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コノハナ【MAILHOME

設定資料集買ってきた
2004年04月25日(日)

というわけで先日お知らせしました通り、アニメの設定資料集こと『エリア88コンプリートブック』(メディアファクトリー刊)を購入してまいりました。\2000の散財です。これでまた日本に帰るのが遅くなっちまう。(購入したのは1週間ほど前)

内容は
・ひみつきちエリア88ちず
・トンデモ機体解説
・ニセモノ人物解析
・デタラメTVストーリー解析
・シンジョーズレポート
・アスランの内乱解説
・本音チラリ声優座談会
・戦犯今掛監督インタビュー
・新谷かおる原画(ポエムつき)ギャラリー
・その他、いろんな役に立つ解説たくさんetc

です。
この表現で、コイツやべぇ…こいつ原作信者だ。
いや信者なんてもんじゃねぇ、コイツは

原作原理主義だ

と感じた人は、直ちに離脱しましょう。
それではまずは監督インタビューからいってみましょう。
私は出来上がったフィルムがすべてと思っているので、通常は後だしのインタビューなどは気に留めなかったりするのですが、今回はあんまりあんまりな改変ぶりに、どんな意図があってのことか疑問に思うことしきりだったので、ちょっと見てみたいと思います。
さあ、久しぶりにいくぞ。みんな衝撃に備えろー。

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〔引用・エリア88コンプリートブック〜アニメ設定資料集〜/メディアファクトリー 監督インタビュー今掛勇氏 p108-109〕

――まずは、『エリア88』をテレビアニメシリーズとして制作されるにあたって、どのようなテーマを持ってスタートされたんですか?

今掛 9.11の全米同時多発テロや、イラン戦争など、今の世の中では命が軽くなっているような気がするんですよ。そんな時代に「生きるとはどういうことか?」という視点で、物語を描こうと思ったんです。そういったテーマ性を強調するために、テレビシリーズでは、主人公のシンの性格を原作から大きく変えているんです。原作では、傭兵という立場に悩んでいる描写が多いんですが、音声のついうアニメーションでは、いろんな不幸を背負っているシンが、劇中での音としてのセリフでそれを話せば話すほど、そうした不幸や苦悩が軽くなっていくように感じたんです。特に戦争をしていれば、やはり人の生き死にが関わってくるわけですし、そこに強く関わっている主人公が、それに関して心のうちを語るのではなく、新庄や他のキャラクターがシンの気持ちを代弁するような構成にしました。
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あーよかった。全然アニメでシンが傭兵であることに苦しむ様子がなかったんで、本当にこの人エリア読んだことあるの?読解力小学生より低いんじゃないの?もしかして人からあらすじ聞いただけで作ってんじゃネーの?と邪推していたのですが、どうやらちゃんと読んだことがあるらしいです。まずはそれに一安心したいと思います。シンの性格が違っていたのは、原作読んだ上で、意図的に改変したことのようです。

また難しいことをしたもんだな!
あんな表情豊かでモノローグが多いのキャラを無口無愛想無表情な奴にするたぁ、そりゃチャレンジャーなこった!それ、性格変えるところじゃ済まんと思うぞ。

したくもない人殺しをし続けなければならないシンの苦悩する姿に身を焦がした人間が、この4半世紀の間にどれほどいたか、ご存知ありませんこと?ここに一人いましてよ?ホホホ。傭兵であることに葛藤してこそ風間真であって、これがないともう風間真とはいえないと思うのですが。っていうかそんなの風間真じゃネーヨ☆
ここは漫画の第1話から最終話までしつこいぐらいに強調されている箇所である。長い連載期間中には話の雰囲気変わったり、絵柄が変わったりしているが、ここの箇所は最初から最後まで少しも変わらず不変である。というか一番力込めて書いているところじゃないの?わざわざ肝の部分変更してどうする?
無頼あたりと比べると顕著ですが、エリハチは独白が多様されており、少女漫画チックなロマンティシズムがあふれ、特にシンとかサキなんて少女漫画に出てくる女の子からみた理想の王子様像みたいに描かれいているのに。(おかげで作者を女性だと思う人もあとを絶たない。)
その主人公の良くも悪くも一番特徴的なところを変更するとは、いやはや、チャレンジャーなことです。
この変更は単に一キャラクタの性格の変更にすまされず、話の骨格まで変わってくる箇所だと思うのですが、それにしてはえらく気軽に変更したものです。プロジェクト4の皆さん、そのチャレンジャー精神を称えて生卵拍手を送ってやってください。

