愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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クリスマスが終わったと思ったら、年明けるよね! 真田は郭に年賀状を出してます。若菜にも出してるけど。真田からの年賀状、宛名(筆ペン)の達筆ぶりに、郭はびっくりする。字が綺麗だと思ってはいたけど、ここまでとは…という感じ。真田は硬筆も書道もやってたよ。背筋を伸ばして姿勢よく宛名書きをしてる真田が思い浮かんできて、郭は胸があったかくなった。メッセージはシンプルで、硬く、 『去年は大変お世話になり、ありがとう。今年もよろしくお願いします。返信不要です。』 返信不要、と書いてるけど、郭は返信を書きます。ペンの持ち方に気を付けてね。
若菜から、グループトークにLINEがきた。 『明けたなー、おい。初詣とか行くか? 明後日あたり。H寺(近所の寺)あたり』 『午前中なら行けるよ』 と、真田。真田は3日、午後からシフトが入ってる。 『悪いけど、3日は予定有り。二人で行ってきて』 と、郭。その日は、郭の姉が一年ぶりに実家に帰って来る予定なのです。姉は母親と折り合いが悪いので、郭に会いに帰省するようなものだ。 郭は一緒に初詣行けないんだ…と、真田が残念に思ってると、若菜が、 『じゃ、英士はいつなら行ける? なんとなく明後日って言ったけど、別に3日じゃなくていいし。日程調整するか』 『とりあえず3日行ってきたらいいよ。俺は、いつなら確実に空いてると言えない状況』 家庭教師のバイトが大変なのかな、入試近付いてきてるしな、と真田は察し、若菜も同じように考えてるんだけど、そこには特に突っ込まず、じゃあまたなー、という感じで会話終了。
そして、3日。真田と若菜はH寺に現地集合。特に有名ではない小さな寺だが、かなり混雑していた。並んで待ってからお参りを済ませる。 「何て願ったんだ? 願い事によっては、神様にお願いするより若菜様に助けを請うた方が成就率上がるぞ」 「何て願ったと思ってるんだ?」 「英士君と仲良くなれますよーに☆彡」 「全然違う。俺は、 旧年中はおかげさまで無事に過ごせ、ありがとうございました。本年も健康に過ごせるよう、どうかお見守り下さい、 って願ったんだ」 「受けるわー」 「普通だろ。お前はどうなんだよ」 「ヒ・ミ・ツ」 「イラッとする!」 「さーて、おみくじでも引くか!」 「俺はいい。あんまりよくないのが出たらテンション下がるし」 「えー、なんだよー。お前のその言葉に俺のテンションが下がったわ。引くけどさ」 若菜様は大吉ですよ! そんな感じで、適当に初詣を終え、真田は一旦帰って昼ご飯を食べてから、バイト先へ。今日は13〜17時勤務です。4時半頃、客足が一旦途絶えて暇になったので、ゴミ箱を見に行くと、大散乱です。あーあ…、と思いながら片付ける。なんか、真田、ゴミ捨てよくしてるね。ゴミ捨てって、しない人はしないですからね。気付かないのかやりたくないのか、言われなきゃしない。自分から進んでやる人がいたら、その人ばかりがやることになったりします。真田、偉いね。そんな高校生いるんか。ゴミ置き場から真田が戻って来ると、店の前に郭がいたよ。 「あっ、英士!」 「おつかれさま。今、用事が終わって、帰りなんだ」 真田は、用事というのは家庭教師だと思ってるけど、郭は、姉を駅まで見送りに行った帰りです。 「初詣、行ってきた?」 「うん、かなり混んでたよ」 「だろうね。俺は、ちょっと、今から行って来ようかと。毎年行くわけではないんだけど、なんとなく、今年はさっさと行っておきたいなと」 「俺も一緒に行っていい?」 真田は思わず言ってしまうんだけど、言った後で、しまった、ってなる。変に思われるよなって。 