なべて世はこともなし
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2003年12月20日(土) 年末スペシャル・今年一年に感謝を込めて

「年末スペシャル」と銘打った今日の日記。財津一郎さんにご出演頂くまでもなく「スペシャル」です。なぜスペシャルか。


今日が今年最後の更新なのよ。


気がつくと12月、たったの3回しか更新をしておりません。何だかんだで忙しかったのですが、と同時に怠け癖がついたことも否定できません。来年は「ほぼ毎日更新」のペースに戻すよう努力しますが、何せ3回しか更新してなくて今年最後とは盗人猛々しいもはなはだしい。そういう反省の思いから、今日はいつもの倍から3倍の分量でお届けします。こらそこ、だらだら長いだけとか言わないで最後までおつきあいくださいませ。


そもそもなんでまた今日が最後の更新かというと、理由は簡単、明日から2週間ほどクリスマスホリデーなのです。はっはっはっ。行き先は聞かないでくれ(去年と一昨年の日記を見ていただければ言わずもがな)。去年も一昨年もヒコーキに乗れなかったくせに今年も同じルートで飛ぼうとする私はやっぱりアホタレですよね(この辺は去年と一昨年の今ごろの日記をご参照ください)。それ以前に自分は3年前から全く成長していないという事実に気がついて愕然としていますが。でも思うんですよ。


「あ、何か起こったら日記のネタになる」


こうやって自分を慰めているのか、本当に不幸が起こることを期待しているのか私にはよく分かりませんが。とか言いつつ、今年はロンドンで3時間の乗換えで行けるところを一便早く行って5時間の余裕を見ていますのでまあ何も起こらないでしょうが。というか何も起こりません。誰が何と言おうと。




ともあれ、12月といえばクリスマス。クリスマスといえば名物クリスマスショッピング。いやあ、聞いたところによるとすごいらしいですね。ダブリン市街の混雑。私のようにダブリンに5年も住んでいるとこういう状況下ではシティセンターおよび郊外のショッピングセンターには近寄りたくもないですが。というか本当に近寄ってません。一つの商品を買うのに10分もレジに並んだり、車を止めるのに30分もかかるなど私はごめんです。かくして今年はシティセンターには行かない、と決めました。


でもねえ。クリスマスプレゼントを買わない…というわけには当然いかないわけで。


「ヘイハニー。ボクはキミにあげるプレゼントはないけど誰にも負けない愛ならあるぜ」


なんて真顔でほざけるくらいの自信と美貌があれば別ですが、どちらも持ち合わせていない私はやはりプレゼントを買わざるをえないわけで。


というわけで先週の土曜日行って来ました。


Newryへ。


土曜日の朝早く出ていったのですが、私は一つ大事なことを忘れてました。


Newry もダブリンと同じように混んでいる。


あるんだかないんだかわからない国境を抜けた先には渋滞。駐車場に車を止めるのに20分は余裕でかかり、停めれたのは舗装もしていない水たまりだらけの臨時駐車場。ショッピングセンターの中はダブリンと変わらない人ごみ。


オレは車で1時間半もかけてここまで来ていったい何をしとるのだ。


で、Newryくんだりまで行って買ったもの。




ビール6ケースだけ


オレは車で1時間半もかけてNewryまで行っていったい何をしとるのだ。




この日ビール以外に何も買わなかったのにはそれなりの理由がありまして。ちゅうのもその翌週の水曜日(つまりはさきおととい)会社で一日休みを取って別の買い物ツアーに行くことにしたのです。その行った先。






ここは誰?私はどこ?


この写真で分かった方はかなりのツワモノだと思います。そこで更にヒント。


♪いつか あなたと行きたい
うつくしい あの場所へ



おそらくひとりくらいの例外を除いてなんのこっちゃとお思いのことでしょう(その思われなかった方は作者までぜひメールをください)。ちゅうか何のヒントにもなってない。これ、遊佐未森のアルバム「アカシア」の中の曲なんですよ。そのタイトル


アントワープへ


そう、アントワープへ日帰り買い物ツアーを敢行して来ました(ちなみに上の写真はアントワープ中央駅です)


はい。どうせ私はアホタレです。かわいそうなひでかすはこの強行軍につきあわされてアントワープまで連行されました。


なんでこんなキチガイじみたことをする気になったかというと、それはすべてエアリンガスのせいです。12月の初め、突然エアリンガスからメールが来たのです。


1ユーロセール。


エアリンガスからのスペシャルオファーとして片道1ユーロで飛んでいただけます(ただし各種税や諸費用は自己負担)。つまりこれを使えばベルギーまでたったの40ユーロで飛べる!それならベルギーでクリスマスショッピングができる!


