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2006年08月04日(金)  地下も地上も
人に会う用事があって地下鉄に乗って出かける。

複数の地下鉄が通っている駅はものすごく広い。
自分の目的の地下鉄の乗り場まで、「あと800m」とか書いてあったり、目的地に一番近い出口のA3出口まで「あと500m」などと書いてある。
こんなふうに人は知らず知らず歩かされている。

「A3」の方向を示す矢印を追いかけて歩いていると、周りを歩く人たちがだんだんと少なくなり、地下街の店がだんだんとなくなってくる。やがて、地下鉄独特の嫌な匂いが鼻につくようになり、壁をつたってどこからか流れてくる水がちょろちょろと足元を濡らしていく。
方向を示すこの矢印は本当に正しいのだろうか。
私はこのまま歩いていくと、誰も居ない誰も知らない場所まで連れて行かれるのではないだろうか。なんとなく、そう思いたくなる。そう思いながらも、私は足を止めずに言われるがままの方角へ歩くしかない。

なんだか嫌な気分になる。

歩いてたどり着いたところは行き止まりの壁しかなく、途方にくれてふと左を見上げると、人ひとりしか通れないくらい狭い階段があった。階段はどこもかしこも濡れている。誰もこの階段を降りてこないようにと願いながらのぼっていくと、頭の上がだんだんと明るくなり足をはやめてのぼりきると、そこには黄色い太陽がアスファルトを照らしていて、まるでアスファルトが濡れているようにぎらぎらしていた。

私は太陽に目が眩む。
地上は暑すぎて私の居場所はなく、かといって迷路のように不安にさせる地下の街にも私の休まる場所がない。
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