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| 2005年03月25日(金) なぜ、私が選ばれたか |
| 私は異母兄を傷つけてしまった。 なんでもない話が膨らんで、私は兄に酷いことを言ってしまった。 その酷い言葉が私の一体どこから沸きあがってきた言葉なのか。 意識的に心で思ったことがあっただろうか。 無意識のうちに私はそんな酷いことを考えていたのだろうか。 どちらにせよ、兄が絶句したことには違いない。 そして、そのあと兄が無口になったことには変わりない。 私はよく夢を見る。 幼い私が現れる夢が多い。 今の私には記憶すらない、私の小さかった頃の夢。 それが実体験なのか、欲望や欲求から来る夢なのか、それさえも区別がつかないほど幼い頃の私が現れる夢。 私は兄と父母と一緒に暮らしている夢を見た。 父が食卓につき、母が私と兄に「ごはんよ」と声をかける。 兄が先に椅子に腰掛けると、母がにっこり笑って兄に箸を手渡した。 父が兄の皿に料理を盛って、「いっぱい食べようね」と言った。 私はそんな三人の姿を見て、自分の存在がとても心細く薄っぺらく思えた。 父と母は私にもそんなに優しくしてくれるのだろうか。 私も兄と同じように優しくしてもらえるのだろうか。 父と母は私のことを忘れてやしないだろうか。 自分たちの子はたったひとり。兄、たった一人だと思っていないだろうか。 私もここにいるのに。私も父と母の子供なのに。 私は兄に複雑な嫉妬をおぼえる。 お兄ちゃん、一緒に遊ぼうよと私は言う。 イヤだよ、僕は友だちと一緒に遊ぶんだからと兄は答える。 私も連れて行ってよと行ったら、 兄は私を振り切るように立ち上がり、家を飛び出した。 兄は走る。私は置いていかれないように追いかける。 そしてこう思っている。 このまま兄を出かけさせては、もう二度と兄は家には帰ってこないかもしれない。 このまま兄を見失っては、兄は家までひとりで帰ってこれないかもしれない。 夕方になって友だちが家に帰っても、兄はうちがわからずに泣きながら道に迷ってしまうかもしれない。私がいなければ、兄はひとりで家になんか帰ってこられない。私は、ちゃんと兄が家まで帰ってこられるよう、一緒に居てあげるんだ。兄を見守ってあげるんだ。 お兄ちゃんがいなくなったら、淋しいから。 お兄ちゃんが道に迷ったら、かわいそうだから。 だけど、私の足では兄の速さに追いつかない。 みるみる間に兄の後しろ姿は見えなくなって、私は躓いてこけた。 悲しくて痛くて、膝小僧には血が滲んでいた。 淋しくて淋しくて、ふと、兄は家に帰ってきたくなかったのかもしれないと思った。 私が邪魔で、私が嫌いで、だからあんなに、一生懸命走ったのだろうか。 折り合いをつける、とはどういうことだろう。 家族の間で折り合いをつける、自分自身の中で折り合いをつけるということは一体どういうことだろう。 その言葉を使うとしたら、私はまだまだ自分自身の中で折り合いをつけられていないのだ。 だけど、今の現実では、私の納得も私の折り合いも必要ないまま、家族は毎日生活をして、私は私の生活を、兄は兄の生活を、父も母もそれぞれに生きている。だけど、私たちは血のつながりがあり、そして家族である。兄の母も含め、私たちはそれを望もうが望まないでいようが、容赦なく繋がってしまっているのだ。 私が、家族に対して複雑な思いを抱えているからといって、なにがどうなるわけでもない。 現実は、こうなってしまっているのだから。 捨てたくても、私は逃れられないし、 そして同じくらい、私には失えない大切なものでもある。 両極端の思いの中で私はどうやって存在すればいいのだろう。 兄、父、母、兄の母親、そして私。 私はその5人の中で一番年下であり、一番最後に生まれてきた人間だ。 私は翻弄されているのだろうか。私は周りの人間に翻弄されているのだろうか。 生まれてきて、何もしていないのに、この状況を無条件で受け入れなければいけない立場だったのだろうか。 だとしたら、私は私として生まれなければ良かったと思う。 私という魂が、私という体を得て、生まれてこなければ良かったと思う。 私は少しも今を望んでないし、折り合いもつけてはいない。 だけれど、今という現実がある以上、私は私として兄を傷つけることがあってはならないとも思う。 |
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