「午前中に行ったんだよね、H寺」 「…うん、行ったんだけど、もう一回行こうかなって」 「一馬がいいなら、一緒に行こう」 「ありがとう! って、あっ、まだ終わるまで15分くらいある!」 「いいよ。公園で待ってる。コーヒー淹れてもらおうかな。いや、今日は紅茶にしようか」 「ダージリンティーとロイヤルミルクティーがあるよ」 「ダージリンで」 「お砂糖はお入れしますか?」 「無しで」 「かしこまりました!」 紅茶はボタン一つじゃないよ。お湯にティーバッグを入れるんだよ。 そんなわけで、郭は、真田がバイト上がるまで公園で待ってる。ところで、郭は、真田に会いたくてコンビニに来たわけだが、真田は、たまたま寄っただけだと思っています。そして、郭は、真田がそう思ってるとは考えてない。郭は、真田からの好意を感じ取って、それに応えるつもりがあると言動で示していて、それが相手に伝わっている、と思ってるんだけど、真田にしてみたら、自分の好意を感じ取られているかもしれないとは思いつつも、受け入れられるなんて想定外だし、郭が自分に対して優しいのは、親切で責任感が強い人だから、という考えでいます。 「お待たせ!」 真田は、バイト終了後、慌てて公園へ。急ぎ過ぎて、着替えを忘れそうになったほどです。気付いたけど。 「おつかれさま」 郭は徒歩だったので、真田は自転車を押して歩く。 「あっ、年賀状、ありがとう。なんか、ごめん、返信してもらっちゃって」 「いや、こちらこそありがとう。達筆だね。心得があるの?」 「硬筆も習字も、昔、習ってたことある。でも、全然…」 そこで真田は、習い事に通っても続かなかったことを思い出し、息苦しい気持ちになる。 「嬉しかったよ、年賀状」 「…俺の方こそ…」 「直すよう、気をつけてるよ、ペンの持ち方」 「そうなんだ」 とか話してるうちに、H寺に着く。午前中は混雑していたが、少し前に日の入りとなった今、参拝客はまばらだ。閉門時間は18時。もうそんなに間がない。 朝お参りしたときは、なんとなく力んでしまった真田だが、今は静かな気持ちで目を閉じ、手を合わせられた。祈り終え、目を開けて、ふと郭を見遣ると、自分の方を見ていたので、少しうろたえてしまう。そしたら郭が、静かに微笑んだので、真田はなんだか安心して、照れながらも微笑み返す。なんてお願いした? なんて会話を交わすこともなく、でもお互い、少しはそんな思いを持っていた。その後は速やかに帰路に着く。 帰りには、すっかり暗くなっていた。自転車に乗って先に帰っていいよ、と郭は言ったが、真田は、途中まで押して帰る、と答えた。 「次は英語を勉強しようって、自分から言っといて悪いけど、なかなか日程の都合がつきづらくて」 「家庭教師のバイトが大変なんだよな? 俺のことは全然、気にせずに。ほんと、申し訳ないので…」 「いや、一馬は、別にもういいと思ってたとしても、俺が気になるというか、俺が一緒に勉強したいんだ」 郭としては、まあまあ勇気を出して言ったよ。しかし、なんという親切なお人だ、神様仏様…、と、ますます思われてしまっただけです。そして、真田は、すごく嬉しくて感動するんだけど、やっぱりなんか悲しいんだよな。切ない、というやつです。 「ありがとう…」 もうそれしか言えない。 「でも、しばらくは、なかなか難しいと思う。だから、」 また落ち着いたらね、って続くのかと思ったら。 「また、バイト先に行っていいかな。たまに、一緒にコーヒーでも飲めたら嬉しいんだけど」 「…もちろん!」 「じゃあ、連絡するよ」 「うん」 連絡するよ、とか言われたら、ずっと携帯が気になっちゃうよ。LINEの着信音が鳴る度に、もしかして! ってなっちゃう。気になり過ぎて、もういっそ携帯を手放したくなるよ(混乱)
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