馨絵詞〜かおるのえことば
楽しいことも、そうではないことも。

2003年07月24日(木) いつか、かめはめ波を撃つその日

ある人体図鑑に、小人さんたちが食べ物の消化・吸収をしている図が載っていた。
胃袋の小人たちは口から入ってきた食べ物にホースで胃酸をかけながらかき混ぜ棒でこねこねしていた。
小腸の小人たちはドロドロになった食べ物からスプーンを使って栄養をすくいとり、大腸の小人たちは防臭マスクをしながらウンチを一生懸命に黄門から押し出していた。
そんな図解を見たものだから、幼いころ、人の体内では無数の小人さんが働いていると認識していた。
吐いたりウンチしたりのときに小人まで出てきやしないかと心配したものだ。
小人の体内にもまた小人がいて、その中にもまたさらに小さな小人がいて……と、幼いながらも自分の内に宇宙を感じていた。

   ◆

怪獣映画が大好きだった。
『ウルトラマン』も大好きだった。
チビのころからウルトラマンやゴジラといったヒーロー・怪獣が創りものであることはなんとなくわかっていた。
だが科学特捜隊(『ウルトラマン』に登場する防衛チーム)は実際に存在する組織だと思っていた。
怪獣と戦うことはなくても、宇宙の監視などはしているものだとばっかり……。

数年して、どうやら科学特捜隊も実在しないらしいということがわかってきた。
だがしつこいことに、地球防衛軍は本当にあるとさらに数年は信じていた。
国連軍っていうのがそれに近い組織なのかな、なんて。

   ◆

ちゃんと力を込めればかめはめ波は出せるものだと思っていた。
家の中で本気で構えて練習した。
いざ撃てちゃって家が壊れたらまずいと子供なりに気を使って、窓から空に向けて練習していた。
思い込みというのは怖いもので、あとちょっと努力(具体的には腹筋運動とか腕立て伏せ)をすればもうすぐ出るぞ、といった確かな手応えを感じていた。
また、空に向かって筋斗雲を呼んだこともあった。
あのころは『ドラゴンボール』にはまっていたなあ。

   ◆

メラゾーマ(火炎呪文)やギガデイン(電撃呪文)は無理だと知っていたが(かめはめ波は出せると思っていたくせにこいつは…)、ルーラ(瞬間移動呪文)は練習次第だと思った。
『ダイの大冒険』という漫画の中でルーラを使うコツみたいのが言われていたためだ。
目的地をイメージして魔法力そのものを放出しろ…って具合だ。
こういうふうに漫画の中で「コツ」を紹介されるとなんとなく出来そうな気がしてくるのだ。
同じ理由で『幽遊白書』の霊丸も実際に努力をした。
すべての力を指先に集めるイメージをする。
すると霊力が指先に集まって熱くなるのだ。

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上はどれも稲葉が子供のころに本気で信じていたことです。
ねえ、子供って馬鹿なこと考えてますね。
自分のことながら怖いくらいに馬鹿なこと考えてますね。
やれやれです。

もちろん体内に小人はいませんでした。
科学特捜隊地球防衛軍なんて組織は作られておらず、ましてや全滅もしていません。
かめはめ波が出たためしはないし、筋斗雲は気配もしませんでした。
ルーラはたったの1メートルさきに無事着地する結果となり、霊丸は人差し指が熱くはならず痛くなりました。

どれもこれも、子供が信じた他愛もない夢です。
結果として裏切られた、と言ってもよいかもしれません。

しかし、小人がいなくても人体の働きに興味があるのは変わりありません。
科学特捜隊地球防衛軍がウソだとしても、今だって『ウルトラマン』は好きだし登場する怪獣や超兵器はやっぱりカッコいい。
かめはめ波ルーラ霊丸も使えなくたって『ドラゴンボール』『ダイの大冒険』『幽遊白書』は名作だと思うし、たまに読み返しもします。

そんなふうな、裏切られてなお楽しい夢を大切にしよう。
そういった夢を創っている人たちはとても素敵です。
そういった夢を子供に与えて鮮やかに裏切る、早くそんな大人になりたい。

いまでも稲葉、1人のときになんとなくかめはめ波のモーションをしてたりします。


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稲葉 馨

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