愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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落ち着いてないけど、続きを書いちゃう。
日程はあっさり決まり、11月初めの日曜になったよ。真田は一応、若菜も誘ってみたけど、「勉強会なんだろ? 行くわけねー」と言われました。真田は郭に、よかったら自分ちに来てほしいって言うんだよ。こないだ郭んちにお邪魔したから、次は自分ちに呼ばなきゃって。そういうとこ、律儀なんです。郭は、図書館でいいのにな、って思ってるんだけど、断るのも何なのでOKする。どこかそのへんで待ち合わせて真田家へ。若菜から聞いていたものの、まあまあの豪邸ぶりに、郭はちょっとびっくりするよ。真田の母親に笑顔で出迎えられ、郭はややたじろぐ。いかにも優しそうなお母さんで、見た目は真田に似ていない。真田が、若菜以外を家に招くなんて、めったにないことなので、母親はとても喜んでる。一体どのようにもてなそうか悩んでましたが、真田に、「そんなに色々しなくていいから…」と不安げに言われ、「そうよね…」ってなりました。 母の焼いたアップルパイを食べてから、真田の部屋で勉強するよ。真田の部屋は、物はそれなりに多いんだけど、整然としてる。 「すごく片付いてるね」 「そう? 郭のとこの方が綺麗にしてると思うけど」 「うちは綺麗にしてるというか、閑散としてるんだよ」 「いやいや」 ちなみに結人の部屋は雑然としています。 それで勉強するんだけど、郭がノートに字を書いてる様子を見て、真田はなんとなく違和感を覚える。あれ、なんだろう? …ああ、鉛筆(シャーペンだけど)の持ち方が自分とは違うんだ。今まで全然そんなの気付かなかったけど。 手元をまじまじと見られてることに気付いた郭が、 「持ち方が間違ってるの、気になる?」 「えっ」 「なかなか直せなくて」 「いや、間違ってるのかどうか分からないけど、俺の持ち方とは違うなと思って」 真田は鉛筆や箸の持ち方を、幼い頃にまあまあ厳しく教え込まれてます。郭は自己流です。で、自分の持ち方が違ってることを分かってる。 「真田はどう持ってる?」 「こう?」 それで、持ち方を比べっこするんだけど、真田はなんか恥ずかしくなってきて、 「まあ、ちゃんと書けて、本人が不自由ないなら、持ち方は別にいいんじゃないか?」 「直すよ、徐々に。持ち方」 「そう?」 「真田に教えてもらうよ」 (……!) これは郭の気遣いなんだな、郭は優しいな、神様だな、って真田は思う。勉強みてるのを、真田が申し訳なく思わないように気遣ってる、と。実際、それは間違いではないんだけど、気遣いとか優しさとかいうより、郭なりに真田と打ち解けようとしてるだけなんです。 真田は、郭に優しくされて、嬉しいんだけど、なんか悲しい気持ちになる。嬉しいのに、悲しいって、どういうこと? なんだか対等じゃない感じがつらいのか? いや、対等でありたいとか思ってない。優しくされて、嬉しく思って、感謝して、その感謝は受け入れてもらえるだろう。でも、それ以上の好意なら、迷惑になるだけ。それがつらいのか? そんな、色々助けてもらった上に、勉強までみてもらってるのに、これ以上何を望むというのか…。とかまあ考えちゃいつつも、古典を中心に勉強をして、時間は経過し。 「もうそろそろ帰るよ」 「うん、ありがとう、ほんとに。…よかったら、また来て」 「うん、うちにもまた来て」 もう二度と、郭がうちに来ることがなくても、自分が郭の家に行くことがなくても、寂しいとか悲しいとか思うんじゃなくて、一度でも行き来ができてよかったと思おう。この出来事を、大切な思い出にしよう。真田は、神妙な思いになる。嬉しくて、悲しい。 じゃあね、と言って帰路に着く、郭の背中を、その姿が見えなくなっても見送っていた。きっとまた会えるのに、これが最後な気もしていて、それがとてもつらいのに、これでよかったのだ、という思いにもなる。やたら感傷。どうして? もう答えは出てるのに、出たところで、どうにもならない。
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