小説・物書きさんの作品v


あなたにあえないことがこんなにも

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2004年02月14日(土) 嫉妬も出来ない僕ですが。/水月冬華

嫉妬も出来ない僕ですが。



「フリックは甘い物苦手らしいし、いらないでしょ?」


真っ青な顔で制止しようとしたフリックの目の前で苦笑い気味に微笑んで、僕はカリリと茶色の固まりを噛み砕く。
馬鹿だよね、苦手なの知らないでこんなの用意して。
自分の愚かさに溜息が出そうなのは意地で抑えこんで、ついさっき噛み砕いた物と一緒に飲み込んだ。

2人で食べるつもりで作った箱の中身の量を思うと少し気が重い。

(僕も甘い物ってそう好きでもないんだけど。)


幾ら自分の作った物と言っても、捨ててしまうのは悲しい。
だからと言って、彼の為に用意した物を

他の誰かにあげるのは嫌だから。



(気付かなかった僕も僕だけどさ…)

3年前はそんな事に気付ける程余裕がなかったのだから仕方ない。
そう思うのは言い訳かな。
『恋人』になって初めての春、その恋人の好みを他者から知ったのは余りにも痛い。

言われてみれば珈琲を飲む時に砂糖を入れてなかったような気もする。


ぼんやりそんな事を考えながら唯機械的に箱の中身を口に放り込み、噛み砕き、飲み下す。
半ば自棄になっていて味も何もあったものじゃないけど、自分の失敗は自分で始末つけないとね。
最後の一つを取った手を掴まれてフリックがまだそこにいた事を思い出した。
見上げたフリックの顔は思いの外険しかった。
けれど解放軍のリーダーをやっていた頃の名残なのか、僕は自然と作り笑いを浮かべていた。

「どうしたの?」
「『どうした』じゃない。…誰が何時、いらないって言ったんだ。」

『でも『苦手』なのは事実でしょう?』
何が可笑しいんだろう。本当は悲しいのに、僕はずっと微笑んでいた。
僕の顔を見ていたフリックが低い声で唸る。
何か言いたいみたいなんだけど、どうも言葉が上手く出てこないみたい。
そうして僕の手首を掴んだ手と反対の手でガリガリと頭を掻いて、ぽつりと呟いた。

「確かに苦手だけどな?……………セイが、好きなヤツが『俺の為に』作ってくれたのは食いたいんだよ。」

その言葉を反芻して、僕は手に持っている物を見つめる。
最後の一つになってしまったチョコレートと、フリックの顔を見比べる。
流石に自分の言った台詞が恥ずかしかったのか、憮然とした表情を浮かべているフリックの顔はほんの少し赤かった。

(『好きなヤツが…』…かぁ…)

もっと早く聞けば良かった。
そうしたら要らない意地張ったりしなくて済んだのに。
そう思ったら不意にこの感情の正体に気が付いた。
あぁ、相変わらず僕は自分自身の感情に鈍いらしい。
幾らこの状況に到った責任の一端がフリックにあるとしても、ちょっと可哀想な事をしてしまったかもしれないなぁ…と思う。

色々考えた末に、ある事が思いついた。
実行に移した時のフリックを想像してクスッと小さく笑って僕は『手、痛いから離してくれる?』と首を傾げてみた。
慌ててフリックが掴んだ手を離すとすぐ、僕は最後の一つを口に放り込んだ。
そうして、驚いて目を大きく開いたフリックが叫びかけたのを遮って、首に腕を廻してキスをした。

開いていた唇から口移しでチョコレートを贈る。
恥ずかしいけど、ほんの少しだけお詫びも込めて。

僕の意図に気付いたのか、いつの間にか後頭部を押さえられて舌を絡め取られる。
絡んだ舌の上で最後のチョコは甘く溶けて…


「Happy Valentine…」


吐息混じりの言葉は届いたかな。
もう一度降りてくる口付けの合間に、僕はフッとそう思った。



上手に嫉妬も出来ない僕ですが。

― 貴方を好きでも…良いですか? ―




コメント>>

1ヶ月(+α)遅れですが、バレンタイン話です。
しかもこっそり参加な辺りが実に私らしい(苦笑)

1日で『思い立ったが仏滅!(…)』な勢い書いたので短い上にタイトルで苦しみました。
自棄起こして『イトシイベイベー』とか付けちゃろうかと思ったのは秘密の方向で。

久々に書いたにしては甘くなりました。………なってますよね?(滝汗)

こうやって書いてみると…やっぱり幻水への愛が冷めてる訳ではないようで。
………冷めてる訳じゃないのは自覚があるんだ、
唯、某ジャンルへの愛がそれを上回ってるだけなんだ…うん(遠)


2004/03/某日 水月 冬華

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