★加納朋子。 『ささらさや』

待ちかねた、加納さんの新刊。
どこでも評判は上々だったが、期待を裏切らない。
ハードカバーの装丁が実に良いから、文庫待つよというひとにも
ぜひ見るだけみて欲しいと思う。
その絵が、このお話そのものだ。
だんだん主人公の回りになんだかんだと人が増えていき、
そのなんだかんだを繰り返しながら、すこうしずつ母の顔になって
いくサヤ。
婆ちゃんたちとエリカさんの掛け合いは、実に楽しい。
そして、それぞれが抱える「痛いところ」は、実に・・・・切ない。
サヤの、夫への思いも。

ワタシが少し昔に体験した、赤ちゃんの母というのを思い起こす。
そう、母親に成り立ての頃は、そんな風に強迫観念にかられ、
あるいは育児雑誌に振り回され、出口のないかのように思える
毎日に疲れ果てているものなのだ。
しかし、今懐かしく思う・・・・あの頃は見えなかったことが、
今なら見える。
守るべきものを得たら、ひとは少しずつでもそのために強くなれ
るのだから。
ユウスケの起こす最後の魔法をサヤが見るときの涙は、それまでの
涙とはきっと違うにちがいない。

急に、顔を見たくなった。
2001年11月16日(金)
By ちゃいむ

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