かくしてそのセールが始めるという某日の真夜中まで私は眠い目をこすりこすり起きてました。で12時を回ったところでエアリンガスのサイトにアクセスしてみたものの、そんなセールをやっている気配はなし。もしかして一日間違えたかな…と思いつつ寝てしまう。


翌日エアリンガスのサイトをチェックしてみると本当に1ユーロセールをやっている。本当にベルギー(他ヨーロッパの各都市)まで片道1ユーロ。…ちゅうかさあ、エアリンガスさん、あんた「真夜中12時からセール開始」って言っておきながらセールを始めたのはいった何時よ?いい加減王国のキャリアフラッグはウェブサイトまでいい加減なのですか?


ともあれ、日付をいろいろ変えて試してみるがなぜか日帰り往復は320ユーロ。よくよく調べてみると、Saturday night stay(土曜日の夜現地に滞在すること)が条件。


ならばメールにそう明記しておけ。ヴォケ!(もっと言えば、サイトのどこを探してもSaturday night stayの条件は書いてなかった)。


こういうのって最悪ですよね。せっかく人がやる気になっているのにことが自分の思った通りに進まない。まあ日帰りベルギー旅行なんてそんな荒唐無稽なことは忘れようと数日忘れていたのですが、今度は自称真のアイルランドのキャリアフラッグRyanairが…




Bye Bye Concorde. Bye Bye BA (British Airways)


という趣深い…というか強烈なイヤミを含んだ広告を発表(今日の新聞によるとBAは「こういう程度の低いディベートにはつきあわない」=つまりこういうアホな広告は相手にしないそうです)。で、サイトに行ってみると


あった、日帰り往復片道1セント(各種税・諸費用含まず)。


速攻ひでかすに電話。


私:「来週の水曜日ベルギーに行くから。もうチケットは買ったから。会社を休むように」


結局税金等を含んでもひとり往復25ユーロ。この値段なら冗談でベルギーに行ってもいいかなと思う。うちから街までタクシーで往復するより安いもんね。


蛇足ながら数日後私が乗るフライトの値段を調べてみると片道49.99ユーロに値上がりしていた。考えてみると、4999倍の値上がり。すんごい値上がりだよなあ。


かくして話はさきおととい、水曜日に飛ぶ。


朝6時30分のフライトに間に合うために家を5時30分に出て、ダブリン空港の駐車場に車を停めてチェックイン。定刻通りに離陸した元ルフトハンサの20年選手の超経年機のおんぼろヒコーキはそれでも定刻より15分も早くBrusselsの南にあるCharleroi空港に到着。


で、Ryanairのチケットカウンターで電車の切符を買いバスでCharleroi Sud駅へ。


ここでRyanairでCharleroiに飛ぶという奇特な方へお知らせ。Middle of nowhereのCharleroi空港からの脱出はBrusselsまでRyanairのシャトルバスを使わなければならないとお思いかもしれませんが、これ間違ってます。儲けが少ないからかRyanairはあまり(ちゅうか全然)広告をしてませんが、Charleroi空港のRyanairのカウンターでCharleroi駅を経由してベルギー中のどの駅までも有効なチケットが片道10ユーロで買えます。ちなみにRyanairのバスもBrusselsまで片道10ユーロなのでこれはおトクだと思います。


ところで、そろそろ読者さんも飽きてきた頃ではないかと思います。なにせ書いている本人が疲れ果ててきましたから。あともう少しおつきあいくださいね。


で、空港にてみんながみんなRyanairのバスに向かっている中で私たち二人ともう一人の例外はアイリッシュの中年のオッサン。私たち同様ほとんど荷物もなく、とても旅行者には見えない。


オッサン:「どうやらバスを逃しちゃったらしいねえ」
私:「ダブリンバスと違ってこっちのバスは時間に正確みたいですねえ」
オッサン:「はっはっはっ、ダブリンバスの悪口は聞き飽きたよ」



かくして次のバスで10分、Charleroi駅へ。駅のチケットカウンターでさっきのオッサンと再び会う。程なく電車はやってきて、1時間30分でアントワープへ。日本人にとってアントワープといえば上の写真でも出てきた「フランダースの犬」の大聖堂。とりあえずひでかすも見たいとほざくのでさくっといってみる。既に3度か4度来ているので迷わずにさくっと到着。


で、大聖堂を外から見てお決まりの写真を撮るとひでかすは


ひでかす:「じゃ、買い物にいこか」


…中に入らないんですか?


