それはまだワタシがOLだった頃、取引先の部長で心にキズを持つ男がいた。 石川部長。当時45歳。 身長155cm、体重46�圓両�さな小さな彼は、節分の日に苦い苦い思い出があった。
彼には2人の子供が居た。 子供たちは毎年石川部長演出による節分の日をそれはもう楽しみにしていた。 彼の演じる鬼、それがなんとも言えない面白さなのだ。 その様子を会社の喫煙所でやって貰ったのだが、ワタシも涙を流し喜んだ。 システム開発という職業柄、残業なしで帰るなどと云うのは皆無であったが、 彼は結婚記念日と子供達の誕生日と節分の日は速攻帰る良きパパであった。 ちなみになぜかクリスマスはいつも遅くまで働いていた。
節分の日の彼は、まずは奥様とご馳走を作り、お面を作り、鬼を演じ、子供達にたくさんの豆をまかせ、そして奥様と共同で後始末を行い、家族で美味しい食事をすると云うのが、毎年の慣わしだったのだが、その年にかぎって奥様が風邪でダウン、そしてどうしても抜けられない会議が長引いてしまい、2時間程の残業になってしまったのだ。 それでも子供達の楽しみにしている様子から、帰宅した彼は1人で節分の準備を始めたのだが、ご馳走作りからお面作り、そして鬼を演じるところまではなんなく終えたものの、どうしても後始末がイヤになってしまった。 彼は今日のために大事にとっておいた越の寒梅が呑みたくて仕方がなかったのだ。
彼は子供達と一緒に先に飯にすることにした。 自分で作った料理の数々に舌づつみを打ちながら、いつもならマッタをかける奥様が寝込んでいることをいいことに、グビグビーっと1升を空けようとしていると、子供達に 「パパ、床に落ちた豆片付けないの?」 と言われて、ようやく重い腰を上げたのだった。
酔った彼は、床に散らばった豆を子供達にホウキで刷かせ一箇所にまとめさせ、あろうことか、 「ここからが本番だ!」 と言って、豆をベランダに向かってまいたのだ。 「鬼はぁー外ぉー!」 と大声を張り上げながら。 マンション暮らしだった彼の子供達は、節分を楽しみながらもご近所に迷惑がかからないような音量で、しかも室内でしか楽しんだことがなく。 父親の狂喜する姿を見て、一緒になって大声で外に豆をまいたという。
そして翌朝、 いつもなら聞こえてこない鳥達の鳴き声で目を覚ました石川家の面々が見たものは、 ベランダに群がる、鳩、鳩、鳩。 そう、3人でまいた豆を餌と勘違いして鳩がやって来たのだ。
その数、ざっと100羽。
それを機に彼と鳩との戦いが始まった。 たった一夜の出来事だったのに、彼の部屋のベランダは鳩屋敷となってしまったのだ。 彼はたくさんの鳩避けグッズを使って対処したものの、鳩は退散するどころが増える一方。 彼が鳩退散グッズにかけた金額は100万近いとか。 しまいには、巣を作り、卵を産み、人間がベランダに出ようとすれば威嚇され。 鼠算式に増えていく鳩によって、ベランダは全く使用できない状態に陥り、両隣の部屋のベランダも同様の被害に陥ることになり。 そうなると鳩だけではなく人間からの苦情、そして嫌がらせにも悩まされ。 結局、購入2年そこそこでこのマンションから逃げるように出て行く羽目になったそうだ。
両隣の住人達がどうなったかは知らないけど、 この年から、石川家に節分の日はなくなったとか。
豆はマメに片付けようね。 おしまい。
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今日もまた最後まで読んで下さってアリガトウ。感謝感激でゴザイマス。ぶりっ。
排泄日記をmy登録されているエンピツ作家の皆様アリガトウございます。
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