『日々の映像』

2010年06月16日(水) 殺処分対象の家畜は19万9246頭:殺処分が間に合わない



1 、宮崎・国富町で口蹄疫感染の疑い 県内の発生自治体拡大
                   2010年6月16日 毎日
2、口蹄疫、加熱・焼却処分も検討 土地不足で農水省
                   2010年6月16日 朝日新聞
3、口蹄疫:1例目感染発見から約2カ月 見えぬ終息の兆し
                      毎日新聞 2010年6月15日 
4、口蹄疫で客足遠のく、県境の商店街・観光地苦境
                     2010年6月15日 読売新聞


宮崎県下の家畜の感染の疑いや確認があった農場は290カ所、殺処分対象の家畜は19万9246頭となったというから大変なものだ。深刻なのは「殺処分」が間に合わないことである。

 「一連の流行で宮崎県内では15日現在、殺処分の対象となった牛や豚計約2万9千頭が未処理のままだ。それが終わっても、ワクチンを接種した計約6万6千頭の処理も残っている」(朝日新聞から)という深刻さである。口蹄疫の感染した牛や豚6万6千頭が未処理のままウイルスを発散させているのである。

 殺処分対象のうち、約1万3千頭についてはいまだに埋める土地すら決まっていないというから深刻である。未曽有の口蹄疫に揺れる宮崎県は1例目の感染牛が見つかってから約2カ月。今月9日には鹿児島県境の国内最大級の畜産地・都城市などにも飛び火し、終息の兆しは見えない。このまま行けば九州全土に感染が拡大するのではないか。敏速な対応が出来ない現在の行政システムが。とんでもない災禍を生み落とすことになるようだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
1、宮崎・国富町で口蹄疫感染の疑い 県内の発生自治体拡大
                    2010年6月16日18時37分
 宮崎県と農林水産省は16日、同県国富町の農場で新たに口蹄疫(こうていえき)特有の症状を示す牛3頭が見つかった、と発表した。写真判定などから口蹄疫に感染した疑いがあると判断。同農場で飼育する牛計234頭を殺処分する。
 同町での感染疑い例は初めて。県内の口蹄疫発生自治体は計11市町に拡大した。
 これで、家畜の感染の疑いや確認があった県内の農場は290カ所、殺処分対象の家畜は19万9246頭となった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
2、口蹄疫、加熱・焼却処分も検討 土地不足で農水省
2010年6月16日15時0分  朝日新聞
 宮崎県での家畜伝染病、口蹄疫(こうていえき)の問題で、農林水産省は、殺処分した家畜を埋めるこれまでの方法に加え、同県内の処理場で加熱、加圧し、最終的には焼却する方法を取り入れる検討を始めた。埋める土地の選定が進まずに処分が滞っているためだが、家畜が運び込まれる処理場周辺の農家が感染拡大を恐れて反対することも予想される。
 一連の流行で宮崎県内では15日現在、殺処分の対象となった牛や豚計約2万9千頭が未処理のままだ。それが終わっても、ワクチンを接種した計約6万6千頭の処理も残っている。
 殺処分対象のうち、約1万3千頭についてはいまだに埋める土地すら決まっていない。ワクチン接種分については、複数の農場の家畜を1カ所に移動させて同時に処分し、埋める方法が検討されているが、土地は選定中だ。また梅雨に入ったため、土地が確保できていても雨天で作業に入れないケースも多い。
 農水省はこのため、ワクチン接種後の家畜の一部について、農場で殺処分した後に処理場まで運んで、高温、高圧下で処理することを検討。油分と水分などを分離した後に出る肉骨粉などは焼却する。この過程でウイルスは死滅する。
 想定している処理場は「化製場」と呼ばれ、同県内では都城市にある1カ所だけ。食肉にするための加工場とは違い、食肉加工の際に出る骨や皮などを処理して飼料などに活用するための施設だ。
 同市内では9日、1農場で感染の疑いが出たが、翌10日中に埋める処理が終わり、ほかに感染は15日現在、出ていない。そのため同市の農家は、感染が拡大した県東部からの家畜の搬入に難色を示すとみられる。
 農水省は輸送前後に車両を徹底的に消毒したり、家畜は厳重にカバーで覆ったりして感染拡大防止を図るとしているが、実現に向けて地元との協議は難航しそうだ。(大谷聡)

