フォーリアの日記
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2006年11月30日(木) アーノンクールのモーツアルト

夫が日記に書いているのでダブる面もあるし、
どうも絶賛している人もいるようなので
ここのような検索に引っかかる可能性のある日記には書かないでおこうと思いましたが
やっぱり書きます。

http://www.nhk.or.jp/art/yotei/2006/20061126.html
11月26日のNHK芸術劇場で、アーノンクール指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団演奏で
モーツァルトの交響曲第39番40番41番をやっていました。
その日は半分ぐらい聞き、録画しておいて残りは後で聞いたのですが、正直言ってがっかりです。
皆さん遠慮しているのか、よかったと思っている人の方が多いのか
あまり悪い評判を書いている人がないようなのですが、あえて悪いことも書きます。

ピリオド奏法を取り入れているという話が事前に説明されていました。
今のオーケストラは楽器の響きも編成も大きくなり、どんどん壮大で重厚な音を出す方向に向かってきましたが
作曲された当時のオーケストラのよさを見直し、当時(に近い)の奏法で演奏するというのですが
はっきり言ってどうでもいいです。

もちろん、箱の響きがそのまま感じられるような弦のノンビブラート奏法や、
ある程度なら早めのアンダンテもそれなりに味があります。
でも奏法など単なる形の問題であって、音楽は人の心です。
現代の奏法で数多な指揮者が振っていて、その中にいい演奏もよくない演奏もあるように、
ピリオド奏法で演奏したって、いい演奏もよくない演奏もあるでしょう。
ピリオド奏法をすれば誰が振っても魔法のようにいい演奏になるわけではありません。
逆にいえば取り入れている指揮者が少なければ当たりも少ないかもしれません。

どんなに通常聞きなれた解釈と違っていたって、それが心地よいものなら受け入れられます。
でも、楽団員が納得せず、つまらないと思って弾いていたら
何も面白くない音楽にしかなりません。

さて、そのモーツァルトの演奏の話に戻ります。
と言いながらすぐに余談ですが、私はオーケストラで39番を演奏したことがあります。
(本番でその曲の最中に楽器が壊れて、個人的にはさんざんでした。)
昔のことでかなり忘れていますが、聞いていると確かに思い出してきました。

どの曲も1楽章の比較的テンポ良く行く部分の出だしはいいのですが、
各楽器がソロやソリで歌うべきところで妙にテンポが遅くなったり、
(本来なら全体のテンポは緩めずに、ソロやソリが少し遅めにたっぷり歌っているのを聞かせるべきだと思います。)
フレーズの頭に入る前にテンポを大幅に緩めて「ため」を作り、
すでにずいぶん重くなっていた曲の流れを止めています。
その後フレーズの頭でテンポを戻そうとしているようですが戻らず、バラバラになってしまいます。
それ以後は妙に重くなって聞いていられなくなります。
どの曲も1楽章はその傾向がありましたが、39番40番は特に感じました。
41番の1楽章にはこの「ため」は少なく、割と流れていたように思いました。

下手な学生オーケストラではない、天下のウィーンフィルがこれほどバラバラになってしまうのは
各楽団員がそのテンポに音楽的な納得の行かなさを抱えているので、
指揮者がいったいどのようなテンポにしたいのかが想像つかないからだと思います。
バラバラになったところあたりから急速に楽団員のやる気(音楽を創る心)が失われているのがわかります。
生き生きとした感じ、楽しそうな様子がまったくなくなってしまうのです。
そうなるともう、曲はつまらないものでしかなくなります。

第2楽章は緩徐楽章ですがこれが速いのも困りものです。
多少速い程度ではありません。かなり速い。
これでは付点のリズムなど生きてこないし、16分音符を歌うことができません。
モーツァルトは本当にこういうことを望んでいたのかと疑ってしまいます。

第3楽章、メヌエットはだいたいテンポの変えようがないかもしれません。
変な「ため」があるのを除けば他の楽章に比べればましなほうです。

第4楽章は速い、どれもとにかく速い。
楽団員は必死になってというか、世界一流の奏者ぞろいですから、
速く振られてもこれくらいできるぞとばかりバリバリ弾いていますが、
いつものウィーンフィルのような余裕がありません。
急に静かなところに入っても早いところの興奮が残って穏やかな心に戻っていません。
そうなると曲に変化がなくなります。
楽しそうな様子もなく、ただ必死に弾いているだけの音楽は聴くほうも楽しくありません。

さて、演奏終了後のウィーンフィル楽団員、どうも会心の演奏のような顔をしていません。
いったん袖に下がった後に袖から戻ってきた指揮者にはかなりそっけなかったように見えました。
終わった後の拍手はそれなりにあったので、よかったと思う人もある程度いると思いますが
本当ならブーイングがあってもいいくらいの演奏だったと思います。
でもそういう私も、文句は言ってもブーイングはできなかったでしょう。
どうも日本ではあまりブーイングをするなどということに馴染みがないので
あまりよくないと思っても、とりあえず演奏したことをねぎらう気持ちで少しは拍手してしまうのです。

せっかくウィーンフィルがわざわざ日本へ来ての公演なのに
聞くほうも不本意ですが、演奏する方も相当不本意だったと思います。


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