| 2003年03月11日(火) |
サンクチュアリ(by吉本ばなな) |
ばななさんの初期作品に、『サンクチュアリ』というものがある。
私はこの物語については、『うたかた/サンクチュアリ』という単行本が、1989年 とか1990年頃発売になったときに1度読んでいたのだが、特に好きだとも何とも 思わず、そのままになっていたものだ。 うん。最初に読んだときに、それ程好きだと思わなかったと記憶している。
それを、10数年ぶりに読んでみた。 驚いた。 なぜなら読み進んで行くうちに、自分が今にも泣くかという状態になっていた からだ。なんかわかる気がする!この話。なんて思っていたからだ。
主人公の智明は、少し前に、つきあっていた高校時代の同級生であり憧れであり、 今では人妻でもあった友子を、自殺という形で失う。 そして智明が夜の海辺で出会った“泣く女”馨は、夫と自分の子供を近い時期に 亡くしていた。
おそらく、当時の私には、この話が一体何を言いたいのかということが、今一つ 理解できなかったんじゃないかと思う。 ところが、改めて読み返してみたら、やたらと胸に迫ってくるじゃないですか。 本当にびっくりした。 あらー、私この話、たしか好きじゃないなあって思ってたはずなのに!ってね。
たとえば急にひとりきりになってしまうということ。 普段は特別思いもしなくても、それは決して有り得ないことじゃない。 作中に「世の中や運命は情け容赦なく、人生はなんてバカなものなんだ」という くだりがあるが、まあ、人生がバカなものだとは私はなるべく思いたくないん だけど、でも、運命とかそういうのって、本当に情け容赦ない。 そんな風に心底思ってしまう一瞬というのは、確実にある。と思う。
それでも、どんなに笑えないようなことが起こったとしても、人はいつか笑える ようになる。人生ってそういうものなんじゃないか。 そうか。笑って生きていくしかないんだな。と思うようなとき、というのは 本当にあるよなあ!と、読みながらつくづく思っていた。
そして、誰かとわかち合った、たった30分が救いになるってことも、人生には 絶対用意されていると思う。たとえ5分であっても、そういうことはあると思う。 変な運命論を語る気は全然ないけど、でも、そんな風に思うのだ。
私は孤独というものを、昔よりずっと強く感じるようになっているだろうか。
しかし、ラスト辺りで馨が言う、「なんとなく生きててよかった、って感じ」。 それを感じることができたら、きっと人は大丈夫なんじゃないかと思うのだ。
ばななさん自身は、文庫版あとがきの中で、『うたかた/サンクチュアリ』という この作品集を、誰が書いたかわからないくらい遠い一作だと書いているけれど。 あらためて読んでみたら、私的には、結構いいと思った一作。でしたよ。
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