――――――――――――――――――――――――――――――
3、口蹄疫:1例目感染発見から約2カ月 見えぬ終息の兆し
毎日新聞 2010年6月15日 

日が暮れて照明がともる中、消毒ポイントを通る車を消毒する作業員ら=宮崎県川南町で2010年6月15日午後7時29分、矢頭智剛撮影(画像の一部を処理しています)
 未曽有の口蹄疫(こうていえき)禍に揺れる宮崎県。4月20日に1例目の感染牛が見つかってから約2カ月。今月9日には鹿児島県境の国内最大級の畜産地・都城市などにも飛び火し、終息の兆しは見えない。「次はどこだ?」。生産者たちは失意と疲労のどん底で、ウイルスという見えない敵と闘っている。現場を訪ねた。
 「申し訳ないけど、取材はここで」
 巨大なサイロや飼料倉庫が並ぶ都城市の「はざま牧場」。敷地入り口の道幅いっぱいにまかれた消石灰の手前にパイプ椅子を置くと、会長の間和輝さん(66)は記者に勧めた。ここから先は従業員や消毒済みのトラック以外、郵便配達さえも立ち入り禁止だ。
 高速道インターを降りて車で約20分。途中数カ所で消毒薬のプールやマットにタイヤを転がした。ピリピリした緊迫感が、防疫の徹底ぶりから伝わってくる。
 間さんは都城を中心に31農場を展開し、牛・豚約9万頭を飼育する。41年前、わずか豚2頭から創業し、エサにきなこを配合した「きなこ豚」で一躍、国内屈指の出荷数を誇る企業へと育て上げた立志伝中の人物だ。
 その間さんが疲れ切った表情で言う。「豚コレラや飼料高騰など今まで何度も壁にぶつかった。けど、今度ばかりはその怖さたるや例えようがない。戦争が始まったようだ」
 市内の農場で感染が疑われる牛が見つかったのは9日午後。発生農場の川向かいには、はざま牧場の農場が二つあり、きなこ豚約5500頭が飼育されている。一報を受けた間さんは急きょ社員を集め、風によるウイルス飛来を防ぐため畜舎をカーテンで覆うよう指示。作業は明け方まで続いた。
 この2農場を含む系列28農場が10日から家畜の移動・搬出制限区域に入った。「月約6億の売り上げが今月は5%程度になりそうだ」。間さんは肩を落とす。出荷できないまま成長し続ける家畜のエサ代、し尿処理費、従業員約250人の人件費……。終息の日まで、月約5億円のコストばかりが積み上がっていく。
 市内で制限区域に入った畜産農家は1776戸。図書館や体育館など市営施設は軒並み閉鎖され、出入り口を石灰で白く染めた民家が目につく。「ハエがウイルスを運んでいる」「いや、風で飛ぶそうだ」。感染拡大の不安と経営危機のいら立ちが募るあまり、感染ルートでもさまざまなうわさが飛び交う。
 誰もが、県央部で続く「地獄絵」の再現におののいている。
    □        □
 都城市から北東へ約60キロ。川南町は農繁期にもかかわらず田畑も商店街も人影がまばらだ。4月21日に2例目の感染牛が見つかり、感染の連鎖で13万頭以上が殺処分となった“激震地”だ。
 町内の酪農業、川上昇さん(57)宅の庭の片隅には、こんもりと土が盛られた場所がある。白い石灰で覆われたその下に16頭の乳牛が眠る。今月1日、ワクチン接種した牛が口蹄疫を発症、すべての牛を殺処分して埋めたのだ。
 大雨の日だった。鎮静剤を注射し、穴に向けて歩かせ始めてから13、14、15秒……。巨体が「ドスン」と崩れる音は川上さんの耳奥に今もこびりつく。倒れた牛は薬殺後、重機でつり上げ、穴に沈めた。
 妻(53)と2人、牛舎の掃除、搾乳、給餌が朝の日課だった。行くと牛たちが振り向く。「牛は人が分かるから。今も5時過ぎに目が覚める。何もすることがないのに」。畑の牧草は食べる主を失い、立ち枯れた。
 10年前、宮崎と北海道で口蹄疫が起き、今年に入って韓国や中国などでも多発した。川上さんは言う。「農家も行政も住民もきちんと対策を取ってきたか? 今回の教訓を役立てないと犠牲が無駄になる。残された人間の義務だ」【阿部周一】

――――――――――――――――――――――――――――――
4
、口蹄疫で客足遠のく、県境の商店街・観光地苦境
2010年6月15日 読売新聞
 宮崎県での口蹄疫(こうていえき)問題で、県境の商店や観光地では、客足が遠のき、売り上げが落ちたり、予約の取り消しが相次いだりといった影響が出始めている。県内での感染阻止に向けて懸命な防疫作業が続く中、ホテルや商店からは「これ以上問題が長引けば、経営がもたない」との声が上がっている。
 曽於市の市商工会(永吉正会長、約900人)は8日、市内の約50事業所(十数業種)を対象に口蹄疫の影響についてアンケートを実施。その結果、80%以上が「(口蹄疫の発生前と比べて)売り上げが減少した」と回答した。減少幅は10〜30%が半数を超え、50%減の事業所もあった。顧客層の大半を占める農業や畜産業の人たちが外出を控え、生活必需品以外の買い物を控えていることが最大の原因と見ている。
 同市は隣の宮崎県都城市とは経済的な結びつきが強い。市商工会は「市中心部での人通りがめっきり減り、閑散としている。都城市で発生した口蹄疫の影響は、しばらく続くだろう」と話す。
 志布志市は、都城市から曽於市を経由して入ってくる車両が少なくない。幹線道では大型トラックの交通が減り、沿線の商店やコンビニエンスストアでの減収が深刻化して、こちらでも宿泊施設のキャンセルや、住民の買い控えも目立つという。
 市商工会(河本正男会長、約800人)では、事業所や商店に対しても消毒液や石灰を配布して防疫を呼びかけている。担当者は「9日以降、商店街には緊張感すら漂う。皆がピリピリしており、不安や疲労感が募りつつある」と訴えている。
 霧島連山、温泉、霧島神宮などの観光資源に恵まれた霧島市でも、観光客数が目減りしている。市商工会(中村博美会長、約1350人)によると、霧島・牧園地区にある約70のホテル、旅館では、4、5月に計約3000人のキャンセルが出たという。春の観光シーズンで予約の取り消しが少ない時期だが、通常の約10倍のキャンセルを受けたホテルもあったという。
 同市牧園町の霧島国際ホテルでは、都城市で新たに感染例が確認され、伊藤知事が「準非常事態」を宣言した9日以降、計約300人が予約を取り消したという。同ホテルの花俣幹男専務は「問題の長期化によって、かつてないほど厳しい経営状況になっている」と語る。
 相次ぐキャンセルのしわ寄せは、ホテルの納品業者にも及び、魚介類などをホテルに納めている市内の業者は「昨年同期に比べて、注文が20〜30%減っている。14日からは、車体全体の消毒も始まり、搬送の負担も増えた」と話している。
(2010年6月15日 読売新聞)

 < 過去  INDEX  未来 >


石田ふたみ