ひでかす:「興味ないね」


何しにここまで来たんですか?




クリスマスマーケットで暖かいワインを飲んだ後、ショッピングストリートへ。ひでかすはおしゃれな小物の店などには目もくれず、バッタバッタの大安売り風の店に直行。ひでかすの買ったもの。


エプロン。


な、なぜエプロンなんですか?


ひでかす:「ばっかだなあ。裸エプロンは男のロマンじゃないか!」


…分からないというまともな神経を持った方々のために解説すると、「裸エプロン」とは、女が裸でエプロンをして(その時点で尋常ではないわけですが)家事をしている。そこに男がやってきて後ろからなしくずしに…(以下青少年読者を考慮して自主規制)。


そんなことのためにアントワープくんだりまで来てエプロンを買うキミは立派だよ。ひでかす君。将来大物になるよ。…きっと。


そのあと私たちはCDやDVDを見てまわるが…まあ安いこと安いこと。どうでもいいタイトルばかりだけど数千タイトルのDVDが5ユーロで売ってる。CDもそんな感じ。


で、結局7時まで買い物したり飲んだりしながら過ごしまして7時の列車でCharleroiに戻り、午後10時のフライトにてダブリンへ。ヒコーキに乗るや否や、見つけたのは朝のオッサン。どうやらこのオッサンも日帰りらしい。Ryanairの「平均搭乗率8割」の秘訣は私たちやこのオッサンのような人を乗っけることで空席を減らしているらしい。


フライトは遅れるどころか早着。今度は駐車場に行くシャトルバスで4たびこのオッサンに遭遇。オッサンはなぜかダブリンバスの帽子を被っている。私の頭の中に、けさのCharleroi空港のバス停での会話のフラッシュバック。


オッサン:「どうやらバスを逃しちゃったらしいねえ」
私:「ダブリンバスと違ってこっちのバスは時間に正確みたいですねえ」
オッサン:「はっはっはっ、ダブリンバスの悪口は聞き飽きたよ」



ひえええええ、私はダブリンバスの運転手さんに知らずに悪口を言っていたんですか?悪口を言う時には時と場所と人を選ばねばならない…「口は災いの元」という諺を思い出した一瞬でした。


かくして今年の更新はおしまいです。ただし、ひでかすに代打日記を頼んでおりますのでもしかしたら更新があるかも。来年は1/3に復活します。1/3に「新年スペシャル・重大発表」があると思われるので1/3には必ず遊びに来てくれると嬉しいです。


今年一年ありがとうございました。来年もまたよろしくお願いします。

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2003年12月13日(土) アイルランドの路上でもらえるプレゼントとは?

日本というのはいつに豊かな国であります。不景気だ何だと言われてますが、世界中どこに行っても駅前を歩いているだけで広告付のティッシュペーパーだのなんかの試供品だのがタダでもらえる国なんてそうそうないと思うのですが。


いえいえ、ダブリンでもたまに新製品の試供品なんかが配られていたりします。ただ数日前にもらったものはちょっと私の常識をはるかに越えた位置にあったのでここにご報告です。


数日前、とある場所を歩いているとおねえさんが配っていたもの…。それは




広告をシールでぺたっと貼ったリンゴ。


ビニール袋に入れていたわけではありません。そのままシールでぺたっと会社名と電話番号を貼ってます。しかもおねえさんはこのリンゴを渡す前ににこっと笑って


おねえさん:「リンゴとバナナ、どっちがいい?」


にこっと笑って「リンゴ」と答えた私はやはりアイルランドのに長く住みすぎているのでしょうか。

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2003年12月08日(月) アイルランドアイススケート最新事情

クリスマスオンアイス…なるイベントに行ってきました。なーんのことはないアイススケートリンク。ダブリンには私が知る限りでは2個所のアイススケートリンクがあったものの、どちらも何時の間にか閉鎖されており、で、年末になると私が行ったRDSを含め数か所で特設のアイススケートリンクが設置される次第。


噂ではアイルランド人はアイススケートが下手らしい。去年のクリスマスの時期にベルリンのアイススケートリンクに行った私の友人からの報告によると、リンク上にやたらと騒々しい若い女性4人組がいたそうな。で、よく見ると(というかよく聞くと)


