小説・物書きさんの作品v


あなたにあえないことがこんなにも

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2006年05月18日(木) そして・・・光の指し示す場所へ・・・2/月代 リン

「坊ちゃん!!」
宿屋からグレミオが何か包みを持って直ぐ近くに在る。釣堀に遣って来ると、釣り糸を垂らしたティルの姿があった。
「坊ちゃん!」
グレミオがティルの名を呼ぶが心ここにあらず・・・何かを考え込んでいる瞳・・・とても・・・悲しそうな・・・
「・・・・・坊ちゃん・・・・・・」
グレミオは知っている。赤月帝国を解放後二人はそっと姿を消した。
それはティルの配慮でもあった・・・ティルの右手に宿るのは魂を食らう紋章『ソウルイーター』それが又、誰かの命を食らってしまうのを酷く怯えていたから・・・
「・・あっ・・・グレミオ・・・」
ティルはグレミオに気付き、取り繕うと笑顔を見せた、グレミオはそれを十分知りつつも何も言わずに微笑。
「・・・お腹すきませんか?お弁当たべましょうか。宿屋のエリちゃんのお手製ですよ!!」
グレミオの優しさにティルは嬉しくなる・・・何も聞かずにただ傍にいてくれるグレミオ・・・失わずに済んだ命・・・
ふっと、脳裏を過ぎるのはあの時、矢を受けて炎の中に消えていったフリックの事・・・
《・・・早く行け!!!》
そう告げて消えて行ったフリック・・・最後に見たのは笑顔に溢れたフリックの笑顔だった。
《・・・生きていて・・・》
あの日から3年の月日が流れて、旅を続けて来たティル達、それでもフリック達の話は聞く事も無く・・・生きているのか、それともあのまま・・・
「!!!!!!!!!!!!!!」
ティルは自分の中の不安を消し去る様に大きく首を振った。
そして、笑顔でグレミオを見つめた。
「僕もお腹が空いてた所だったんだ。エリの料理は美味しいから」
グレミオにはティルの全てが見えている・・・ティルが幼かった日々からずっとティルを見ているのだ・・・ティルの心の中の不安さえも簡単に気付いてしまう。
《・・・坊ちゃん、貴方が此処に滞在して既に、一ヶ月・・・・・・私は知っていますよ・・・今、ハイランドと都市同盟が戦争をしていますから・・・少しでも彼の情報を求めてるのではありませんか?・・・もしかしたら其処にいるかもしれないと・・・》
「では、頂きましょうか・・・」
グレミオは包みを広げて釣堀で二人で、とめどない話をして楽しく食事をした。
「じゃあ、かたずけてきますね」
食事を終えたグレミオとティル。グレミオが釣堀を離れて行く姿を見送りながらティルは苦微笑した。
《・・・グレミオには隠し事は出来ないね・・・》
グレミオは自分の考えている事を解っていて、それでもただ黙って傍に居てくれる。
《・・・・・・・・・・・》
あの日、あの炎の中で消えたフリックの顔が今も脳裏から離れる事はない・・・凛とし・・・その青い強い瞳が美しくて・・・ティルは痛む胸を押さえた。
フリックの、あの真っ直ぐで、前だけを見て進む姿がティルには何時しか・・・眩しかった存在・・・皆が自分をリーダーとして扱い、何処か遠ざけている中で唯一、自分を十五歳で扱ってくれた。
何の迷いも無く何の邪念も無く・・・自分を包んでくれる暖かな存在
まるで全てを包む太陽の様な暖かさ・・・
何時からだったろう・・・こんな気持ちに成る様になったのは・・・
ティルは苦微笑する、きっとビクトールと共に今も何処かで当てのない気ままな旅をしているだろう・・・
《・・・あの戦いはもう過去の話になっているかもしれない・・・》
フリックにとって、あの戦いは過去で、自分の事だってそれほど大した事じゃないかもしれない・・・そうだったとしても・・・
多くの大切な人達を失ったあの時も・・・彼は・・・強く自分の中の大きな支えになっていたのは真実・・・
《・・・・・・・・》
ティルは自分の中で溢れてくる邪念を必死で押さえつけると再び釣堀で釣り糸を垂らすと、バナーの村の宿屋の方が騒がしくなった。
「・・・何か・・・あったのかな・・・」
 その時、ティルの元へ歩み寄る足音。ティルがその存在に気付いて視線を向けると、まだ十代と思われる黒髪の少年が立ち尽くしていた。その少年はティルを見つめて頬を紅潮させ、その無垢な瞳は輝き、全身で憧れをティルに向けている。
「・・・・・・・・・・」
ティルは、目を細める。ティルには直ぐに解ってしまう・・・少年は紋章を持っている事を・・・そして全てを理解する。
