2004年09月19日(日)
くすり指にはゆるすぎて


 週末の日比谷界隈はイベント尽くしだった模様です。
 日比谷公園でアジアンフェスティバル(ベリーダンスって男の人も踊るんだー、へー)。国際フォーラムで東京骨董市(私が通りかかったときはもう終わってました)。
 で、もうひとつ日比谷界隈でやっていたイベントコトバメッセを見てきました。「明日日比谷に行くなら」とロムっ娘ちゃんが薦めてくれました。きっとむっさんこういうの好きだろうなあと思われたんでしょうね、ええ、大正解ですよ(笑)。情報ありがとうございました。面白かったです。


 東宝日生ダブルヘッダーでした。
 さくさく感想いきます。(追記:実際書いたらぜんぜんさくさくしてません)(最高に迷宮入り)

[飛鳥夕映え:総評]

 私的には面白かったです。地味だけれど、派手じゃないけれど(それ意味同じ)面白い。
 なんというか「その時歴史が動いた」なんですよね、この作品。載るなら国語の本じゃなくて歴史の本。淡々と事実を解説していく物語。
 すごく面白いな、と思ったのが物語が動く上での視点。冒頭に結末があって「実はこうこうこうでしたからこうなった」、でまた冒頭の場面に戻って、その後に後日談や本当のラストが続いたり。よくあるパターンです。で、同じパターンの「あかねさす〜」の場合、物語の視点は物語と一緒に動いていきます。でも「飛鳥〜」の場合、物語は過去に動いても、その視点は最初から最後まで大化の改新にあるような気がします。定点観測というか。伝わりにくくてすみません、でもそれがすごく新鮮だったし、それゆえに物語としては弱くなっちゃうのかなぁと。波がすごく少ないんです。多分渦中にいる人物たちにとっては波乱万丈な物語なのですが、大化の改新に視点があるから、そこからみたら結局すべてが過去であるわけです。それこそそういう運命、流れだったのかもしれない。同じような事を軽皇子が最後に言いますが、まさしくそういう視点でこの舞台は作られているのかな、と。あと、主人公二人が賢しくあるが故に、少しだけ未来が見えている(三韓の使者を迎える儀に対して悪い予感を覚えている辺りが)。それもまた私が定点観測と感じた所以かなぁと。

 すんごいさっぱりな内容だなぁ。


[飛鳥夕映え:役替わりの話]

 とはいえ、私の月組観劇は今回一回のみです(寂)。補足までに本日は鎌足=カッさん、軽皇子=瀬奈君、石川麻呂=ゆうひさんです。
 で、今回の役替わりが出たとき、とりあえず実質二番手は鎌足でそれを三人でわけあうんだな、と思っていたのですが、出番は多いものの鎌足がそこまでおいしい役とは思いませんでした。実は私、一番オイシイのは軽皇子だと思ったんですが(えー?)。あの役は「傍観者」になりうる役なんですよ、それゆえに「定点観測」な物語ではサーバー管理者の位置にいるというか、スーパーバイザーというか(わかんないよ)。あるいは瀬奈君の軽皇子が良かったからそう思ったのかもしれませんが(素)。
 瀬奈君の軽皇子は良かったなぁ……あの達観したところというか実はこのひとすべてを見通しているんじゃないかと思わせるところが。小足媛と石川麻呂の情事にも気付いていたんじゃないのかなぁ。酔った石川麻呂を介抱する小足媛、そこに出てきた軽皇子が「さあ」という風に小足媛に手を差し伸べるんですが、そのすっとした佇まいが何もかも納得ずくにみえて、なんというか萌えられました(その言葉でまとめるのですか)。瀬奈君上手くなったなぁというか、こういう味を出せるようになったんだなぁと素で感心しました。
 一回しか観られないなら是非実質二番手の鎌足がカッさんの日に、と思っていたのですが(リスペクト貴城けい)、思ったほどのカタルシスは得られませんでした(そんなものを求めないで下さい)。前述の話を踏まえて「ああ、カッさんの軽皇子が見たい!」って思ってしまったり。カッさんの鎌足は「悪」ではなくて「悪役」という印象でした。過不足無く、「悪役」。脚本的に鎌足のパーソナリティってあんまり書き込まれていないように思えたんですよ、物語を動かす上での「悪役」、主人公の対極にいるもの。カッさんはかなり脚本に忠実に演じたと思います。でももうちょっと含めたり丸めたりできたような気がします。物語における役割は十分果たしているとは思いますが。と、そんな事を言いつつも、大化の改新で「鞍作が落とした槍を(拾えないように)踏みにじる鎌足」に震え、「公衆の面前で歌い踊る恥辱プレイを真剣にやる鎌足」に腹を抱え、「女(生駒)を利用するだけ利用していそうな鎌足(多分、本当には手を出していないと思う)(素)」に萌え……ごめん、むっさんカッさんダイスキだからな!
 ゆうひさんの石川麻呂。石川麻呂は出番こそ少ないですが、すごくやりがいがあるだろうなぁと思って見ていました。ねっとりとしたラブシーンはあるし、あと「弱い男」「卑屈な男」「負けた男」を演じるのは演じようによっては非常にオイシイと思っています。

