2007年03月18日(日)
まるがおで、おもながで、ちょっぴりたまごがた


 新しい携帯がかわいい。なんか撫で回したくなるようなかわいさです。





 金平糖釜が回りきらない今日この頃ではありますが、ひさしぶりになんかきたので、書きます。
 でも割と引くと思います。












 ぼくはぬいぐるみ。クマのぬいぐるみ。
 ぼくはまひろくんのお父さんにおもちゃ屋さんからつれてこられて、まひろくんとそれからずっといっしょにいる。いつでもいっしょ、寝るのも一緒。ぼくの左手はまひろくんのなかなかなおらない癖で、いつもしゃぶられてくたくたで。それでもいっしょ、いつでもいっしょ。だからぼくはまひろくんが嬉しければ嬉しいし、まひろくんが悲しければ悲しい。まひろくんが寂しければ寂しいし、まひろくんが楽しければ楽しい。けれどもまひろくんは大人しい、というかあまり感情のない子だった。それでもぼくはまひろくんが嬉しいのか悲しいのか寂しいのか楽しいのか、わかっているような気がしていた。だってぼくたちはいつも一緒だから。
 まひろくんは何も言わず、でもぎゅっとぼくの左手を掴んで離さず、いろんなところへぼくをつれていってくれた。近くの公園、遠くの野原。ぼくには知らない世界ばかりで、ぼくはそれも嬉しかったけれど、どこへいってもまひろ君がいっしょなのが一番嬉しい。ぼくの嬉しさや悲しさや寂しさや楽しさは、まひろくんに伝えることはできないけれど、それでもぼくたちは一緒だったから。
 けれどもまひろくんがちょっと大きくなると、まひろくんはぼくをつれていかなくなって、本棚の隅に置きっぱなしになった。そのうちもっと大きくなって、完全にぼくのことなんか忘れてしまったみたいだ。ぼくはいつでもまひろくんのことを見ているのに。
 けれどももう、ぼくがみているまひろくんは、この狭いまひろくんの部屋のなかのことでしかない。この広い世界のここだけの世界で、この長い一日のほんのわずかな時間で。

 ある夜、まひろくんが帰ってきた。電気もつけずにベッドに倒れこむと、まひろくんは声を押し殺して泣き始めた。まひろくん、何があったの?どうして泣いているの?どうして、ひとりで泣いているの?まひろくんがいつだって、ぼくを抱きしめて泣いていたのに。お父さんに怒られた時も、公園で友達とのケンカにまけたときも、ぎゅうとぼくを抱きしめて泣いていたのに。
 なにがあったの、どうしたの、どうしてなの?
 ぼくには何もできないの?
 わかっているんだ。ぼくにはもう何もできないということを。
 わかっているんだ。まひろくんが大人になるということを。

 そうしてまひろくんは大人になって、この家を出ていく。ぼくの知らない世界へいってしまう。
 まひろくんは淡々と部屋で荷造りをしていたところに、まひろくんのお母さんが入ってきた。
「あら、まだこれあったのね、懐かしい」
 まひろくんのお母さんはぼくに気がついて、そう言った。
「持って行かないんでしょ?捨てるなら下に出しておいてね」
 まひろくんは何も答えずに荷造りをしている。そうかぼくは捨てられちゃうんだ。でもそれもわかっていたことのような気がする。
 今度はまひろくんおお父さんが入ってきた。
「お、懐かしいなぁ」
 お父さんもぼくに気付いてぼくの頭を撫でてくれた。
「お前はこれが欲しくておもちゃ屋の前をうごかなかったなぁ」

 そうだった。毎日毎日、まひろくんはぼくが飾られているショーウィンドーの前にきて、じっとぼくをみつめていた。ぼくは正直こわかった。だってまひろくんはただぼくをみつめるだけなのだ。普通の子供はぼくをみて笑うのに、大人だってぼくをみると微笑むのに。ただまひろくんはじぃっとじぃっとみつめるだけ。
 ある日、まひろくんは大人の人とあるいてきた。いつものようにぼくの前に通りかかると駆け寄ってきて、ぼくをじぃっとみつめる。
「なんだ?これがほしいのか?」
 どうやら大人の人はまひろくんのお父さんみたいだとその時思った。
「ん?どうなんだ?」
 まひろくんは何も答えなかった。ただぼくをじぃっとみつめている。
「まひろ。欲しいものがあるときには欲しいと言わなくちゃだめだろ?」
 欲しいのだろうか、まひろくんも他の子供みたいにぼくを欲しいと思っているのだろうか。じぃっとみつめるだけのまひろくん。わからないけれど、その目はほかの子とは違う。
 膝をついたお父さんに顔を覗き込まれて、まひろくんはうつむいた。しばらくして、ずいぶんしばらくして、まひろくんが言った。
「ぼく、あれがすきだ」
 お父さんは笑った。しょうがないなと言って、そうしてぼくをおもちゃ屋からまひろくんの元へつれてきてくれた。
 はじめてぼくを手にしたまひろくんは、やっぱりぼくをじぃっとみつめて、そして、笑った。
 めったに見ない今となってはまったく見ない、まひろくんの最初の笑顔だった。

 お父さんが出ていって、まひろくんはぼくを見た。ぼくたちは久しぶりに目をあわせた。もう随分こうしていない。その目はまるであの頃と変わらない。じぃっとぼくをみつめていた。
「……」
 そうして、めったに見たことない今となってはまったく見ない忘れてしまいそうだったけれど忘れることないあの時と同じ笑顔で笑った。

 まひろくんはぼくを取り上げると、そっとダンボール箱の中にしまった。



++++++++++
 そもそもはおごりんと電話していて
 「水輝くんはくたっとしたクマのぬいぐるみみたいでかわいい」
 と言ったのが発端です(必殺:人のせい)(つうかこのクマ水輝君だったのかよ!)。
 でも電話しながら平行稼動で漏れたものはもっとエグい話でした(だって麻エロ君だし)。なのでちょっとかわいくしてみました(成功しているかはさておき)
 ついでに言うと私の中での立樹×水輝/麻尋×水輝のイメージは「北風と太陽」なんですね。太陽の暖かさと大きな優しさで孤独で頑なな旅人・水輝の心を開くしぃちゃんと、北風の苛烈さと熾烈さで無理矢理水輝の(以下略)(略すような話なのか!これで!この流れで!)


 じぶんでも困惑するぐらい星組88期(つうか麻尋・水輝)にゆがんだ思い入れが始まってしまっています(世界の全てに迷惑です)。しかしあれですね、もう下級生は87期(どいちゃん)で打ち止め!って思っていたんですが……どんどん若い方若い方へ行く自分……。いや待てよ?私が若い方にいくんじゃなくて、彼らもまた確実に成長してきているって事ですよね?なんだ、俺許されてる!(えー?)



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