《・・・彼が・・・》
ハイランドと、都市同盟の戦いは此処に居ても耳には入ってくるし、その中心に立つのが『リオウ』と呼ばれる少年だと言う事も。
《・・・同じ・・・道を歩む者・・・》
彼はきっと全ての人々の希望なのだろう・・・そして彼も又、正しいと信じて疑わない道を歩いているのだ。
「・・・あっ・・・あの・・・」
リオウは、言葉に詰まりながらティルに声を掛けようとするが旨く行かない・・・緊張していている自分がいる。
《・・・あの『英雄』のティルさんだ・・・》
キャロの街でも、『門の紋章戦争』は話題だった、勿論、リオウも
そのリーダーだったティルに憧れていた。ビクトールや、フリックはそのティルと共に戦っていたのでいろんな話をしてくれてますますリオウの中でティルは神格化されていったのだ。そのティルが今自分の目の前に居る・・・漆黒の髪が風に靡き、その漆黒の瞳は全てを見通すかの様な・・・リオウの思い描いていたティルがいた。
《・・・やっぱり・・・凄い人だな・・・》
その存在感、そのカリスマ性、其処にいるだけで神々しくて足が
震えて動かない。
「おいっ!!リオウ」
突然、村で姿を消したリオウを探して、リオウに付いて来ていたフリックは他の仲間達と別れてリオウを探していた。
「・・・突然姿消しやがって、心配するだろうが・・・」
フリックが、リオウに告げて安心したのか大きくため息を吐く。
「・・・ルカブライトが倒れたっても、まだまだ安心出来ないんだぞ・・・何時、残党にお前が襲われるか解らないんだから・・・」
「・・・でも・・・」
「・・・でもじゃないぞ!!お前に何かあったらシュウに怒られるだけじゃすまないんだぞ!!!」
「・・・でも・・・」
「・・・でもでもって・・・お前はリーダーと言う資格を・・・」
「・・・フリック・・・」
「!!!!!!!!!!!」
その言葉に、フリックは自分の耳を疑う、ありえない幻聴までも聞こえる様になってしまった。
《俺もそろそろ重症だな・・・アイツの声が聞こえるなんて・・・》
「・・・フリック・・・」
「!!!!!!!!!!!」
再び聞こえて来る声にフリックは視線を移して目を見開いた。
《・・・まさか・・・》
その人が居る・・・釣堀で釣りをしている・・・あれ程・・・会いたかった・・・あの頃のままで・・・その人は自分を見ていた。
「・・・ティル・・・」
会えたら何から話せばいいかとか、ビクトールと渡った砂漠は大変だった時の愚痴でも聞いてもらうかとか、きっと怒っているだろうかとか、今は都市同盟軍で戦っている話とかしたい・・・そんな事は、いざとなると何も出てきはしない。
「・・・・・・・・・・」
それは、ティルとて同じで、会えたらまず一発殴らなきゃ済まないとか、旅の話とか、フリックは何をして生きてきたのかとか・・・
沢山あったはすだったけれど・・・何も言葉にならないでいる。
その上、3年の月日の過ぎたフリックはあの頃よりも逞しく、凛としていてティルの胸が自然に高鳴った。
「あっ!!!いたいた!!!フリックさん!!!」
ナナミを筆頭に、カスミ、マイクロトフが釣堀に遣って来た。
「心配したんだよ!!リオウは・・・」
「・・・ごめん・・・でも・・・」
リオウが視線を釣堀に戻すと少年が立ち尽くす。カスミはその姿に頬を赤く染めた。
「・・・ティル様!!」
「えっ・・・ティルって・・・カスミさんそれってあの英雄の・・」
ナナミは目を見開く。
「・・・えっ・・・えええ!!!」
ナナミはあの英雄の登場に胸をときめかせると再びティルを見つめるが視線が別を見ている。ナナミが視線を追うとそれはフリックを見ていた。もちろんフリックもティルを見つめている。

ふたりは、少しの間ただ見つめ合うだけだった・・・それは3年の月日を埋めているようでもあったが・・・
「・・・・・・・・・・・」
フリックは自然に体が動いていた。その青いマントを翻して足早に釣堀で立ち尽くしているティルの元へ向かった。
《・・・会いたかった・・・》
ティルの直ぐ目の前まで歩いてくるとティルはその漆黒の瞳でフリックを見上げている。フリックの中に溢れる想い、フリックはそっとティルを優しくその腕に包み込んだ。

                                  <続く>


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