アイリッシュ


リンクの上で放送禁止用語を連発しながら一生懸命手すりにつかまっていましたとさ。なぜかドイツ人はスケートがうまい人が多い(自前のスケート靴を持っている人が多い)ので余計目立っていたそうな。


そういえばダブリンでボーリング場に行っても「下手で恥ずかしい」と思うことがただの一度もない。右側の人が優先とかいうマナーがないのが悔やまれるが、マナー以前にヘタクソもいいところ…具体的にはいい大人がスコア60とかをたたき出している…ので決して自分が下手だと思わなくてすむ。なんていい国なんだアイルランドは。


で、もしかしてこの「アイリッシュヘタヘタの法則」がスケートにも成り立つのかな…ということは私がスケートが下手でも恥ずかしくない!


思い起こせば私が最後にアイススケートに行ったのは前世紀1999年のお話。くそ寒いストックホルムの町中の屋外にあった特設アイススケートリンク場。そこで1時間程度滑ったなあ。ヘタクソで恥ずかしかったという思い出が。


かくして勇んで行ってまいりました。RDSの特設アイススケートリンクに。夜7時30分の約束だったので町中が大渋滞していることを見越して6時40分に家を出たところ予想大ハズレ。どこにも渋滞はなく7時ちょうどにRDS着。RDS併設の駐車場に停めると金がかかるので路上に停めようと決めていたこともあって(せこい)駐車スペースを探すのにも一苦労するかと思いきや、何のことはないあたかも私のために開けられていたとしか思えないすばらしい縦列駐車のスペースが一台だけ空いている。かくして約束より30分も早く現地に着いてしまう。


ああ、悲しいかな日本人。約束の時間より30分も早い。


まあ文句を言っていても仕方ないのでひとりでRDSの特設会場へ。お世辞にも広いとは言えないスケートリンクで多くの人が滑っている。確かに柵をつたっているだけのどうしようもない人もいるが、ほとんどの人は一応曲がりなりにも滑っている。状況としては特にうまい人がいない代わりにヒサンな人もいない…といった感じか。それにしてもそりゃ滑っていりゃ暑くなってくるのもわかるがアイススケートリンク場でさえの得意のヘソだしルックはいかがなものかと…。


で、その横には特設のクリスマスマーケットがあり、ヨーロッパの大陸から来たと思われるチーズの店や籠細工の店が並んでいる…なんて書くといかにも魅力的だが実際は十軒程度の店が暇そうに営業していただけ。


それにしても値段がサギのように高い。例えばドイツのソーセージとホットワインを売る店。Lidlで8本2.5ユーロで売ってるソーセージが1本4ユーロ。750ml入りの同じくLidlで3.6ユーロで売っているホットワインが200mlグラスで3ユーロ。元の値段を知っているだけあほらしかったが寒かったのでついと買ってしまう。ちなみにドイツ人の店員さんが炭火で焼いていたソーセージは確かにおいしかった(4ユーロ払う価値があるかどうかは大いに議論の余地があるが)。


とかやっているとアナウンスがかかり


「はーい、今アイススケートリンクにいる方。お時間です。ご利用ありがとうございました」


ん?なに?このアイススケートリンクは映画館のように入替制なの?そう思って自分のチケットを見ると


8時20分から9時20分までのセッション


と明記してある。フツーこういうのって入替制でやるのか?フツー?で、チケットいくらだっけ?15ユーロ。確か予約を入れないと滑れないくらいの人気だったよな。で、1時間15ユーロで100人が滑っているとして…


うーん主催者片手ウチワ。


で貸しスケート靴を借りるために並んでスケートリンクへ。私たちのグループは総勢20人。結構な大所帯。4年ぶりだからいったいどうしていいか分からない。するとドイツ人の友人(女性)がやってきて私の手を引っ張って1周。これでおおよそのカンを取り戻した。…と言っても取り戻すカンなどほとんどなかったのですが。


で1時間15ユーロというモトを取るべく(って実は自分では払ってないんだけどさ)ドイツ人と滑っていると不思議なことに気がついた。一緒に来たドイツ人以外の友人がみんな軒並み見当たらないのだ。気がつくと


リンクの外で傍観


「疲れた」
だの
「滑れないからいい」
だの言ってアイリッシュは軒並みダウン。残っていたのはドイツ人と私だけ。


結論:アイリッシュはアイススケートは決して下手ではないが続かない。


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2003年12月06日(土) 我が家のとある土曜日の朝

こんにちは。ひできすの代打日記です。

皆さん長らくお待たせしましたが、Snigelの隠密行動はそろそろ最終段階に入り、
もうしばらくしたら日記も滞りなくアップされていくことと思われます。

昨日、土曜日はいつもとは立場が逆転して、Snigelが仕事でひできすが休み。
朝からのほほんと、残り少なくなったキムコ、じゃない、キムチをおかずにご飯を食べていると、二人のドイツ人の同居人がキッチンに飛び込んできて、
 