 で、この物語。本当はこの3人が対等に書かれた方が面白かったんじゃないのかなぁと。鞍作というある時代の権力を取り巻いていた者達の物語。「我々はよい友人を持った」これは3人が対等の方が生きてくるような。 唐突に。
 「大化の改新」に向かって物語が収束していく部分で、なんとなく昔砂場でやった棒倒し(砂山のてっぺんに棒を立てて、順番に砂山の砂を掻きとっていって、棒を倒したものが負け)を思い出したんですよ(何故に)。棒が倒れることはすなわち失脚。以下たとえ話。
 飛鳥夕映え幼稚園のお庭ではくらつくりくん達が棒倒しで遊んでいて、ずる賢いかまたりくんは、くらつくりくんを負けさせたいので隣のいしかわまろくんに「あいつのばんでぼうがたおれるようにすなをとれよ、そしたらこのあいだのおねしょのことだまっていてやるかさ」唆し、かるのみこくんのお弁当にこっそり何か入れて、トイレに行ったきり戻って来れないようにして。でも賢いくらつくりくんはそれを見越して、ちゃんと自分の番で倒れないように「これぐらいならだいじょうぶ」と砂をかき取る。ところがくらつくりくんの番の前にからつくんがごっそり砂をかきとっていたものだから、くらつくりくんのときに棒は倒れてしまいました。【完】
 なんというか歴史と言うものは、そういうちょっとしためぐりわせ、誰かがちょっと砂を掻き取る量を間違えるだけで、自分の、あるいは誰かの歴史が大きく変わってしまうものだと、そういう事を感じさせられた物語だったんです。その砂山での棒倒しに参加する以上は対等。だからこの3人が対等に書かれていたら面白かったかなと思ったわけです。
 うまくいえないのですがその砂山棒倒し合戦に、この物語の面白みを感じました。


[飛鳥夕映え:鞍作の話]

 と言う訳で、鞍作。大化の改新で誅された悪役としての蘇我入鹿(鞍作)、その歴史の視点を変えて鞍作をヒーローとした物語、なんだと思っていましたが、鞍作が主人公と言うかヒーローとか正義とか、そういう感じではなかったです。単に「鞍作の側から見た大化の改新」というだけのような。
 歴史には正義も悪もない、ただ権力を持ったものが正義と判断されたり、後世に正義と判断されたり……何言っているんだ?(素)いや「鞍作賛歌(作詞:小林公平)」にはならなかったんだなぁと。そこがすごく面白かったです。新人物往来社風味に(もうさっぱりわかんない)。


 それはさておき。
 今回思ったことなのですが、アヤキさんの男役の重心は低いんだなぁと。ものすごく地に足がついた感じ、それが随分頼もしく思えました。いや、歌がアレだったり踊りがアレだったりするのは重々承知なのですが、男役としてのスタンスはいいと思います。いや、私アヤキさん全肯定なんで(いや皆知っているから)。ちなみに芝居については「やくしゃ」とは思いませんが、自分だけのものを演じることが出来ていると思います。


[飛鳥夕映え:その他メモ]

