読書日記

2001年10月28日(日) 佐伯泰英「橘花の仇」読み終わった。渋い傑作。

佐伯泰英「橘花の仇」読み終わった。渋い傑作。
佐伯泰英「橘花の仇(鎌倉河岸捕物控)」(ハルキ文庫2001.3)読了。序章プラス全六話の連作長編。各話のタイトルは順に言うと「仇討ち」「逢引き」「神隠し」「板の間荒らし」「密会船強盗」「火付泥棒」でそれぞれの事件を表している。初めの「仇討ち」のみが主人公の一人しほに関わる事件である。他は金座裏の岡っ引き宗五郎親分の縄張りで起きた事件でしほが自然と関わっていく形になって解決されてゆく。そして全体を貫く大きな事件としてしほの両親の秘密と川越藩の談合問題が次第に明らかになってゆくのである。構成が綿密で登場人物も見事に描き分けられている上に作者の歴史や時代に対する目配りも十分である。
最近、鳥羽亮の時代小説も面白く読んでいるが、作者の年齢の差なのか、描写に時代性が足りないような気がする。
その点、佐伯泰英の作品は今のところ申し分がない。そのうち闘争場面がなくても楽しめる作品が出てきても驚かない。江戸時代の普通小説(?)を書いてくれるかもしれない。そう思うくらいよく出来ている。
鎌倉河岸捕物控の第二作目、「政次、奔る」も92ページまでしか読んでいないが一筋縄でいかない構成と個性ある人物群像の描写で先が楽しみである。
今、佐伯泰英が一番忙しい。


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