2007年01月02日(火)
菊泉(北埼玉地酒紀行)


 あけましておめでとうございます。


 例年通り帰省しております。「やっぱりうちは酒飲みの家系なんじゃないか?」という事にうちの墓地の近くある『○○(むっさんの苗字)酒店』(もちろん親戚がやってます)を見て気づきましたいまさらですが。

 2007年、厄年ですが大殺界を抜けたようです。って大殺界の時はまったく意識していなかったんですがね(ダメじゃん)。ちなみに金星人(−)でした(これも初めて調べたよ)。
 今年の目標は「シンプル」です。なんつーかね、もうよけないものを抱え込みすぎているような気がしまして。シンプルというかきちんと、かなぁ。まあ一番抱え込んでいるのは脂肪だと思うので(頭抱)……身軽になりたいです、いろいろと。
【六実家ショートコント】
 芸能人格付け番組を見ながら「どうして肉や魚は脂肪が多いと高級なのに六実(仮名)は高級じゃないの?」と母親に言ったら「あんたは食べられないでしょ」と一蹴されました(むっさんちが漫才母子なのはわりとゆうめい)

 そんな感じで。今年もよろしくお願いいたします。




 じゃあ、2日なので書初めをしたいと思います。


 SSの(そっちか!)。




[愛するには短すぎる劇場](別名SSするにはいまさら過ぎる)


 夕陽の照り映える海原を船がゆく。
 デッキの手摺で、轍のようにひかれてゆく船尾の水泡の帯を眺めていた。
「よう」
「……ああ」
 見知った顔に笑って返す。どういう関係かと問われれば「仕事仲間」とでも言えばいいのだろうか。
 ショーダンサーである彼らは、航海の度に船と契約を結んでいるだけで、チームを組んでいる訳ではない。しかし、何度も何度も同じ船に乗り合わせているお互いが、結構気が合うことも知っていたし、実際船に乗っている間は「親友」と言ってもいいだろう。けれども船を降りればお互いにお互いの世界を知らない。「また一緒に仕事できるといいな」と毎度交わす言葉は社交辞令ではなく本心で。そんな近くて親しくて、遠い間柄だった。
 ビリーは、また水面の白い泡に目線を落としたデイモンの横顔をじっと見つめた。デイモンが気づいて「なんだよ」とまた笑った。
 ビリーは言った。
「この航海で、最後なんだって?」
 船を降りた後の互いの話をするのは初めてかもしれない。デイモンはどこから聞いたんだか、と笑ってから、ああと短く答えた。そして何で、と聞かれる前に答えた。他の奴なら別に答えはしないだろうけれど、相手がビリーだから、彼が聞きたいだろうから答えた。否、彼自身が話したかったかもしれない。
「俺さ、ダンスが好きなんだよ」
 ビリーが知っているというように頷く。
「でもさ、いつまでもこうしてはいられないよな?いつまでも同じように足は上がらないし、同じように踊れはしないから」
「……お前、幾つだよ?」
 もちろん歳は知っている。歳の割には落ち着いているといつも思っていた。が、ビリーはそれを撤回した。落ち着いているっていうか老成だ。
「じじむさいなー」
「まあね」
「俺、ほめてない」
「そっか」
 デイモンがまた笑った。そして続ける。
「でも俺はずっと踊っていたいと思うんだ。きっとじぃさんになってもおんなじように踊りたいって思うんだ、でもそんなの無理だから」
「だから?」
「一生、踊っていたいと、踊れなくてもどこか踊りにつながった仕事がしたい。今度船を降りたら、小さなスタジオでインストラクターをやるんだ」
「教えるほうにまわるのか」
「うん。そしたらじぃさんになっても、踊ることに俺は繋がっていられるから」
 向いているかもしれないな、とビリーは思った。いつかのあの盗難事件の時、デイモンは犯人捜査協力と称した、老人向けのエクササイズの指導をした。以来あれが好評で、ウェンズワース船長の船に乗るときは、いつもその仕事を頼まれていた。これっぽっちの謝礼なんだぜ?と言いながらデイモンはまんざらじゃない顔をして、むしろ楽しそうにその仕事をしていた。
 ビリーはその横顔をまた見つめた。
「えらいな」
「えらくないよ、別に」
「こんどはほめているんだから、ちゃんと聞けよ」
「そっか」
 そんな風に自分自身の未来を考えているデイモンをビリーは素直に「えらい」と思ったのだ。けれども早すぎるとも思った。だって、俺達はまだ老いるには早すぎるじゃないか。それを口にすると、デイモンの決意を引き止めることになるからビリーは敢えて口にはしなかった。それを口にすると、彼との別れを惜しんでいる自分に気づいてしまうから、ビリーは敢えて口にしなかった。だから、ひとこと「えらいな」とだけ言った。
 えらく早すぎはしないか、
 えらく寂しくなってしまうのではないのか自分は、
 それでもお前は決めてしまったのだな
「お前もそろそろ考えろよ?お前だっていつまでも若くてピチピチで船の若いスタッフにきゃあきゃあ言われて謂れのない恋の鞘当に巻き込まれてお金持ちの有閑マダムに今夜あたしの部屋にきてちょうだいってチップを渡されたり屈強なそっち趣味の水兵のお兄さんに言い寄られたりするわけじゃないんだからな」
「お前、今、余計なこと沢山言ってないか?」
「まあまあ。ま、結局は俺達も変わっていくって事なんだよ。月日は流れて歳はとる。この船に乗るお客はいつも違うし、あの水面の白い泡だって戻っても同じ泡じゃないんだ」
 変わらないものなど、何もないのだから。そうデイモンは締めくくった。その顔が少しさびしそうに見えたのは気のせいだろうか。「変わらないものなどない」と言うものよりも早く、変わろうとしていくデイモンが、少しだけさびしそうに見えたのは気のせいだろうか。
 ビリーはそれに反論した。唯一それだけには反論した。
「変わらないよ」
「え?」
「だって、お前がお前であることも、俺が俺であることも、変わらないじゃないか」
 はっと、デイモンが顔を上げた。夕陽に照らされた顔が驚いた風で、けれどもその顔から、ビリーが感じていたさびしさが、すっと消えた。
「そっか」
 デイモンがまたうつむき、目線を白い泡に戻した。そこに見えるものは、目に映るものは今見たものと同じものではないけれど、
「そっか」
 きっと顔を上げて、沈む夕陽に目をやった。そこに見えるものは、目に映るものは変わり行く移り行くものだけれど、
 ビリーはデイモンの肩に手を置いた。そしてデイモンと同じように沈む夕陽を見た。夕陽はゆっくりと、水平線に沈んでゆき、残されたオレンジの空を吸い込むようにして、夜の帳をおろしていった。


++++++++++
(隊長!ここにみらゆか者が隠れていました!)(隠れていたも何も)
 船、というのは旅立ちの記号でもあるし、新年にもふさわしいよな、と冬コミ帰りに水上バス乗りながら思った次第です(無理やりこじつけたとも言う)(笑)。




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