・ぶっちゃけ鞍作×皇極帝のエピソードって必要だったのかなぁ。いや、鎌足が鞍作を失脚させる為の道具(のひとつ)として使うのは納得できるのですが、それよりもゆらさんの嫉妬演技の方が印象に残っちゃって(笑)、なんだかそんなものの為に鞍作は追い込まれたのか、「それだけの女を愛したのかあなたは」とは思っちゃったりして。けれども「そんなもの」で変わるから、それを歴史というのかもしれない(はい?)。
・どうして楠先輩はあんなにニールキャラが似合うの?(無垢)
・ちずさんの小足媛は私はアリです。熟女(実際はどうなんだ?)に溺れてゆくリアルさというか。
・でも瀬奈君エリザの前に既に月娘モチベーション低下の要因があるじゃないですか!(ゆらさんちずさんの今回の配役)と思ったのはナイショ。
・るいるいはハンターモードが一番輝いている(真顔)。
・冒頭の「俺の青春をどこにむけよう(うろおぼえ)」で踊る時、手を目の前に印を切るようにして踊るじゃないですか、あれがすごくカッコいい。あと鞍作のガッツポーズと言うか、手をぐーにして、力拳を作るように腕をまげるやつとかも。「花の業平」でも、最後の銀橋でぐっと手を交差させる形をとるじゃないですか、もしかしたらこれってそれぞれ何か意味があるのかなぁと。
・自分の仕事だと思うのでツッコんでおきます。学校に遅れてくる鎌足、ジョバンニですやん!


 ……管轄外のくせになんですかこのマシンガンぶりは(ゲンナリ)。
 ショーの話は後日。ですがこれだけは今日言い残していきたい。


[雛鳥物語]

 えみくらの瑪瑙は可愛くて、賢くて、元気で、何度となくでれでれしてました。
 これで最後だなんて本当にもったいなぁ。
 ところで今回の歌詞の中で「あの雲の彼方へ飛んでいきたい」と、えみくらが羽ばたくような振り付けを何度かするじゃないですか、あそこで「私がかつて紫吹さんの退団公演のフィナーレで言った事」に自分の中でどんぴしゃりと繋がってしまいました。
 以下自己引用。
 
>フィナーレで、アヤキさん達を従えて(違、わないか)踊るエミクラが本当に綺麗で立派で、ウッカリ「くらら、もうひとりではばたけるよ」と聞こえてきて(幻聴)。その後に紫吹さんと踊る時に、互いに向き合って両手をはばたかせるような振りをする所でウッカリ「むかしこうしてあなたにはばたきかたをおしえましたね」と聞こえてきて(さらに幻聴)


 というわけで雛鳥物語。
 えみくらという雛鳥をもらってきて育ててきた紫吹さん、優しく時には厳しく愛情持って育て、最初は飛べなかった雛鳥も、籠の中でなら(短い距離なら)飛べるようになり、そのうち、部屋の中へ離しても自由自在に飛べるようになった。不思議と窓を開けても外へ出て行かない。雛鳥はご主人様の庇護の元、はばたき続けた。
 けれどもある日、ご主人様は部屋を出て行ってしまった。代わりに入ってきた新しいご主人様・アヤキさん。アヤキさんはこんなに飛べるのだから、とある日えみくらを外へと連れてゆく。えみくらは更に遠くまで飛べるようになった、けれどもちゃんと戻ってくる。えみくらは新しいご主人様も大好きなのだ。けれども一度外へ出てしまったえみくらは、もう自分がどこまでも飛び立てる事に気付いてしまった。ご主人さまはもう部屋にも籠にもえみくらを戻さない。ああ、あの小山の向こうには何があるのかしら?あたし、飛んでゆけるのかしら?そんなえみくらにご主人様は「そのときが来たらいっていいんだよ?」と優しく言ってくれた。
 前のご主人様には飛ぶ力をもらった、そして新しいご主人様には飛び立つ力をもらった、今、えみくら巣立ちの時。




 …………(むっさん自分で思いついてちょっと泣いたらしいよ?)(つうかそんな妄想しないでください)(でもそう見えたんだもん)

 ひなどりよ、あなたのはばたく先に、幸あれ。



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