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2005年10月08日(土)  押すのがダメなら引いてみな
某カフェの喫煙コーナーは、ガラス張りの小さい部屋で隔離されている。
その中には、お茶を飲む私とネクタイを締めた私と同じくらいの年齢の文庫本を読むサラリーマン。
ふたりっきり。

待ち合わせまでの時間はたっぷりあって、持ち歩いていた本は終わりまで読んでしまった。
何にもすることがないので、小さな小さな声で鼻歌を歌ってみる、
というイタズラをしてみる。

どれくらいの音量で、あのサラリーマンは私の鼻歌に気づいてくれるのかどうか。

店内には、ボサノバとかジャズが薄くかかっているので、思っているより大きな声で鼻歌してみても、相手は気づかないらしい。
ひーとみーをとーじてー、きーみをーえがーくよー、そーれだーけでーいいいぃぃぃいぃー。

そんなイタズラをしたからって、どうなるわけでもない。
だけど、なんか面白いじゃん。
何となく誰かが歌う声が聞こえてきて、ハッと顔を上げると知らない女とふたりっきりのこの状況で、彼はこの異常な鼻歌にどんな反応をするのか

だってだってだって、暇なんですもの。

ひーとみーをとーじてー、きーみをーえがーくよー、そーれだーけでーいいいー。

しゃかりきに、ぐんぐん音量を増していったけれど、彼は相当本に集中しているのか、まったく反応してくれない。これでもか、これでもかと大きくしていったけれど、全然無反応。
もう!ひとりカラオケじゃないの、これじゃーさー。
つまらない。

つまらない!と思って鼻歌を中止したら、ハッと彼が振り向いた。
ニヤリ。
押すのがダメなら引いてみろ。
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