(仮)耽奇館主人の日記
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| 2005年09月04日(日) |
Ich bin ein Gebrüll des Stahles. |
お寺の用が済んだ後、市川の貸しスタジオにて、例の聴覚障害者四人組のインダストリアル・ノイズ・ユニットの初練習に参加した。 四人とも、私のように補聴器をつければ音が聴こえるレベルではなく、補聴器をつけてもまったく聴こえないという重度障害のレベルなのだが、彼らの耳となるのが、「皮膚感覚」である。 つまり、震動で音を聴くのだ。 そこで、私は、四人にそれぞれ、エレキギターを弾かせつつ、足の裏でスピーカーに直接触れさせることから、音感を磨かせた。 ボリュームも最大にしたので、さすがに私も補聴器を外さざるをえなかった。 ハウリングも殺人的だったので、健常者が入室したら、その場で鼓膜から血を流していただろう。 四人の視覚に訴えて、唇を大きく開き、ゆっくり話す。 「俺たちがノイズを演奏するんじゃない。俺たちがノイズなんだ」 その通り、耳が聴こえなければ聴こえないほど、耳の奥でノイズが響き渡るのだ。 つまり、耳鳴りだ。 鼓膜に響かずに、脳に直接響く耳鳴り。 これは聴覚障害者にしか分からない感覚だ・・・そいつをみんなにも分からせてやるのだ。 私は彼らの皮膚感覚を最大限に活かすために、鉄仮面を着けさせた。 アイスホッケーマスクのような鉄製の仮面の裏側に、スポンジのキューブをいくつか接着して、それを顔面に装着し、仮面の下側につながったケーブルでスピーカーから直接震動を伝わらせるのだ。 演奏する時は、椅子に座るのだが、この椅子も電気椅子のように、震動をダイレクトに伝わらせる仕掛けにした。 一人がギターの鉄弦を弾くたびに。 一人がドラムを叩くたびに。 一人がベースを響かせるたびに。 一人がシンセサイザーに直結したパソコンのキーボードに指を走らせるたびに。 四人の皮膚が激しく震え、骨も骨髄から震動し、眼窩も鼻骨も口蓋も響き渡り、血が沸騰する。 凶暴なリズム。 耳が裂ける重低音。 初練習の段階で・・・ まだまだ改良の余地はあるが・・・ 私は大いにニヤッとほくそえむことが出来た。 私たちが憧れてきた、ノイバウテンや石川忠率いるデア・アイゼンロストなどなどに追いつくことが出来る「手ごたえ」を感じられたからだ。 初ライヴは来年の秋を予定している。 それまでは、ひたすら練習に練習を重ねる。 それまでには、皮膚感覚も磨かれて、音が実際に目に見えるものになっているだろう。 その暁には・・・ 我々が鼓膜で聴いてきた「音」が、いかに肉体的なものにまで衝迫するかを目撃出来るかもしれない。 今日はここまで。
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