喰いえるコトなど

グルメ?何それ?ウマイはウレシ、マズイはタノシ。
いわゆるひとつの食い意地日記

2001年05月23日(水) 春の実感、口福、幸福。

友達から荷物が届いた。
中身は私がオーダーしていたモノ……のはずが、
それにしては袋が大きい。中には一緒にイカナゴのくぎ煮が入っていた。
……ジーン、うれしいなぁ〜もう。
そういえば今年はなぜか、全然思い出さなかったな、
イカナゴのくぎ煮の事。意外なものが届くと、うれしいよね。

今年はイカナゴのくぎ煮は初めて。
うまれ育った土地を離れて、ずいぶんになる。
が、毎年、この季節になると誰かしらが届けてくれる。
親戚の内の誰かだったり、この友達だったり。
皆が皆、毎年送ってくれるわけではない。
私も毎年「送ってぇ〜」とか言うわけでもない。
にもかかわらず、毎年一度は口にできるし、
皆が一度に送ってくれて、困った記憶もない。
たとえ、すこしくらいだぶって、送られてきたところで、
それぞれの家の味があるので、違いを楽しめる。
世の中上手くまわっていくもんだね。なかなかシアワセ。

イカナゴのくぎ煮。
それは、稚魚のつくだ煮です。
これさえあれば、何杯でもごはんがすすむ、春の常備品のひとつ。
私の出身地では、春になるとある日いきなり魚屋さんに行列ができる。
行列を発見して、「ははぁ〜ん」と思いながら、
行列の先の魚屋さんにたどりつく。
と、店先には「イカナゴ、はいりました」というはり紙。
ボチボチとイカナゴを煮る匂いがあちらこちらからただよってくる。
そうして、つくづく春を実感する。

イカナゴを酒と砂糖と醤油で煮て作る。
煮上がった姿がまがった古釘にそっくりなので、「くぎ煮」なんだそうだ。
春まだ浅い時期のイカナゴは小さくて、
チリメンジャコくらいの大きさ。
そのうち、売っているイカナゴも、どんどん大きくなってくる。
大きいとかいっても、小さめの鰯を一山いくらで売っていたりするでしょ?
あのぐらいの鰯をもうひとまわり、小さくしたくらいかな。
小さいイカナゴでつくったくぎ煮は、甘辛い、普通のジャコの煮モノ味。
大きく育ったイカナゴでつくったくぎ煮は、
内臓の味がしっかり残っているから、ちょっとほろ苦い。
いわば、大人向け味。見た目も中途半端に大きいので、
それをグロテスクに感じて好まない人もいる。
私はどちらも好みます。小さい頃は、大きめのはちょっと…。
見た目も味も苦手でした。でも、味覚って、変わるよねぇ。
さんまとかの内臓は、今だにあまり好きじゃないねんけど。

さっそく、冷凍してあった玄米ごはんを解凍。玄米粥にする。
玄米粥……それは魅惑の響き……マジなんです。
めっちゃ好きなんです。玄米粥。
玄米でつくったお粥は、白米でつくったお粥より、
しっかりとした味わいがあるように感じる。
玄米粥のやわらかくなった、お米部分もおいしいけど、
重湯部分のなんとおいしいことか………。うっとり。
玄米粥のはいった器に、ちょいとイカナゴのくぎ煮をのっけて、
ふーふーしながらいただきました。

ああ………口福、幸福。
なつかしい春の実感。世間はもう十分すぎるくらいに春ですけれど。



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