風の行方...深真珠

 

 

朝物語り - 2004年08月12日(木)

あなたが
「優しさというものは、傷口が乾いて、黒くへばりついたところからしか生まれてこないんだよ。」
と言いながら、ちょうど私の心臓のあたりを綺麗に舐めてくれたおかげで、
私は救われたの。
前はあんなに痛くて苦しいだけだった傷口が、
今では不思議なくらいに何も感じなくなった。
むしろその傷口こそが、今の私を構成しているかのようにも感じる。

あの日、私は大泣きしながら、私に刻まれた傷の一つ一つをあなたに説明し続けていた。
一つの話が終わると、あなたは「そっか」と言いながら、私の傷口をしばらく癒してくれた。
私はあなたの行為をじっと見つめて、あなたが手を止めると私はまた語り出す。
気付いたら朝になっていて、カーテンから漏れてくる眩しい光りが大胆に部屋を横切っていた。
あなたが手を止めて、私がまた話し出そうとした時、
あなたは口の前に人差し指を立てて、静かにするように合図した。
するとあなたはそのままベットを抜け出してカーテンを勢いよく開けると、振り返って私に言った。
「ほら、僕らには朝がくるじゃないか。
僕らは生きている限り、未来があるんだ。
何も心配することはないよ。
僕らはもう一人じゃないんだから。
僕には君がいる。
君には僕がいる。
今までが幸せじゃなかったら、これから幸せになればいい。
世界中が羨むくらい幸せになっちゃえばいいんだよ。
まだまだ時間はたっぷりあるんだからさ。」
彼はそう言い終えると、大仕事をやってのけたような顔をして、またカーテンを閉めてベットに戻ってきた。
私は彼から逃げるようにベットから抜けだすと、彼が大嫌いな苦いコーヒーを2杯入れた。


...




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