愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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若菜は、コンビニでバイトしつつ、教習所通い。真田は、家庭教師のバイトは週一くらいだけど、1月下旬からテストが始まる。お互いまあまあ忙しく、特に連絡も取らないまま、2月半ば。2/14は日曜日。真田から、「うちの母親がチョコレートケーキ作ったから持ってっていい?」と連絡があり、届けに来ることに。ちょっとくらい上がってくかと思ったが、渡しに行くだけだし車で行くし(来客用駐車スペースはない)、ってことで、マンションの下で受け渡し。 「おー、すげー」 チョコレートケーキがワンホール入った箱は、バレンタインらしくラッピングされてる。 「ありがとな」 「うん。あ、教習所はどう?」 「仮免取れたから路上出た。学科も、何とか大丈夫そう」 「そうなんだ、よかった。じゃあ、もう帰るから」 「あ、」 「何?」 「お前個人から俺個人へのチョコはないわけ」 「ケーキがあるからいらないだろ」 「それは、一馬のお母さんからじゃん。お前から俺にあるなら、貰うけど?」 両手で抱えてたケーキの箱を左手で持ち替え、右手を、頂戴するように差し出した。 「図々しい」 と、言いながら、真田は鞄から小さな包みを取り出し、若菜へ。市販のチョコです。 「はい、ありがとよ」 「何故あると思うのか…」 「実際あったろ。ていうか、俺が言わなきゃ渡さんつもりだったのか。そっちのが何故だよ」 「一応用意してみたものの、いらないかと思って」 「いるわい」 「何であるって思ったんだ?」 「ん? だって、お前、真面目じゃん」 「何その理由。そこは『だって、お前、俺のこと好きじゃん』とか」 「えー。さすがにそこまでは図太くない。そんなふうには思ってねーし。ともかく、お前は真面目だから、きっと別に用意してるって。なのに、渡さない方がいいかも、って迷ってるんじゃないかと思ってな。ほんと真面目なんだから。当たってるし」 「うるさい。真面目って何回も言うな」 「真面目以外の何ものでもないです。そういうところも好きです」 「ああそうですか。ホワイトデーが楽しみだな」 「せいぜい楽しみにしとくがいーわ。考えとけよ、まじで、何がいいか」 「冗談だよ。別に何もいらないし。じゃあ、ほんと帰るから」 「おー、じゃあな」 背を向けて、車に乗ろうとする真田に、 「ほんとに考えといてよ。別に何もいらんとか、傷付くわ」 割と真剣に声をかけると、 「勝手に傷付いとけ」 だってさ。 真田を見送ってから、エレベーターに乗ろうとするも、思い直して階段で上る。今更なんだよな、と若菜はしみじみ思う。悲しくなる、とか、傷付く、とか、何言ってんだか、って感じだよ。何のアピールだよ。気を引きたいのか? 俺が悪かったすまん、で終了でいいじゃないか。ずっと謝りたかった。そして謝った。だからそれでいい。もう好きじゃないのかとか、そういうとこも好きとか、冗談でも言うべきじゃないのに、本気だし。 『別に何もいらない』 (…そうか。まあ、うん、そうだよな) 自分から真田にあげられるものなんて、きっともう何もないのだ。と、ネガティブに考えてみたり。責任取る、なんてさ。そんなの、どうやって。取るのは、責任じゃなくて、免許だろうが、とりあえず。 「あ、」 そういや、ハンカチ返し忘れた。
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