「ひですき、変態。オイルがなまっていて、おじさんがトラックにガレージと400ユーロ?」


「...」


どうやら、

「ひできす、大変。トラックでオイルを積んできたとても訛りの強いおじさんが、ガレージを開けろといってるけど、400ユーロ持ってる?」


が、パニクって言葉がすっころんだ模様。


そう、先日家の暖房用の灯油が切れかけているのに気づいたひできすは、全フラットメイトを対象に、アンケートを実施し、400ユーロ分を注文することになり、Snigelに「そんなわけでよろしく頼んどいて」とまるなげにしていた。


まだ半分寝ぼけているひできすは、「あのばか、何でそんな大事なことを黙っているんだ」とさけびながらコートの財布をまさぐる。


おりしもそのとき家の電話が鳴り、Snigelから


「そう、そのことなんだけどね(はあと)」。


「何が、そのことなんだけどね(はあと)だー。」と言いながらひできすが財布の中に見つけたのは20ユーロ紙幣。おっ、ラッキー。今金欠なんだよね(というか、今年はずっと)。

...じゃない、今われわれが対面している問題は400ユーロ。絶望の面で二人のドイツ人を見ると、


「あのっ、裏口のドアの鍵が調子悪くて開かないんだけど」


「だーっ、お前ら何年ここに住んでんだ?」


「なによ、こないだ越してきたばかりじゃないの」


「ば、ば、ばっかだなー。今語らねばならないのは400ユーロという現金...」。


ドアを直しながらひできす


「金、あるのかないのか?」


と聞くと、二人ともお手上げというジェスチャー。


ドアを直してやると、二人はおっさんが早く開けろと叫んでいるので急いでガレージを開けに行く。


ん?そういえば忘れていた。おれは電話をしていたんだ。大体、Snigelがここにいないのが悪い。


「それでSnigel、どうすんでい。あれ?お前なんで声枯れてんの?」


「ぶわくゎやろー、電話中に俺を無視するなー。人の話を聞けといってんだ。」


Snigelは、ひできすが受話器(コードレス)を耳に当てずにうろうろあたふたしているあいだ、ずっと「おーい、ひできすううう。聞いてますー?もしもーし」と叫んでいたらしい。けなげなやつ。


ひできすは「わかったSnigel。お前がおっさんと話せ。」


かのおっさんは、すでにガレージから裏庭に入っていて、トラックから引っ張ってきた長いホースをタンクに突っ込んでいる。


「ちょっとおっちゃん、Snigelとしゃべって」と受話器を渡すと、


「おお、きみはたしかジャパニーズ・パディー。元気してる?」


なんだあ?こいつら知り合いか?


おっさんは、Snigelのクレジットカードの番号をメモして(なんだ、サインいらないんだ。Snigel、どしてそういうことはやく言わないんだ。)


「でジャパニーズ・パディー、君の本名は?」とやっているところで、タンクの灯油があふれてどばばばば。あーあーあー。


トラックに戻りSnigelの本名を書いて渡すとおっさんは、


「ほいレシート、25ユーロディスカウントしといたから。」


おっ、持つべきものは石油会社に勤める大家さん。このおっさんは、おそらく大家の会社の部下といったところか。


「そんだば、ジャパニーズ・パディーによろしくねん」といって、おっさんは去っていった。


10月に越してきたこの家、セントラルヒーティングの燃料は灯油。前の家のようにダブリンのほとんどの家はガスが燃料。
年に何度か大型トラックでオイルを持ってきてもらわないといけないのは面倒くさいが、家は前の300倍あったかいし、オイルヒーティングは安いという人もいる。アイルランドは天然ガスが出るのでガスのほうがいいんだという人も多いが、ガスヒーティングは事故も多い。どちらがいいとは簡単には比較しづらいどころで。



さて、一部始終を暖かい家の中で見守っていた女性陣は、


「あのおじさん、こぼしたオイル洗っていかなかったわ。くさくてやんなっちゃう。」


ぷちんときれたひできすは、


「ばっきゃろー。そんなもん、雨降って痔がたまるんだ」。


我が家の土曜日の朝はけたたましい...。




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