武ニュースDiary


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2018年10月16日(火) 高暁松、金城武を語る(文)2

続きです。

明に関してもそうだ。
俳優は照明から外れない。それはぼくも何本か監督やったから知っている。
だが金城武はそれだけじゃない。
サングラスをかけて演技する場面があったんだが、
彼はこう演じた(微かに首の角度を変える動作をしてみせる)
なぜそんな風にするのか、ぼくは初めよくわからなかった。
そうしたら、優秀な香港のカメラマンが、彼に向かって
ずっと「OK」の親指を立ててる。なぜなんだ?

実は、彼は、現場の沢山のライトや機械が、
サングラスに写ってしまうのを知ってたんだ。
それほどまでにも経験豊かだったんだよ。
サングラスには、明り1つ、人っ子1人、機械1台、写っちゃいけない。
カメラが写しちゃうからね。 
これはすごいことだよ。
ちゃんと照明に当たれる、そういう俳優は多い。
だが、サングラスをして演技するときに
どうしたらサングラスに現場の沢山の物を写り込ませないか、知ってるだなんて! 
大ベテランさ。カメラマンは撮っては親指を立ててた。
マジすごかった。

常に長い台詞のときは、
彼の中国語は完璧ではないので、少し言いにくそうになる。
しかも若い脚本家だったので、途中でぼくは
「確かにこれは言いにくいよ」と口を出した。
熾烈なビジネスの話で、儲けのこととか、要するに商売の話。
彼の長大な台詞をそばで聞いて、
「ぼくも商売人だが、これは大企業家の台詞らしくない、
ボスが言う言葉じゃない」と言って、少し変えてあげた。

でも、金城武は、その種のことにあまり明るくなくても
――商業コメディだからね、でもすごく上手に演じたよ。
途中滑らかでないところがあっても、
よくよく聞かなければまず気がつかないだろう。

ケ場所が、ちょうど飛行機の飛行ルートの真下だったので、
途中で飛行機が飛んでくるんだ。
ぼくは1日しか撮影ができない、しかも5時半には他に行く所があると言ったら、
金城武はすごくよくしてくれた。スタッフと相談し、
「暁松さんの出番は 飛行機は気にせず、どんどん続けてやろう。
でないと同時録音できない。今日は暁松さんのための撮影だ」、
そう言ってくれた。

経験豊かだから、飛行機が来ない間に流暢な台詞回しで演技をし、
飛行機が来たら、次に話す言いにくい台詞を練習する。
機械は回しっ放しで、飛行機が行ったら、またぼくとの場面を撮る。
超快適だったね、名俳優だよ。

四方八方に注意が行き届き、シーン全体が完全に見えている。
これこそ演技者としての最も基本的な資質だよ。
演技の最中に映画の画面が見えているんだ。
後で あたふたモニターを見に行く必要なんかない。
若い俳優はカットごとに「監督、モニター見せて下さい」と飛んでくるがね。
歌手も同じさ。優れた歌手は録音を聞き直す必要がない。
歌っているときに、自分の声も自分の姿も、全部わかっているからだ。
超かっこいい金城武と撮影できて幸せだった

わって去りぎわに彼が言った。
「暁松さんは阿里娯楽のトップでしょう? 1つ報告していいですか?」
「報告って?」と聞くと、彼は「弁当がまずいです」と。
たまげたね。
急いで会社のスタッフを呼んで聞いた、
「彼はぼくらと同じ弁当を食べてるの?」
思ってもいなかったよ。
ぼくの見たスター達は、自分のコックを連れてきて御馳走を作らせてるし、
付き人も大勢、ひどく甘やかされてる。
なのに、演技の方は大したことない。

その日の弁当は確かに良くなかった。
ぼくは言ったね、
「阿里影業の代表として提案する、弁当をもう少し良くしよう」
ぼくだったら無論かまわないさ、みんなと同じ弁当を食べる。
ピーター大監督も食べる。 
だが、金城武がこんなにスポイルされてない人で、
スタッフと同じ弁当を食べてるだなんて、まったく予想外だった!
上海は大都市だ、ミシュランの三ッ星レストランだって幾つもある。
だのに、みんなと同じ弁当。感動したよ。

とても礼儀正しく、とても好感が持てる。
かつての“小鮮肉”が、今やベテランの名役者、
いや、昔も単なる小鮮肉じゃなかった。
デビューしてすぐ色々な役を演じていた。
最高の時代に間に合ったんだ。
日本の芸術映画、それから台湾映画 香港映画、
ウォン・カーウァイの映画にも間に合った。
幸せな俳優だと思う。    (完)


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