まあそうはいってもシン自身は気持ちを語らず、新庄にそれを代弁させるというやり方自体は、そう悪くないと思います。風間真ファンとしては寂しい限りですが、その方法自体は悪くないかもしれません。それが意図した通りに新庄や他のキャラを通して表現できたかはさておいて。そういうやり方もあるとは思います。で、そのやり方ですが…

ん?ってことはちょっと待てよ。あの風間も人を殺すことで自分の命が成り立っているってことに苦悩していたってことですか?言葉に出さないだけで、あの風間も苦しんでいたってこと?人の命を糧とする傭兵であることに葛藤していたってこと?ぇええ?

ゴメン、そんな風には全然見えなかったよ!
もう頭おかしくなって、そんなこと気にしていないのかと思っていたよ。

涼子のもとに帰りたがっている、神崎に真相を聞きたがっているってのはわかったよ。何しろ、神崎に涼子取られそうになると解ると、脱走をはかったぐらいだし。88残留が決まったときには、何も言わず、静かにその皮肉な運命を受け入れていたのに、女取られそうになると我慢できなくて、あわてて脱走をはかっていましたから。あれに私は、人殺しは我慢出来るが、女取られるのは我慢出来んって解釈しちゃったよ。ひいては、神崎の野望も、ただ幼馴染の恋人に横恋慕しただけのみみっちいものに思えてしまった。
それに88にUターンしたのも、新庄が涼子さんにシンの生存を伝えてくれるってことをキトリから聞いて脱走を思い留まっていたので、涼子が神崎に取られなきゃそれでいい、だたそれだけにしかみえなかった。

A-88に戻る理由っていうのは、悪魔が生きろといったとか、男通しの約束は命よりも重いとか、主従関係を超えた信頼とか、苦楽を共にした男達との関係とか、まさに“エリア88”の真髄といってもいい見せ場なのに、(何故サキが名無し空母にエリア88とつけたと思っているんだ)なんとその見せ場が、だたの処女信仰が厚いユニコーンが癇癪抑えたものにすり替わってしまったようにしか見えなかったもんな。
例えば最終話一つ前で、シンが150ドル達成して残弾撃ちつくしちゃうところがあるが、原作知っている人からすれば、あれは、これで人を撃たなくていいって気持ちの表れとしてわかるけど、知らない人からみたら、故郷に帰れる嬉しさのあまり、油断して残弾撃ちつくしちゃったとしか見えないんじゃないの?エリアに戻って水もらってうまいって喜んでいるし。
行動原理がことごとくそれに結びつかないんですが。

そして話はそれましたが(ああ、大いにな)そのやり方ですが、シンが台詞として直接話すのがなんだっていうなら、おいおいおいおいポエムがあるじゃないですか、ポエムが。何故これを使おうとしない?エリハチの魅力っていったら粋な台詞でしびれさせ、ポエムで心を取り込むってところじゃありませんこと?
もうウォーレンを出さないあたりで、詩情センスの無さをさらけだしているようなものですが、ウォーレンこそがこの話の語り部であり、弾き語りもすればシンの傍らにいて副官も務める、それこそ狂言まわしだってこなせる人物で、こんなエリハチポエムの象徴的人物を出さなかったことは、大変残念に思うと同時に、作品としての大きな損出だったと言わざるを得ません。

ウォーレンがいないエリア88なんて、リックがいないカサブランカみたいなものだよ。




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