ただ見ていた
本当はこの音はわたしたちが鳴らす音
手を伸ばせばきっと
やさしい音色に変わるだろう
知っているのにどうして
この身体は動かないの
この心は



2002年08月04日(日) 記憶

愕然としたんだ
最後に君がなんて言ったか
僕はまるで覚えていない

逃げることに必死で
触れるものすべてに歯を剥いた
臆病なちいさな生き物

わからないんだ
僕を追いつめたものは何
違う人のことみたいだ

ひとつだけあるんだ
僕は最後にひどく泣いたんだ
最後に君は片頬でそっと微笑ってくれた

たったひとつ残った
最後の記憶
君は今でも僕を一番泣かせる


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あかり [MAIL]

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